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健康管理 / 病気

2020.08.28

【獣医師監修】犬の前立腺癌ってどんな病気?症状・原因・治療法・予防法まとめ

犬の前立腺とは、膀胱の根元にあって前立腺液を分泌する器官です。もちろん前立腺はオスにしか存在しないため、前立腺癌は男の子しか発症しない癌ということになります。発症確率は非常に少ないとされていますが、前立腺癌にかかってしまうと多くの場合、腰骨下リンパ節や骨盤・腰椎等に転移をします。今回は犬の前立腺癌という病気について、原因や症状、治療法・予防法などの概要をご紹介します。

Author :監修:加藤 みゆき/獣医師(文:明石 則実)

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犬の前立腺癌ってどんな病気?

オス犬が病気で寝ころんでいる様子

基本的に前立腺癌にかかるのは人間と犬しかいないとされており、人間が高い確率で発症しやすいのに比べて、犬の場合の発症確率は稀だとされています。

具体的な症状としては、腫瘍による物理的な圧迫によって血尿や血便、尿が少量しか出ないしぶりなどが見られ、痛みも伴います。また非常に転移しやすい癌のため、骨髄やリンパ節に転移して歩行困難になったり、立ち上がれなくなることもあります。症状が進行してくると排尿困難となって尿毒症などを併発することもありますが、いずれにしても早期の治療が望まれる病気です。

初期症状

尿が出づらくなることから始まり、嘔吐や虚脱症状が見られます。この段階では膀胱炎を疑う場合も多いのですが、動物病院等での触診で前立腺癌が見つかることも少なくありません。触診すれば腹部圧痛や筋抵抗、また硬い筋瘤が認められることがあるため、大きな判断材料となります。確実に前立腺癌という診断を下すためには、尿検査や血液検査、レントゲン検査などが必要となります。

他の犬や人にうつる?

犬の前立腺癌は、ウイルス性や細菌性による病気ではないため、他の犬や人にうつることはありません。また遺伝による要因も不明です。

犬が前立腺癌になる原因とは?

オス犬が前立腺癌を患わっている

人間が前立腺癌になる場合は、精巣から分泌されるホルモン異常などの原因が考えられますが、犬の場合は原因が特定できていません。しかし前立腺癌にかかりやすい傾向や要因はあります。いくつかを見ていきましょう。

去勢済みの犬の場合

同じ前立腺の病気でも、前立腺肥大は未去勢の犬が発症するもので、去勢手術を施すことによって予防できますが、前立腺癌の場合は去勢済みの犬であっても関係なく発症するものです。去勢と前立腺癌の相関関係は不明ですが、前立腺癌にかかった犬の半数近くが去勢済みだとされています。

高齢の犬の場合

前立腺癌だけでなく他の癌にも同様のことが言えますが、高齢になるほど発症しやすいとされています。がん細胞は年齢に関係なく出現するものですが、若年の頃は体の免疫システムが働くために増殖が抑制されているものの、年を取って免疫が落ちてくると、がん細胞の増殖を抑えにくくなってきます。そのため犬も年を取ると癌の発症が顕著になってくる傾向にあるのです。

かかりやすい犬種や年齢

やはり免疫が落ちてくるシニア~高齢の犬が前立腺癌にかかりやすいと言え、小型・中型犬も8~10歳頃になると注意が必要です。 かかりやすい犬種としては、以下の犬が挙げられます。

・シェットランド・シープ・ドッグ
・エアデール・テリア
・ドーベルマンなど

犬の前立腺癌の治療法とは?

前立腺癌と診断された犬が獣医師の診察を受けている

犬の前立腺癌という病気には、現在のところ確立された治療法というものはありません。前立腺癌が進行した状態で見つかることも多く、経過が厳しいものになるからです。

前立腺摘出などの外科的治療や、放射線治療などの方法もありますが、癌が早期に発見された場合においてのみ有効となります。また排尿困難を緩和するために尿管移設などの手術が行われることもあります。

一方、前立腺癌の進行を遅らせる目的で、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を投与する対症療法も一般的です。根治を目指すよりも緩和ケアを目指すものとなります。

治療にかかる費用

治療法によってかかる費用はかなり異なってきます。外科治療を選択するか、対症療法を選ぶかによって治療の質も費用も変わってきますし、何より犬にとってどのような治療法が最善なのか?獣医師のインフォームドコンセントを受けながら考える必要があります。 費用に関しては、参考程度に以下に治療法別の費用目安を明記します。

・外科手術の場合、数万~数十万円
・抗がん剤など1回につき2~3万円
・放射線治療1回につき5万円程度
・入院費1日につき2千~5千円程度

ペット保険を加入しておくことによって、負担の軽減を図ることは可能です。

犬の前立腺癌の予防法とは?

犬が動物病院で診察を受けている

確たる発症原因が特定できないため、犬の前立腺癌には予防法がないのが現状です。もし可能であれば、高齢期に発症しやすいということを踏まえて、定期的に獣医師による検診を受けることが重要です。触診や各種検査など、早期発見に繋がる手段を講じることがポイントと言えます。

再発の可能性は?

前立腺癌を切除したり小さくしたとしても、もちろん再発のリスクは伴います。また骨やリンパ節に転移しやすい特性もあるため、術後の経過観察は非常に重要なものとなるでしょう。

犬の前立腺癌との向き合い方

犬が元気に走っている様子

犬の前立腺癌は発見することが難しく、根治も厳しい病気です。しかし工夫次第で飼い主さんや愛犬の負担を減らすことはできます。癌疾患に対応しているペット保険に加入しておくことや、少しでも痛みを和らげる緩和ケアを施すことは、決してマイナスではないと思います。飼い主さんと愛犬の生活の質を保つこと。それが何より重要なのかもしれません。

◎監修者プロフィール
加藤みゆき 獣医師

加藤 みゆき/獣医師

日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。

  • 更新日:

    2020.08.28

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