犬の分離不安とは、飼い主さんと離れて犬がひとりぼっちで過ごす状態になると、過度に不安になりさまざまな問題行動を起こすことを言います。
本来、犬は社会性が強く、群れを成して生活する習性を持つ生き物なので、ひとりで過ごすことが得意ではありません。しかし、人間と生活していく中では、留守番をすることもあることから、多くの犬はひとりになることに少しずつ慣れていきます。
分離不安は、単にその犬の性格によって起こるのではなく、いくつかの原因があります。まずは分離不安の症状と原因について見ていきましょう。
犬が分離不安になると、以下のような症状が見られます。
・飼い主さんの留守中に部屋をめちゃくちゃにする
・飼い主さんがどこへ行くにも、その後をずっと付いて回る
・飼い主さんが出かけるのを察知すると吠え始め、留守中もずっと吠えている
・普段は粗相をしないのに飼い主さんが留守のとき、トイレ以外の場所で排泄をする
・飼い主さんが留守の間、自分の手足を過剰に舐める、噛むなどの自傷行為をする
・飼い主さんが帰宅すると、嬉しさのあまり興奮しておしっこを漏らす
分離不安は、犬にとっても飼い主さんにとっても辛く、大きなストレスになります。愛犬のこのような行動に気付いたら、早めに対処する必要があります。
犬が分離不安になってしまう原因としては、以下が挙げられます。
過去に捨てられた経験があったりすると、飼い主さんが出かけようとすると敏感に反応し、「自分の元に戻ってこないかも」と不安になり、分離不安になってしまうことがあります。
また、今まで留守番ができていたのに、留守番中に地震や雷などの怖い経験をすると、「ひとりになると怖いことが起きる」と思ってしまい、その不安から分離不安を起こしてしまう犬もいます。
愛犬と一緒にいるときにいつも抱っこをしていたり、どこに行くにも一緒だったりなど、お互いべったりな関係になると、飼い主さんへの依存心が強くなり、分離不安になりやすくなってしまいます。愛犬を可愛がることはもちろん大切なことですが、適度な距離を保って接することも時には大切です。
最初から留守番ができるという犬は極めて少なく、留守番トレーニングをすることで、ひとりで過ごすことに慣れていきます。徐々に留守番に慣らしていくと、「出かけてもそのうち帰ってくる」と認識し、ひとりでも落ち着いて過ごせるようになっていきます。
しかし、留守番トレーニングが不足しているとこの認識が芽生えないので、分離不安になってしまうことも少なくありません。
犬の分離不安は、トレーニングによる行動療法をすることで治せます。しかし、症状がひどい場合は、行動療法と併せて薬物療法を行うこともあります。
分離不安の犬は、脳内のセロトニンが不足しており、それにより不安や恐怖の感情をコントロールするのが難しくなっています。そのため、セロトニンの作用を高める薬を投与して症状を緩和します。
分離不安の行動療法を獣医師やプロのトレーナーにお願いした場合にかかる費用は、初回カウンセリング(30~45分)が3,000~5,000円程度、初回診察が15,000~20,000円程度です。獣医師が薬物療法も必要と判断した際は、この費用にプラスして薬代もかかります。また分離不安を治療する上では長期的な視点でトレーニングをする必要があるため、その分トレーナーさんや獣医師さんへ支払う費用は高くなっていきます。
分離不安は飼い主さんと離れることで起きてしまうため、その予防には飼い主さんが一切愛犬と離れず、四六時中ずっと一緒にいるといった策もあります。しかしながら現実的には四六時中ずっと一緒にいるというのは難しいため、徐々に留守番トレーニングをして、ひとりで過ごせるようにすることが重要です。出かける素振りを見せずに部屋から出て、1分経ったら戻って来るというようにし、2分、3分……と徐々に留守番時間を長くして、少しずつ慣れさせていきましょう。
また、甘やかして過保護になるのも要注意です。飼い主さんがいつでもそばにいて構ってくれるというのが当たり前になると、別の部屋に飼い主さんが行くだけでも不安になってしまうということもあります。そのため、愛犬と同じ部屋に一緒にいても意識的に話しかけない、触れない時間を作ることが大切です。
分離不安が治っても、また飼い主さんと愛犬とで依存関係になると再発する可能性は高いと言えます。
サルカワblogを運営する飼い主さんの愛犬はもともと迷子犬だったコで、家族として迎えて一緒に暮らし始めた当初、分離不安だったとのことです。ほんの少しの間でも飼い主さんの姿が見えなくなると吠え始め、パニックになるとウンチを漏らしてしまうこともあったとか。飼い主さんはそんな愛犬の様子を見て、分離不安であることに気付きました。
そして獣医師に相談したのち、愛犬との接し方を工夫したり、分離不安を克服するためのトレーニングを始めていきます。
具体的にしたことの一例としては、愛犬の自立心を養うために膝の上で寝かせない、留守中に大人しく過ごせるよう、出かける前にたくさん運動をさせてエネルギーを発散させる、素知らぬ顔で出かけ何事もなかったかのように帰ってきて、留守番を特別なことだと思わせないようにするなど。これらを継続していったところ、少しずつ分離不安が治っていったそうです。
犬の分離不安は、愛犬と適度な距離を保つようにして接し、ひとりで過ごすことに慣れさせるトレーニングをすれば徐々に改善に向かうことが出来ます。しかし、1~2日ですぐに改善するようなことではありません。分離不安になり問題行動を起こしたとしても強く叱ったりせず、焦らず気長にトレーニングをしていくことが大切です。