「夜行性」とは、光の少ない夜の間に活動し、日中の明るい時間帯に休む習性を持つことを言います。
昼行性は夜行性の反対です。昼行性の動物は、昼間の明るい時間帯に活動をし、暗い夜の間に休みます。人間は昼行性の動物ですね。
犬は昼間の間にたくさん寝るので夜行性?と思われがちですが、実は現代で暮らす犬たちの多くは夜行性とは言い切れません。かといって多くの睡眠時間を必要とする犬は昼行性とも言えません。
犬のルーツと考えられている狼は、夜間に狩をする夜行性の動物です。しかしながら、人間と共に暮らすようになった犬たちは、飼い主の生活リズムに合わせて睡眠時間を調整しており、飼い主が寝る時間に寝るようになりました。このように現代で暮らす犬たちが夜行性でないのは、人との生活に適合させるためだと考えられています。
一方で、犬の視覚は暗いところでもモノを見分けるようになっており、夜間視力は人間の3倍ともいわれています。そのため、犬が夜にも行動できる動物であることは確かです。
また、海外などの野生下で暮らす犬は、明け方や夕方に活発に行動する薄明薄暮性の動物とされていますので、本来犬は「薄明薄暮性」と言えるのかもしれませんね。
犬は昼間や夜間に関係なく、すぐに目が覚めますよね。これは、犬の睡眠サイクルと深い関係があります。犬は人間と同じように浅い眠り「レム睡眠」と深い眠り「ノンレム睡眠」を繰り返します。
人間の場合、1日の睡眠時間の25%がレム睡眠、75%がノンレム睡眠です。一方、犬の睡眠時間は80%がレム睡眠、20%がノンレム睡眠です。つまり、犬は大半の時間が浅い眠りであるため、すぐに目が覚めるのです。
成犬は平均して1日に12~15時間の睡眠を必要とします。また、子犬や老犬は18~19時間と、必要な睡眠量がさらに長いです。
犬がこれほど長い睡眠時間を必要とするのは睡眠とノンレム睡眠の割合に関係しています。犬は浅い眠りであるレム睡眠の時間が非常に長く、深い睡眠であるノンレム睡眠が非常に短いのが特徴です。そのため、犬は長時間寝ないと十分に体を休めることができないのです。
夜行性の動物は世界中にたくさんいます。主な夜行性の動物+虫リストは以下の通りです。
・オオカミ
・ネコ
・ライオン
・ネズミ
・ハムスター
・コウモリ
・フクロウ
・カブトムシ
・コオロギ
・マムシ
このリストは序の口で、野生下で暮らす動物の中には夜行性の習性を持つ動物がまだまだたくさんいます。ハムスターを飼ったことをある人なら、夜間に忙しそうに活動する姿に見覚えがある人も多いのではないでしょうか?
夜行性動物は暗闇のなかで活動しなければいけないため、独特の特徴がたくさんあります。最も顕著な特徴は目の構造です。夜間は非常に限られた光しかないため、夜行性動物はわずかな光でも効果的に見るのに適した目の構造をしています。また、童謡でもおなじみのアイアイは暗闇でたくさんの光を取り入れるために、とても大きな目を持ちます。
また、小型コウモリは視覚ではなく、聴力が非常に発展した夜行性動物です。そのため、暗闇で周りが見えなくても効果的に狩りをすることができると言われています。
犬の目は人の目の構造とよく似ています。しかし、犬の目には人にはない「タペタム」と呼ばれる鏡のような層があり、人よりも効率的に光を集めることができます。そのため、犬はわずかな光しかない暗闇でも周りをよく見渡すことができます。
暗闇の中で犬の目に光を当てるとギラギラと光りますよね。犬に目の中にあるタペタム層は鏡のような役割をしており、角膜・水晶体・ガラス体を通ってきた光を跳ね返す役割をしているのです。そのため、犬の目に光を当てると、このタペタム層がその光を跳ね返し、目が光るように見えるのです。
ここでは、夜行性について詳しく解説していきました。実は犬は夜行性でも昼行性でもありません。犬は睡眠時間を飼い主の睡眠時間に合わせる非常にユニークな動物と言えます。現代で人と共に暮らす犬の多くは夜行性ではないとは言え、犬は夜行性の動物たちが持つ特徴の多くを受け継いでいます。犬の夜行性の特徴を観察しつつ、生活リズムを崩さないように注意してあげてください。
加藤 みゆき/獣医師
日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。