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健康管理 / 病気

2020.09.12

【専門家監修】犬もノロウイルスに感染する?飼い主が知っておくべきこと

冬に流行するノロウイルス感染症は、下痢や嘔吐などの症状を引き起こす人の感染症です。毎年猛威を振るい乳幼児から高齢者まで感染しますが、犬にも感染するのか気になるという飼い主さんもいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、犬猫の感染症、免疫、ワクチンを専門とする獣医学博士の勢籏剛先生監修のもと、ノロウイルスの原因や症状と、人から犬への感染について最新情報をもとに、飼い主の皆さまに知っておいて欲しいことを解説していきます。

Author :監修:勢籏 剛/獣医師、獣医学博士、動物予防医療普及協会 学術顧問(文:新井 絵美子/動物ライター)

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人でのノロウイルス感染症とは?

犬 ノロウイルス

ノロウイルス感染症とは、ノロウイルスが原因で引き起こる感染症です。1年を通して発生しますが流行時期は冬で、11月頃から3月にかけて多発します。カキなどの貝の生食や加熱不十分な調理物がときに感染源となり、食中毒の原因となります。

ノロウイルスは感染力が強いのが特徴です。10~100個程度の少量のウイルスが体内に侵入しただけでも感染してしまいます。(※1)

人での主な症状

ノロウイルス感染症の主な症状は、水溶性の下痢や吐き気、嘔吐、腹痛、発熱などです。多くの場合は数日以内で回復します。(※1)

人から犬にうつる?

ノロウイルス感染症は、これまで犬にはうつらないと考えられてきました。しかし、最近、海外で人から犬へのノロウイルス感染が見つかった事例があります。

2018年にタイで、人のノロウイルス(遺伝子タイプGII.Pe-GII.4)が犬に伝播したと考えられる事例がありました。下痢を起こしていた数頭の犬と同じ敷地内に住む子ども2人から、ノロウイルスが見つかったのです。子どもたちは、犬が下痢をする2週間前に下痢と嘔吐を起こしていました。

そこで、犬から検出されたノロウイルスと子どもから検出されたノロウイルスを調べてみたところ、非常に類似していることがわかったのです。このことから、この事例ではノロウイルスが人から犬に伝播して発症した可能性が疑われています。

しかし、人から犬への感染について今の段階ではまだはっきりとしたことはわからず、あくまで感染の可能性があると言える段階にあります。日本ではまだ事例はありませんが、タイの事例では犬の症状も人の場合と同様、発熱、水溶性の下痢、軽度の脱水であったとのことです。(※2)

人から犬へノロウイルスが感染する原因

犬 ノロウイルス

人から犬へノロウイルスが感染するかはまだはっきりとわかっていないですが、もし感染するのであれば基本的に人の場合と同じように以下が想定できます。

汚染された手指などを介して感染

ノロウイルスは、感染した人の便や嘔吐物に含まれています。そのため、排便後に手洗いが不十分で手指にウイルスが付着し、その手で愛犬と直接接触すると感染するかもしれません。

感染した人の嘔吐物による飛沫感染や空気感染

感染した飼い主の嘔吐物を処理するときに愛犬が近くにいて、飛び散ったウイルスを吸い込んでしまうと感染するかもしれません。また、処理がしっかりとできていなかった嘔吐物が乾燥し、その粒子が空気中に漂ってそれを吸い込むことでも感染するかもしれません。

かかりやすい犬種や年齢

ノロウイルス感染症にかかりやすい特定の犬種や年齢は、明確になっていません。先述のような犬への感染事例はあるものの世界的に見て少ないので、人から犬に感染する可能性は低いと考えられています。

犬のノロウイルス感染症の治療法

犬 ノロウイルス

まだ明らかではありませんが、人と同じく急性胃腸炎になる可能性が考えられます。その場合の治療法は、ノロウイルス感染症の特効薬はないので、急性胃腸炎の対症療法により回復を図ります。下痢や嘔吐により脱水症状が見られるときは、水分と電解質を補給するために輸液が行われます。

治療にかかる費用

急性胃腸炎になった場合にかかる治療費は、症状の程度などにより異なりますが、通院2回・治療回数2回で2万円程度と考えられます。この費用には診察料、血液検査料、注射料、皮下点滴料、内服薬代が含まれます。重度の場合で入院することになった場合はさらに2万円程度かかると見込まれます。

人から犬へのノロウイルス感染症の予防法

犬 ノロウイルス

人から犬に感染するかはまだ明らかではありませんが、少なからず感染の可能性を示す事例があるので、気をつけるに越したことはありません。

万が一飼い主が感染したら

飼い主がノロウイルス感染症にかかった場合は、直接接触により愛犬に感染するかもしれないので、愛犬との接触を避けたほうが賢明です。

また、トイレの後には石けんで手洗いを十分に行いましょう。石けん自体にはノロウイルスを直接殺菌する作用はありませんが、手についている汚れとともにウイルスの数を減らすことができますので効果的です。手を洗った後は、家族と共有している手拭きタオルは使わず、ペーパータオルを使用した方が安心です。

そして、嘔吐物を処理する際は使い捨てのビニール手袋やマスクをつけて行い、嘔吐物を拭き取ったらしっかりと消毒をしておきましょう。

人から犬への感染は非常にまれですが、万が一飼い主や家族が感染した際は、できるだけ愛犬に感染させないように努めましょう。

再発する可能性

人のノロウイルスに対する免疫は6ヶ月~2年程度と考えられており、毎年感染することも考えられます。犬の場合はまだわかりませんが、人と同じように考えるのが今のところ懸命でしょう。(※3)

愛犬がノロウイルス感染症にかかったときの向き合い方

犬 ノロウイルス

万が一感染したとなると急性胃腸炎になる可能性が考えられます。1日1回の下痢や嘔吐であれば、人の場合と同じように数日で回復するでしょう。下痢や嘔吐が1日数回と多く続く場合は、脱水症状や体内の電解質が失われてしまうので、かかりつけの動物病院を受診しましょう。しかしノロウイルスの犬への感染はまだ明らかではないですし、日本では事例もないので、過度に心配する必要はないでしょう。

参考文献
◎監修者プロフィール
勢籏 剛

勢籏 剛/獣医師、獣医学博士、動物予防医療普及協会 学術顧問

専門分野は犬猫の感染症、免疫、ワクチン。酪農学園大学獣医学部卒業後、動物用ワクチンメーカーの研究者として主に犬のワクチンの研究開発に12年間携わる。犬の感染症の研究で博士(獣医学)を取得。現在は民間企業で獣医師として働く傍ら、犬猫の感染症について確かな情報を提供するために、最新情報の収集に努めています。

  • 更新日:

    2020.09.12

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