犬の膿皮症の治療では、症状の程度によって内服薬と外用剤を使い分けます。症状が全身にわたっているのであれば抗生物質の内服をおこない、局所的であれば外用薬を用います。また、補助的にシャンプー療法をおこなうことも効果的です。
多くの場合は治療開始から約1~2ヶ月程度で回復に向かいますが、犬の膿皮症は比較的再発することが多いことから、悩んでいる飼い主さんが多い疾患です。
抗生物質を使用して治療する場合は、処方された期間はしっかりと服用することが重要です。抗生物質の服用を途中でやめてしまうと、薬が効かない菌が出現し再発しやすいと考えられています。
膿皮症は繰り返すことが多いので、治療の補助として定期的なシャンプーで皮膚を健康に保つことが肝心です。
膿皮症の治療の補助として使用されるシャンプーには、「クロルヘキシジン」と呼ばれる抗菌成分が配合されている薬用シャンプーが一般的です。週に1~2回程度、4週間程度使用すると良化してきます。全体的に良化してきたら、皮膚に刺激性が少ない保湿系のシャンプーに切り替えるとよいでしょう。
薬用シャンプーは、皮膚状態に応じて使い分ける必要があります。シャンプー療法を実施する場合は、自己判断は控えて必ず動物病院で相談するようにしましょう。
シャンプーをおこなう目的は、菌の数を減らして症状を軽減し皮膚の健康を維持することです。
不適切なシャンプー方法を続けていると、十分に菌を落とすことができないだけではなく、かえって皮膚トラブルの原因になってしまいます。特に、シャンプー後に赤くなる、痒くなる場合はまずはシャンプーの方法の見直しを行うことも重要です。
愛犬の皮膚を健康に保つためには、正しいシャンプー方法を知り実践していくことが大切です。それでは、正しいシャンプーの6つのステップを見ていきましょう。
まずは、愛犬のからだ全体をぬるま湯でぬらします。使用するお湯の温度は37度前後を心がけましょう。熱すぎる温度は、皮膚や被毛の乾燥を招くため注意が必要です。
見落としがちですが、非常に重要なポイントです。
愛犬の身体をこすらずに洗えるよう、シャンプー剤を十分に泡立てましょう。
シャンプー剤を皮膚や被毛へ直接塗布してからゴシゴシと擦って洗う方法は、シャンプー後の皮膚トラブルを起こしやすくしてしまいます。
シャンプー剤と少量の水を混ぜ、スポンジやネットなどを使用して空気を含ませるようにかくはんさせると上手に泡立てることができます。上手く泡立てることができない場合は、泡で出てくるポンプ容器の使用が便利です。
きめ細かい泡はクッションの役割を果たして皮膚表面の刺激を軽減するほか、液剤を直接つけた場合よりも汚れや皮脂の吸着率が上昇すると言われています。
特に毛が太くて短い犬種(フレンチブルドッグやミニチュアピンシャーなど)では、毛を逆立てて洗うことは皮膚トラブルの原因になることがありますので注意しましょう。
シャンプー剤を洗い流す際は、すすぎ残しがないように注意します。特に、毛がある部位とない部位の境目や、しわが多い部位はシャンプー剤が残りやすいためしっかりと洗い流しましょう。
顔まわりのすすぎが苦手なワンちゃんは、優しく流水で洗い流すか、スポンジに水を含ませて撫でるように洗うと良いでしょう。
シャンプーで洗った後は皮膚が乾燥しやすくなるので、保湿剤を使用するのがおすすめです。保湿剤は、水分蒸散を抑えて皮膚の保湿に役立ちます。
アミノ酸、尿素、セラミド、ヒアルロン酸、リピジュアなどの保湿成分が配合されたものを中心に使用しますが、保湿剤を選ぶ際はかかりつけの獣医師に相談するようにしてください。自己判断で人用の保湿剤を使用することはおすすめできません。
皮膚と被毛を乾かす際には、柔らかく吸水性の良いタオルを使って、水分を拭い取ることで効率的に乾かすことができます。
ドライヤーを局所的に当てる、近づけすぎる、長時間同じ場所に当てるなどすると高温になる場合があります。皮膚に手を当てて、温度が高すぎないか確認しながら乾かしましょう。
いつもと違う空間、水、音を怖がって、シャンプーを嫌がる子は多いです。その場合は無理をせず、難しいようなら日を改めて実施したり、動物病院やトリミングサロンで相談することも視野に入れましょう。
顔周りや耳などを嫌がる場合は無理に洗おうとせず、体だけを洗うなど工夫が必要です。
また、シャンプーでの事故防止のために犬用バスや滑り止め用マットで安全面を工夫し、シャワーの水圧やドライヤーの風圧を弱くするなど、愛犬にとって安全快適にシャンプーできる環境を用意することが大切です。
犬の膿皮症は、繰り返しやすい皮膚トラブルのひとつです。
定期的なシャンプーは犬の膿皮症に効果的ですが、一方で不適切なシャンプーは皮膚トラブルの要因となります。正しいシャンプーを習得し、皮膚の状態に合わせてシャンプーを実施していくことが再発防止には重要です。
膿皮症を繰り返すワンちゃんは、皮膚が見た感じきれいになっても、月に2回程度を目安に定期的にシャンプーしていくことをお勧めします。
皮膚の状況に応じて薬用シャンプーは使い分ける必要があるため、シャンプー療法を実施する場合は必ず動物病院で相談するようにしましょうね。