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健康管理 / 病気

2020.08.15

犬の肝炎は放置すると恐ろしい病気?症状・原因・治療法の基本情報まとめ

犬にとっての肝臓は体の中で重要な役割を担っている臓器です。解毒や造血、たんぱく質やホルモンなどの代謝を果たし、ビタミン類を合成するなど非常に多岐にわたる仕事をしています。その一方、肝臓は「沈黙の臓器」と言われており、病気が進行してもなかなか判明しづらいものです。犬の肝臓に関わる病気の中で代表的なものが肝炎という病気ですが、飼い主さんが気付けるサインはあるのでしょうか?また、犬の肝炎がどのようにして発症するのか?有効な治療法があるのか?などについても解説していきます。

Author :監修:加藤 みゆき/獣医師(文:明石 則実)

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犬の肝炎ってどんな病気?

犬 肝炎

犬の肝炎が起こりうる原因としては様々ですが、大きく分けて急性肝炎と慢性肝炎の2タイプに分類されます。

1.急性肝炎の症状

まず急性肝炎は、肝臓に急激な炎症が発生してしまい、食欲の減退や元気の喪失などの症状が出ます。また嘔吐や下痢を併発することもあり、特に下痢は真っ黒な便がでることが特徴です。また黄疸が出たり、お腹が膨らんでくることも少なくありません。肝細胞が受けたダメージによっては慢性肝炎へ移行する場合もあるのです。

2.慢性肝炎の症状

一方、慢性肝炎は、長期間にわたって肝臓の炎症が持続し、適切な治療を行わないと肝硬変や肝性脳症に悪化することもあります。症状は急性肝炎とあまり変わりませんが、肝機能が落ちることによって血液の凝固作用も低下し、血が止まらなくなったり、出血しやすくなります。肝炎の症状が放置されると最悪の場合、中枢神経に障害を及ぼし肝性脳症を発症してしまいかねないので注意が必要です。

他の犬や人にうつる?

上記に該当しない犬伝染性肝炎の場合、他の犬にうつる可能性があります。感染犬の唾液や糞便を舐めたりすることでウイルスが体内へ侵入し、長期にわたって腎臓に留まって様々な症状を発生させます。またウイルスが肝臓に侵入すると急性肝炎を引き起こす恐れがあります。

人間も例外ではありません。犬伝染性肝炎は人にうつりませんが、犬猫の糞便などから経口感染し、インフルエンザに似た症状が現れて肝炎症状を示します。ちなみに人間の場合の発症率は50%とされており、リケッチア感染症と呼ばれています。

犬が肝炎になる原因とは?

犬 肝炎

犬が肝炎にかかる原因は一つだけではなく、複数の事柄が考えられます。代表的な原因を解説していきましょう。

1.ウイルス性によるもの

犬アデノウイルス1型に感染することによって起こり、犬伝染性肝炎と呼ばれます。1歳未満の子犬が感染すると致死率は非常に高くなります。

ワクチンの接種によって予防できますが、未接種の場合は口や鼻からウイルスが侵入し、血管の中で増殖します。血流に乗って肝臓や腎臓、骨髄などへ運ばれてさらに増殖し、様々な症状を引き起こすのです。感染した全ての犬が発症するわけではなく、無症状の場合もあります。

2.毒性物質による中毒

肝臓に対して有害な物質を肝毒性物質と呼びますが、これらが肝炎の原因となる場合があります。具体的には以下のような物質を指します。

・農薬、殺虫剤、洗剤などに含まれる化合物
・アロマオイル、ハーブ系サプリメント
・マッシュルームやベニテングダケなどの菌類
・キシリトール

特にキシリトールは歯に良いというイメージがあるため、勘違いして与えてしまいそうですが、NGですので注意してください。

3.遺伝的要因によるもの

遺伝による原因も考えられるところです。特に銅の蓄積による慢性肝炎は、血縁関係にある犬が発症しやすいとされています。 本来の肝臓は銅を排出する機能があるのですが、その機能が弱くなるために肝炎が起こってしまうパターンですね。特に知られているのがベドリントン・テリアで、約25%が銅代謝障害を患っているとされています。

かかりやすい犬種や年齢

全ての年齢にわたって肝炎が発症するリスクはあります。また以下の犬種が慢性肝炎にかかりやすいとされています。

・アメリカン・コッカー・スパニエル
・ドーベルマン
・ラブラドール・レトリバー

また銅代謝障害に伴う慢性肝炎が起こりやすいのは、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアやダルメシアンなどが挙げられます。

犬の肝炎の治療法とは?

犬 肝炎

肝炎を発症する原因によって治療法は異なってきますが、ウイルス感染が疑われる場合は抗生物質の投与、強肝剤の服用などが行われます。また下痢や脱水を引き起こしている時は輸液補給や下痢止め剤の服用も有効です。

慢性肝炎の場合は免疫異常が見られることもあるため、ステロイドや免疫抑制剤の投与が行われることもあります。食餌療法なども合わせた内科療法が一般的だと言えるでしょう。

肝炎が重篤となって解毒できなくなり、肝性脳症を発症してしまった場合は、毒性物質を減らすための集中治療が必要となります。

治療にかかる費用

急性肝炎を発症した場合の治療例を引用します。治療期間は1週間を目安としますね。

通院1回あたりの費用は1万円前後(各種検査、点滴、抗生剤などの内用薬を含む)とすると、4回通院するとして、4万円程度の治療費がかかる計算となります。しかし慢性肝炎や他の病気を併発している場合は、治療費は高くなります。

犬の肝炎の予防法はある?

犬 肝炎

肝炎を発症した場合、早期の発見と治療が重要となります。そのために定期的に動物病院等で血液検査などを含めた検査を受診しましょう。またウイルス性肝炎を予防するためにも各種ワクチンは必ず接種しておきたいものです。

再発する可能性

完治したといっても再発する可能性はゼロではありません。再発を防止するためには、やはり普段から愛犬の健康状態をチェックし、定期的な検診が必要となります。「食欲や元気がない」「黒色の下痢が続く」といった場合は、肝炎を疑うべきでしょう。

愛犬の肝炎との向き合い方

犬 肝炎

犬の肝炎は手術で治る病気ではありませんし、慢性肝炎ともなれば長期にわたって治療が必要となる場合もあります。ましてや発症の原因が複数あるため、様々な検査を受けねばなりません。そういう意味ではややこしい病気と言えるかもしれません。しかし、病気の予防や再発防止のためにも、日頃から愛犬の状態を見守り観察し、健康に留意してあげることが大切と言えます。

◎監修者プロフィール
加藤みゆき 獣医師

加藤 みゆき/獣医師

日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。

  • 更新日:

    2020.08.15

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