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健康管理 / 病気

2020.08.15

犬の歯医者さんはいるの?動物病院で受けられる歯科治療の種類とは

3歳以上の犬の8割は歯周病をはじめとした歯の病気を抱えていると言われています。犬の口内はアルカリ性で人間に比べて虫歯になりにくいと言われていますが、逆にアルカリ性であるがために歯垢がつきやすく、あっという間に歯石が形成されてしまいます。歯周病を放っておくと、重大な病気をに発展するリスクがある深刻な病気です。しかし、本格的に歯の治療ができる動物病院はごくわずか。今回は、犬にとっても必要な歯科治療について、一般的な動物病院で受けられる治療内容や本格的な歯科治療を受けられる病院や実際に歯科治療を受けた飼い主さんの体験談までをご紹介します。

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

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実は「犬の歯医者」の免許は存在しない

犬の歯医者

日本では、多くの動物病院が総合医療を掲げ、外科から内科までを獣医師が診察してくれます。最近では、皮膚科、眼科、腫瘍科など専門医が診察にあたる病院も増えてきましたが、人間のように細分化された診療科目がない事が現状です。動物病院の中には、歯科治療を診療科目に掲げている病院もありますが、実は人間の歯科医のように資格があるわけではありません。

歯科治療は「獣医師」がおこなう

私たちが歯の治療を受けるのは歯科医院です。歯科治療には、専門の器具や設備、機材が装備されていることをご存知だと思います。また、人間の歯科医は専門の大学で知識を学び、研修医として技術を体得し、歯科医として独立します。

しかし犬の場合は、動物病院で獣医師によって歯科治療が行われています。獣医師が大学で学ぶのは獣医学で、大学を卒業後研修医として大学病院などで研修医や勤務医として臨床経験を積むのが一般的です。残念ながら、獣医学の中には歯科という科目はなく、人間の歯科医のように歯科について専門的に学ぶことはありません。そのため、動物病院で行われる歯科治療には限界があると言っても過言ではないのです。

動物病院では抜歯を勧められることが多い

犬が虫歯や歯周病を発症し、動物病院に連れて行くと獣医師に歯を抜くことを勧められた経験がある方も多いのではないでしょうか。一般的な動物病院には、歯科治療専門の機材や設備がありません。また、獣医師にも歯科治療の知識や経験がないため、人間の歯科治療では簡単に治せる歯でも、犬の場合は全身麻酔での抜歯を選択することになってしまうのです。

動物病院で受けられる犬の歯科治療の種類

犬の歯医者

一般的な動物病院では、歯科治療を行わないケースが多くあります。しかし、近年犬のオーラルケアが注目され、歯垢除去は多くの動物病院で行われるようになってきています。歯垢除去は、全身麻酔が必要だと多くの飼い主が不安に思っているようですが、最近では無麻酔で歯垢除去を行う動物病院も増えてきています。しかし、あくまでも歯科治療に詳しいまたは独学で学んだ獣医師が行うもので、専門の歯科医師が治療するわけではありません。そのため、動物病院で治療できる歯科治療は歯石除去または抜歯の2種類となります。

歯石除去

3歳以上の犬の8割が歯周病を発症していると言われています。歯垢と歯石は歯周病の原因となるもの。放っておくと最悪の場合はほっぺたに穴があいてしまったり、歯周病菌が原因となる疾患を発症する可能性があります。そのためにも、歯垢はしかりと除去してもらう必要があります。

動物病院での治療方法

一般的な動物病院では、全身麻酔で歯垢除去する方法と無麻酔で行う2つのタイプがあります。全身麻酔のリスクを怖がる飼い主さんが多いため、無麻酔での歯垢除去を行う動物病院が増えてきていますが、しっかりと歯垢除去してもらうためには全身麻酔が必要となります。歯垢除去の基本的な治療は、スケーラーと呼ばれる器具で、歯垢と歯石を取り除きます。歯科専門病院ではない場合、歯石の状態によっては抜歯を勧めることがあります。

