まずは、子犬たちがどのように飼い主の元へとやってくるのか、犬の生体販売の流通の仕組みからご紹介します。
多くの場合、子犬は主にブリーダーなどの「繁殖業者」のもとで生まれ、「せり業者」や「卸売業者」を介してペットショップの店頭に並び、飼育者のもとへとやってきます。
少し前には、ペットショップ兼ブリーダーの形態をとる企業も存在しました。そういった企業では、複数のブリーダーと連携して繁殖をおこない、ブリーダーから直販されるケースも多く見られました。
現在では、せり業者が行うオークションなどを介して、ブリーダーからペットショップへの流通形態が主流となっています。
次に、日本で生体販売をおこなうペットショップや、オークションの現場の状況について紹介していきます。
ペットショップとは、犬や猫をはじめとする小動物を仕入れて、購入者に直接店頭で販売する店舗のことです。
現在のところ、日本において犬を家族として迎える際に利用割合が最も多いのがペットショップで、平成21年度の調査によると子犬を迎えた人全体の67%がペットショップから子犬を迎えています。
ペットオークションでは、ブリーダーから出品された犬や猫を複数の販売業者間で競り落とされます。
平成31年の時点の環境省のデータでは、関東と関西を中心として全国に26のオークション業者が登録されています。大手のペットオークションでは、毎週約2,000頭近くの生体が競りにかけられています。
犬の移動販売は、遠方から犬をトラックなどで運搬して、大きな会場を借りて販売する方法です。
狭いケージに入れられて長時間の移動の末に、多くの人間と接することを余儀なくされる子犬たちは、大きなストレスがかかる環境に置かれています。また、その土地での販売が終わればすぐに別の場所へと移動し、各地を回りながら売り捌くため、毎日のように長距離移動する場合もあり、元々免疫力の低い子犬は感染症にかかり死亡してしまうケースもあります。
ここでは、犬の生体販売の裏側に見え隠れする社会問題を紹介していきます。
生体販売の流通の過程において亡くなっている犬や猫の数は、2018年度では少なくとも約2万4千頭いることが朝日新聞の調査によって明らかにされました。2018年度の犬猫の流通量の約3%に当たる数の小さな命が、流通過程で亡くなっていることになります。
この数には、死産や寿命で死ぬ犬猫は含まれていないため、ブリーダーからせり業者、卸業者、ペットショップへと流通されていく間に、販売用の子犬・子猫や繁殖犬・猫が病気やケガ、ストレスによって命を落としていることになります。
店頭販売されている犬には、犬種名や価格、年齢などと共にワクチン接種の有無やブリーダー情報などが表示されている場合がほとんです。私たちはその情報が正確がどうか知る術がないため、店舗に話を聞く中で信用できるかどうかを判断するしかありません。
公正取引委員会の実態報告書によると、「ブリーダー直送」と表記していながら、生体をブリーダーから直接仕入れているわけではないケースが報告されています。また「ブリーダーショップ」と明記していながら、実際には自家繁殖をおこなっていない例も一部では確認されています。
子犬たちが売れ残って大きくなると、買い手が見つかりにくくなることも少なくありません。
売れ残った子犬たちの行き先は、ペットショップによって異なります。優良なペットショップであれば、大きく成長した子犬でも値下げをしたりしながら、飼い主が見つかるまで健康管理にも責任を持って命を預かります。また、保護団体に引き取られて次の飼い主のもとに渡るケースもあります。
一方で一部の劣悪ショップでは、店の裏で放置されるか、悪質ブリーダーの元へ出戻り繁殖犬になることも少なくありません。有料で犬を引き取る「引き取り屋」の元へ渡されることもあります。引き取り屋による虐待や、劣悪な環境での飼育による死亡のケースも報告されており、苦しく悲しい運命をたどる命が少なからず存在するのが現状です。
生体販売が必ずしも悪であるわけではなく、愛情を持ちながら販売している善良なブリーダーやショップも存在します。しかし、悪徳な業者によって命ある犬がお金を稼ぐための道具としてずさんに扱われ、命を落とすケースもあるということを忘れてはなりません。人間の都合により悲しい運命をたどるしかない犬たちを減らすためにも、日本の生体販売のあり方について考える必要があるのではないでしょうか。
関 ゆりな/ドッグライター
ビションフリーゼのココメロ(1歳)とのんびり暮らすフリーランスライター。ココメロの健康のため栄養満点の手作り食を作るべく、栄養学について勉強中。
長年犬を飼ってきた経験を元に、愛犬との生活がより充実できるような、愛犬家の皆様のためになる情報発信を目指します。