犬の祖先であるオオカミがどのように犬に進化したのかは明確にわかっていませんが、1万2,000年前頃に人間と一緒に犬が埋葬された最古の遺跡が見つかっていることから、その頃には犬と人間は共に生活していたと考えられています。
では、どのようなきっかけで犬が人と関わりを持つようになったのか、その歴史を見ていきましょう。
犬と人間が関わるようになったきっかけははっきりとわかっていませんが、一説によると犬の祖先であるオオカミが人間の居住地に近づき、人間の残飯を食べ始めるようになったことが最初のきっかけと言われています。
残飯を食べることでオオカミは狩りをする必要がなくなり、人間の居住地に住み着いていきました。その後、人間と共にするオオカミの中から、攻撃性が低い従順なオオカミを選択交配して家畜化していった結果、犬に進化したと考えられています。
日本においては、狩猟を目的として飼育されていた犬は、次第に将軍や大名が自身の権力を誇示するために飼われるようになっていきました。戦国時代には海外から洋犬が輸入されると、こぞってポインターやグレーハウンドを飼育していたと言われています。また、江戸時代には大の犬好きとして知られる江戸幕府第5代将軍の徳川綱吉も犬屋敷を作らせて、10万頭以上の犬を愛玩目的で飼育していました。
このように家畜化されていた犬は、次第にペットとして飼われるようになっていったのです。
犬と人間との特別な関係は、国内外の研究で明らかになってきています。ここでは、その中のいくつかの研究結果をご紹介します。
麻布大学の菊水健史教授による研究によって、犬と飼い主が見つめ合うと、犬も飼い主もオキシトシンが分泌されることが判明しました。オキシトシンとは、「幸せホルモン」や「癒しホルモン」とも呼ばれるホルモンで、ストレスや体の痛みを和らげたり、心を癒したりする働きがあります。このオキシトシンは犬と飼い主が見つめあることで、人間の体内においては3倍にも増加し、犬においても増加することがわかりました。
オキシトシンは、同じ種の動物同士でアイコンタクトやスキンシップを取ったりするとき分泌されると考えられていました。しかし、この研究で犬と人間という異なる生き物同士でもオキシトシンを分泌し合うことが初めて確認され、犬と人間とが絆を深める理由がここにあることがわかりました。
人間は相手の声などから感情を読み取る能力を持っていますが、ハンガリーのエドベシュローランド大学が行った実験によると、犬も同様に人間の声の様子から感情を読み取る能力を持っていることがわかってきています。
実験では、まず犬に人間の笑い声や喜んでいるときの声を聞かせたところ、聴覚情報を聞き分ける聴覚野の活動が活発になりました。反対に不機嫌な声を聞かせたところ活動が低下。これと似たような脳の仕組みは人間にも備わっているため、人間と同じように犬も人間の喜怒哀楽を読み取る能力を持っていると考えられています。
犬の性格は飼い主に似てくるのではないかという研究結果もあります。この研究はアメリカのミシガン州立大学の社会心理学者ウィリアム・J・チョピク氏が行ったもので、まず犬の飼い主に自分の飼っている犬の性格についてアンケートを実施しました。その結果、誠実な犬の飼い主は自分の犬の性格を「よく訓練されている」と答え、落ち着いた性格の飼い主は自分の犬を「落ち着いた性格」と回答。
この回答は飼い主の主観で、犬を飼うとき自分の生活スタイルに合った犬に無意識に惹かれる傾向にあるのではないかとの見方ができます。しかし、訓練や飼い主との毎日の関わりの中で犬の行動が形成され、その結果犬の性格も変わってきて飼い主に似てくるのではないかという結論に至っています。
犬と人間との歴史は古く、共に生活の中でかけがえのない存在として歩んできました。人間の感情を読み取る能力があったり、見つめ合うとお互い幸せホルモンが分泌されたりなどの研究結果を知ると、ますます愛犬が愛おしくなるのではないでしょうか。