動物病院での費用の目安

歯石除去の費用は、動物病院や歯石の状態によって異なります。無麻酔での歯石除去の場合は、約千円程度からが目安です。全身麻酔をする場合は、別途検査費用、麻酔費用などが発生します。軽度の場合で約3万円程度からとされていますが、動物病院によって異なります。

動物病院での通院頻度・期間の目安

歯石除去は、1回の処置で済む場合と、処置内容に応じて通院が必要となることがあります。通院の場合は、3回程度が目安となりますが、歯石の状態や動物病院によって異なります。

歯科専門動物病院で受けられる犬の歯科治療の種類

犬の歯医者

愛犬の歯が折れてしまった、虫歯ができている、歯を痛がるなど歯の症状がある場合は、歯科専門の動物病院を受診する必要があります。歯科専門病院で受けられる治療には、人間の歯科と同じだけの種類があるため、一般の動物病院で断られてしまう状態でも安心して治療を受けることができます。

歯石除去

放っておくと歯周病菌が全身に回り、脳や心臓に悪影響を与える歯周病。歯石除去は、そんな歯周病から犬を守るために必要な処置なのです。状態によっては、抜歯を勧められることもある歯石除去ですが、歯科専門動物病院ではなるべく歯を残す方法が選択されます。

歯科専門動物病院での治療方法

歯科専門病院では、犬の状態によって異なりますが、ほとんどの場合、初回は全身麻酔で歯石除去を行います。治療内容として、超音波スケーラーによるスケーリングでの歯石、歯垢除去に加え、ポリッシングと呼ばれる歯の研磨作業、歯を強化するコーティングなどが行われます。歯石の状態によっては通院が必要となる場合があります。

歯科専門動物病院での費用の目安

歯科専門の動物病院で歯石除去をする場合にかかる費用は、犬の大きさ、歯石の程度、動物病院によって異なります。目安として、小型犬では初回4~5万円、大型犬では7~9万円程度と言われていますが、歯石の状態によってはかかる費用に差があります。

歯科専門動物病院での通院頻度・期間の目安

歯科専門の動物病院では、初回に歯の状態を詳しく診察します。歯石除去が1回で完治しない場合は、数回にわたって通院治療を受ける必要があります。また、歯石除去だけではなく抜歯が必要となった場合や虫歯が見つかった場合には、さらに通院治療をする必要が出てきます。

定期検査

犬は虫歯になりにくいと言われていますが、ドッグフードなどの影響で歯石が付着しやすく、歯周病を発症しやすい動物です。また、定期的に歯磨きをしていても、歯石が付着してしまうことが多く、定期検査によってはの状態を確認しておくことが有効です。

治療方法

犬の歯の定期検査では、レントゲン検査や歯周ポケット検査などが行われます。

費用の目安

検査だけの場合は、初回約2,000円程度が目安ですが、動物病院によって異なります。

通院頻度・期間の目安

歯周病にさせないためにも3~4ヶ月に1回程度の検診が推奨されています。

折れた・欠けた歯の治療

硬い骨を噛んで歯が折れてしまった、欠けてしまったというトラブルは実は意外と多いもの。犬の歯が欠損してしまうと、食事ができない、痛みで元気がなくなるなどの症状が出ます。歯の欠損は、一般の動物病院では、抜歯を提示されることが多くありますが、歯科専門病院では人間の歯と同じように歯を残すための治療が行われます。

治療方法

欠損した歯の治療では、根の治療とも呼ばれる神経などの歯髄を取り抜く根管治療が全身麻酔によって行われます。さらに、CR充填が行われます。歯科専門病院では、人間の歯科治療と同様の器具を使用し、同じ方法で行われます。

費用の目安

根管治療が必要となる歯の本数にもよりますが、抜髄1本約3~4万円程度が目安とされています。この他に、全身麻酔にかかる検査費用、全身麻酔費用などが必要となります。

通院頻度・期間の目安

全身麻酔で行われるため、多くの場合は1回の治療で終了します。ただし、治療後の処置が必要な場合や、術後検査が必要な場合もあります。

虫歯治療

犬は虫歯になりにくいと言われていますが、食生活によっては虫歯となることがあります。一般的な動物病院には、歯科専門の治療器具や設備がないため、虫歯の治療はできません。犬の虫歯治療も、欠損などと同じように人間の歯科治療と同様の器具を使用し、同じ治療が行われます。

