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住まい / 生活

2020.08.07

日本のペット産業に潜む闇を考える

ペットオークションの実態。ペットショップの子犬の「流通」の仕組みを知ろう

現在、日本のペットショップにいる犬猫の大半は、ブリーダーからペットオークションを経由して販売されています。しかし、このペット業界の流通システムは、問題が浮き彫りになっています。不幸な動物を生み出さないようにするためにペット業界の裏側にも意識を向け、日本におけるペットオークションの現状や、ペットオークションがはらむ社会問題について知っておきましょう。

Author :新井 絵美子/動物ライター

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日本におけるペットオークションの現状

ペットオークション

はじめに、日本におけるペットオークションの現状からご紹介します。

ペット産業構造におけるオークションの立ち位置

ペットオークションとは、ブリーダーが持ち寄った犬や猫をペットの販売業者が競り落とす競り市です。現在、大手のペットショップで販売されている犬猫の50%以上は、ブリーダーからペットオークションを経由して店頭に並ぶと言われています。つまり、「ブリーダー→ペットオークション→ペットショップで販売」という流通経路になっています。

全国のペットオークションの数

2019年4月時点でペットオークションは、関東地方や関西地方を中心に全国に26業者が存在します。(※1)ほとんどは会員制で、ペットオークション業者は、ブリーダーとバイヤーからそれぞれ入会金、年会費、落札手数料をもらって収益を得ています。

ペットオークションの開催状況

一般的にペットオークションは週に1回行われます。会場に運ばれてきた子犬・子猫は、有識者や獣医師がパルボウイルス検査を行ったのちに、競りにかけられます。

コンピューターによる先進の競りシステムを採用しているところでは、まず会場内の大画面に子犬・子猫の競り情報が映し出されます。そして、落札希望者は手元の端末スイッチを押して落札意思を表示し、最高値を示したバイヤーが落札となります。1匹あたりの落札にかかる時間は数秒、長くてもほんの数分程度です。

大手のペットオークションでは、週に2,000頭近くが出荷され、まるで「物」を落札するかのような競りが淡々と行われていきます。

ペットオークションがはらむ社会的問題

ペットオークション

命ある商品(動物)の売買が行われるペットオークションには、以下のような社会問題が浮き彫りになっています。

悪質ブリーダーの温床

ペットオークションには、動物取扱業者の登録があれば利用できます。動物取扱業者の登録は、要件だけ満たせば誰でもなることが可能です。そして、オークションは、繁殖施設の状況や動物の管理体制などのチェックをすることなく行われています。そのため、悪質ブリーダーの温床になっているのが現実です。

悪質なブリーダーは、多くの犬をペットオークションに持ち込めばその分利益が得られるため、親犬の健康状態を考慮せずに繁殖できる限り子犬を産ませています。このような悪質ブリーダーは、全国にかなり存在すると憶測されています。オークションへの参入障壁を高くしないと、悪質ブリーダーの参入を抑えることは難しいと言えるでしょう。

病気が蔓延する恐れがある

ペットオークションで懸念されているのが、感染症が蔓延するリスクです。ペットオークションでは、トレーサビリティ(繁殖(生産)段階から消費段階までの流通経路を記録し、履歴を追跡可能にしておくこと)が確立できていないので、ブリーダーの施設の状況や動物の管理体制、子犬の親犬の情報などを落札者は確認でません。そのため、悪質ブリーダーの元にいた動物は病気を抱えていることも少なくありません。

出品前の健康チェックは、いつも獣医師が担当するとは限らないほか、極めて短時間で行われるので、病気を抱えた犬猫が入り込み、競り落とされていくリスクが常にあります。もし感染症や寄生虫などの病原体を持っていた場合は、オークション会場にいる動物に一斉に蔓延する恐れがあるうえ、すでにペットショップにいる他の個体にまで感染してしまうかもしれません。

流通過程で死亡する動物もいる

流通過程で犬猫が死亡していることも問題視されています。2017年度、犬猫それぞれ合わせた流通量は85万7814匹で、そのうちの約3%(犬1万8792匹、猫5679匹)が流通過程で死亡しています。

生後間もない犬猫は、空気穴が空いた狭いダンボールやケージの中に入れられ、いくつもの流通過程をたどります。それは子犬や子猫にとって大きなストレスとなり、病気に対する免疫力を低下させてしまうため、衰弱して死んでしまうのです。

ペットの流通に関しては明るみに出ませんが、「命のある商品(動物)」が「貨物」と同じような扱いをされているペット業界の流通システムは、見直すべきことの1つです。

殺処分を助長している

ペットオークションは、殺処分を助長する原因になるとの批判の声もあがっています。

ペットオークションでは、商品価値がないとして買い手がつかずに残ってしった犬猫は、引き取り屋などの業者にわたることも少なくありません。その理由は、2013年から保健所は、ブリーダーやペット販売業者からの引き取りを拒否できるようになったからです。

保健所で引き取ってもらえなければ、ブリーダーや引き取り屋が大量遺棄することにもなりかねません。そのような動物が住民によって保健所に持ち込まれ、譲渡先が決まらなければ殺処分となります。実際、保健所に持ち込まれる犬猫のうち、8~9割もが飼い主不明です。(※2)

また、悪質ブリーダーが飼育した動物も競りにかけられるため、購入した犬や猫が病気を持っており、これ以上面倒見きれないとして飼い主が保健所に持ち込むこともあります。飼い主に見捨てられた動物も、新たな飼い主が見つからなかったり、治療の回復が見込めないと判断されたりすれば殺処分です。

このようにペットオークションは、殺処分を助長する原因になっています。

見直すべき課題を抱えたペットオークション

ペットオークション

ペットオークションに持ち込まれる動物は、まるで野菜かのような「物」扱いで淡々と競りにかけられ、トレーサビリティが確保できないまま販売されています。それゆえに悪徳ブリーダーの温床や殺処分問題など、無視できないほどの社会問題にまで発展しています。不幸なペットを生み出さないためには、ペットの流通のあり方を一から見直す必要があるのではないでしょうか。

(参考文献)

参考文献
◎ライタープロフィール
新井 絵美子 動物ライター

新井 絵美子/動物ライター

2017年よりフリーランスライターとして、犬や動物関連の記事を中心に執筆活動をおこなう。
過去に、マルチーズと一緒に暮らしていた経験をもとに、犬との生活の魅力や育て方のコツなどを、わかりやすくお伝えします。

  • 更新日:

    2020.08.07

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