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住まい / 生活

2020.08.09

日本のペット産業に潜む闇を考える

日本のペットショップの現状。ペットの小売に関する法規制とは?

動物愛護管理法は、制定されてから現在までの47年間に4回もの大きな改正が行なわれています。それだけペットに関しての法改正が必要だったということです。そのなかには、私たち飼い主にも関わる「小売」に関する内容も含まれています。
今回は、日本のペットショップの事情をデータとともに紹介し、ペットショップに代表される「小売業」における日本の法規制について、動物愛護先進国と比較しながら解説していきます。

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

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日本のペット産業における小売業者の立ち位置

ペットショップ

日本のペット産業における小売業者というと、大きいところはペットショップです。現在の日本のペットショップは、多くがショッピングセンターやホームセンターにテナントとして入っていたり、単独で大型専門チェーン店として展開していたりします。
そして、ドッグフードをはじめとするさまざまなペット関連グッズとともに、かわいい子犬がケースのなかに陳列されているという店舗ディスプレイが標準的とも言えます。

日本のペットショップの役割は子犬の販売

ペットショップでは、ケースに入れられて子犬たちが生体販売されています。日本のペットショップは、飼い主となる人に犬を直接供給する窓口となっているのです。

ペットショップ以外の子犬供給の窓口として、ブリーダーからの直接入手、友人や知人からの入手、保護施設からの譲渡、インターネット経由の販売や譲渡などがあります。比較してみるとその割合は圧倒的にペットショップが多く、環境省が公開している2008年度の資料によると、ペットショップが68%、ブリーダーからが24%となっています。

さらに、より新しい資料によると、ペットショップでの購入割合は50.3%で、以下ブリーダーからが15,2%、友人知人からが14.0%、知人のブリーダーが8.7%、インターネット経由の譲渡が4.4%、施設からの譲渡が2.7%(ペットフード協会による統計データ「全国犬猫飼育実態調査」2019年度版より)となっていて、時代の変化とともにペットショップの比率は下がっていますが、それでもまだ全体の半分を占める高い比率を保っています。

このように日本のペット業界でのペットショップとは、子犬の販売店という位置づけとなっているのです。

動物愛護先進国の標準とは大きく異なる日本

日本のペット業界における小売業者の立ち位置は、ヨーロッパの動物愛護先進国と比較すると大きく異なります。

動物愛護先進国では、小売業者が子犬の陳列・生体販売をしていません。ヨーロッパの動物愛護先進国のペットショップはあくまでグッズショップであり、子犬の供給窓口とはなっていません。

最近は日本でも生体販売しないショップが増え、社会的に生体販売禁止のムーブメントが起こっていますが、まだ実質的な禁止には至っていません。

日本のペット小売業者の実態

ペットショップ

日本のペット市場は1.5兆円の規模に拡大しているといわれています。

2017(平成29)年度の日本ペット用品工業会による「ペット用品統計調査」では、出荷額が約1兆1,300億円にもおよび、用品だけでも1兆円の大台を越えています。

また、同年度の環境省データによると、日本では16,004件の犬猫の販売業者が登録されています。これらがすべて店舗を持つペットショップではありませんが、大変な数の小売業者が巨大市場に関わっているのです。

企業化が進むペットショップ

ペットショップの形態は、2001(平成13)年に環境省によるアンケート調査「犬・猫の調査結果」によると、法人経営が21.3%、個人経営が59.2%となっており、その当時は大部分が個人経営で占められています。

最新のデータは開示されていませんが、その後20年経過するあいだにペットショップは各種モールへの出店や大規模化が進んでいます。

ペットショップなど小売業に関わる法令

ペットショップ

ペットの小売業に関する法令は、生体販売をしていない場合でも、まずは「民法」や「消費者契約法」などの一般的な法律が適用されます。ペットの小売に関しても、販売業者には瑕疵担保責任、原状回復義務、債務不履行責任、損害賠償責任などの義務・責任が生じます。

守るべき法律は多い

物品だけでなく生体販売をしている場合は、さらに「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」をはじめ、小売と繁殖を兼ねているショップも多いので「狂犬病予防法」や「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(いわゆるペットフード法)などのペットに固有の法律も関係してきます。

その他にもペットに関わる法令はたくさん存在します。動物愛護管理法施行令、同施行規則、家庭動物等の飼養及び保管に関する基準、展示動物の飼養及び保管に関する基準、第一種動物取扱業者(生体販売者はこれに該当)が遵守すべき動物の管理の方法等の細目などの政省令があります。
ペットの生体販売を含む小売業の場合は、これらをすべて遵守しなければならないのです。

小売面でも責任が強化された動物愛護管理法

多岐にわたる法令の中でも、特に動物愛護管理法は改正が重ねられ、販売業者に関しても責任が強化されています。動物を扱う業者は登録や届け出が必要で、第一種動物取扱業と第二種動物取扱業に分類されます。第一種は登録制で、業態範囲は繁殖を含む販売・保管・貸出・訓練・展示・有償譲受飼養・ 競りあっせんとなっており、第二種は届出制で、非営利での譲渡・保管・貸出・訓練・展示のうち、飼養施設を設置して一定数以上の動物を取り扱うものとなっています。

犬を販売する第一種動物取扱業には、トレーサビリティーや生涯の飼養義務の観点も求められ、犬猫等健康安全計画の策定や、個体の帳簿作成とその5年間の保存、さらに毎年1回の都道府県知事への定期報告などが義務づけられているのです。

また、インターネットでの販売を防ぐために、販売業者には犬を実際に見せる現物確認や、犬の飼養や保管についての18項目(※)に及ぶ細かい対面説明が義務づけられています。これらの説明は購入者の署名などによる確認が必要で、説明者も一定の要件を備えている人に限られ、事業所以外での説明も登録済の者に限られるなど、詳細に決められています。
さらに営業時間や56日齢規制(実質は49日齢)など、販売に関して厳しく定められています。

※品種、性成熟時の標準体重・体長等、平均寿命、飼養施設等、給餌給水方法等、運動と休養、人と動物に共通する感染症、遺棄の禁止等法規制、生年月日、不妊去勢措置、病歴やワクチン接種状況、親・同腹子の遺伝性疾患の状況など。

ペットショップの業態が変化する日も、そう遠くないかも

ペットショップ

犬にまつわる日本人の意識・スタイルの変化は継続中です。そのスピードはまったく衰えず、ペット産業、ペット業界もそれと歩調を合わせて変容が続き、流通の最終段階であるペットショップにも、法的な規制が強化されるなど変化の波が押し寄せています。
動物愛護先進国と同様の、ペットショップでの生体販売禁止という、業態そのものが変化する日も、そう遠くないかもしれません。

◎ライタープロフィール
西村 百合子

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士、犬の東洋医学生活管理士2級

ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。

  • 更新日:

    2020.08.09

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