治療方法

歯がぐらつく、歯を痛がっているなどの症状が見られたら虫歯を疑います。あまりに虫歯が進んでいる場合は抜歯が必要となりますが、軽度~中程度の虫歯の場合は、虫歯を削り削った部分に歯科用のプラスチックを詰める(CR充填)といった修復治療が全身麻酔によって行われます。

費用の目安

虫歯の本数や進行度合いにもよりますが、全身麻酔費用を含め1本の治療に約3~10万円が目安とされています。

通院頻度・期間の目安

人間の場合は、虫歯治療に複数回の通院が必要となりますが、犬の場合は全身麻酔を施しての治療となるため、治療は1回で終了しますが、経過観察が必要となる場合は、複数回の通院が必要です。

神経の治療

歯が欠けたり、歯周病が進行すると、歯の表面にあるエナメル質が削れてしまい神経が露出した状態になります。人間と同じように、犬も神経が露出した状態では、歯の痛みが大きく、食事はもちろん、ボールで遊んだりぬいぐるみをくわえたりすることもしなくなる可能性があります。神経が露出している状態を放置すると、抜歯することになってしまうため、早い処置が大切です。

治療方法

犬の歯の神経が露出する原因は、歯の欠損です。何かにぶつけて歯が欠けた、硬いものを噛んで歯が割れたなどが原因となることが多く、主に犬歯や奥歯に起きます。早い段階で発見された場合は、神経を残した治療が可能ですが、通常は歯髄を取り除く歯根の治療を行います。

費用の目安

神経の治療は全身麻酔で行われます。歯の欠損や抜髄の治療と同じ1本につき約3~4万円が目安となります。このほかに、全身麻酔に関する費用がかかります。

通院頻度・期間の目安

1回の治療で完結しますが、経過観察や追加の治療が必要となる場合は複数回の通院が必要です。

「犬の歯医者さん」がいる!?歯科治療が得意な動物病院

犬の歯医者

一般の動物病院では、歯石除去以外の歯の治療を行えるところは多くありません。これは、獣医大学に歯科専門学部がないためです。獣医師が歯科治療を行うためには、人間の歯学部で学ぶ必要があることが大きな障害となっています。ところが、不可能と言われていた犬の歯科治療に焦点を当て、歯科専門に治療を行っている病院があります。犬にも必要不可欠な歯科治療が行われている病院をご紹介します。

1.動物歯科のスペシャリストが院長を務める花小金井動物病院

東京都小平市で開院する花小金井動物病院は、日本で唯一の動物歯科専門医が院長を務める病院です。院長は、獣医学修士課程修了後、イギリスブルストル大学歯学部へ留学し、その後日大松戸歯学部で歯科疾患や歯科治療に関する研究を行ってきた歯学博士の称号を持つ動物歯科のスペシャリストとして知られています。

人間と同じ歯科治療が可能に

花小金井動物病院では、人間用の歯科治療器具を使用した歯石除去を行っています。歯石除去には、人間の歯科治療で使用されているスケーラーを使い、無麻酔で行っていることが特徴です。もちろん、抜歯せずになるべく歯を残すことを目指した歯科全般の治療を行っています。また、院長は特にオーラルケアの重要性を飼い主に啓発することを目指し、正しい犬のオーラルケアについての講演やセミナーを開催しています。

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花小金井動物病院・公式ホームページ

2.日本で唯一、獣医師と歯科医師がタッグを組む歯科専門病院

「愛犬にも人間と同じ歯科治療を」をコンセプトに開院したOCEAN'S DOG DENTAL CLINIC。動物病院には、人間の歯科医院と同じ設備や機材がないこと、たとえ虫歯治療であっても抜歯以外に選択肢がない場合が多いことなど、犬の歯科治療が大きく立ち遅れていることに着目し、獣医師と歯科医師が連携して犬にも人間と同じ高度な歯科治療を行っていることがOCEAN'S DOG DENTAL CLINICの特徴です。

質の高い医療サービスがモットー

OCEAN'S DOG DENTAL CLINICでは、病院内に専用の個室カウンセリングルームを設置、飼い主と医師が緻密なコミュニケーションをとることかに重点を置いています。治療前には、犬の性質や性格、既往症などを詳しく聞き取り、さらにレントゲン写真を見ながらの治療内容の説明と治療計画などが丁寧に伝えられます。歯石除去では、犬種、体質、性格、既往症などから無麻酔で行われることもあります。このほかに、歯の破損、欠損、虫歯、抜髄治療といった、人間の歯科医院と同じ内容の診察治療を受けることが可能です。

OCEAN'S DOG DENTAL CLINIC・公式ホームページ

OCEAN'S DOG DENTAL CLINICで治療した飼い主さんの体験談

OCEAN'S DOG DENTAL CLINICは、現在3ヶ月待ちと言われるほど人気の犬の歯科専門医院です。歯科専門病院ではどのような治療が行われているのでしょうか。受診した飼い主さんの体験談をご紹介します。

虫歯治療をしたAくん(ジャックラッセルテリア)

下の前歯がぐらついていることに気がつき動物病院を受診するも、抜歯以外の歯科治療はできないとのことからOCEAN'S DOG DENTAL CLINICを受診。歯茎が下がっているとの診断で、全身麻酔にて歯茎の補強と歯石除去を行うことに。さらに治療中に深刻な奥歯の虫歯2本が発見され抜歯。朝お預けにて、夕方には治療が終了。治療前後の写真を使用しての丁寧な説明で安心して任せられたとのこと。アフターケアとして、無麻酔での歯石除去も行ったそうです。
・初回治療費:約96,000円(保険適用可能)

歯垢除去をしたBくん(ジャックラッセルテリア)

口を触られるのを極端に嫌がることから、歯垢除去のために受診。初回は、鎮静剤にて歯石を除去し、アフターケアとして無麻酔で歯石除去を行いました。
・初回治療費:約55,000円(保険適用可能)

硬い骨を噛んで歯を欠損したCちゃん(ミックス)

大好きなボール遊びで、ボールを噛めない、くわえることができないことから歯の異常に気がつき、かかりつけの動物病院を受診するも、抜歯以外に選択肢がないため、歯科専門病院であるOCEAN'S DOG DENTAL CLINICを受診。診断結果は歯冠破折とのことで、人間と同じ抜髄根管治療及びCR充填で抜歯することなく歯を守ることができたとのこと。治療期間は当日のみで、治療中及び治療後の写真にて丁寧な説明から安心できたそうです。
・初回治療費:約21万円(保険適用可能)

犬にとって大切な歯を守るために歯科専門医の受診を

犬の歯医者

今までは、総合病院として一人または数人の獣医師があらゆる治療を行っていた動物病院ですが、最近では人間の病院と同じように診療科目が細分化されてきています。また、不毛と言われた犬の歯科治療も専門病院が誕生し、人間と同じような歯科治療が行われるようになってきました。「無麻酔の歯垢除去」がペットショップやトリミングサロンで行われ、全身麻酔にリスクを感じる飼い主から支持を得ていますが、犬の歯垢除去は医療行為の一つ。歯科専門病院でも無麻酔で歯垢除去を行っている病院もあります。歯垢除去は単なる歯石を取るためだけの治療ではなく、歯周病予防や口腔内検査も兼ねている犬にとってはいわば歯の健康診断。もし、愛犬の歯に不安を感じたら、専門医のいる病院を受診して、歯の健康診断を行ってもらうことも選択肢のひとつです。

【参考文献】
公益社団法人日本獣医学会

◎ライタープロフィール
西村 百合子

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士、犬の東洋医学生活管理士2級

ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。

  • 更新日:

    2020.08.15

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