線虫類に属する回虫が犬の消化管内に寄生する病気です。犬回虫や犬小回虫、猫回虫など多くの種類の回虫が存在しますが、日本の犬に寄生する主な回虫は犬回虫です。
犬は成長するにつれて回虫に対する抵抗性がついてくるので、成犬では感染しても無症状のことが多くなります。経口感染した回虫は小腸から肝臓、心臓、肺、気管を経て再び小腸へ到達し成虫になります。寄生数が多い場合には便の中に回虫が出てきたり、回虫を嘔吐したり、下痢や食欲不振、腹部膨満、体重減少などの症状が現れます。
子犬では、回虫が消化管を通過することによる吐き気、下痢が主症状です。
便と共に排出された回虫の成熟卵が感染源となり、他の犬や猫、人にうつることがあります。また、回虫の幼虫を体内に持つネズミを捕食することでも感染します。
犬回虫の幼虫は人の体内で成虫へ成熟することはできないため、人に感染した場合には幼虫の状態で肺や肝臓、眼球、神経などに寄生して様々な症状を引き起こします。
犬の回虫症には、次のような感染経路があります。
回虫卵が含まれた便や、回虫症が寄生しているネズミなどの小動物を食べてしまうことで感染します。
母犬が回虫症にかかっている場合に、母犬の胎盤や母乳を介して子犬に感染します。垂直感染とも言います。
回虫症にかかりやすい特定の犬種はありませんが、子犬や免疫力が低下している高齢犬、妊娠中のメス犬は感染しやすい傾向があります。
犬の回虫症では、駆虫薬の投与で回虫を駆除する治療が行われます。駆虫薬の種類は錠剤や粉剤、シロップ剤などの内服薬や、首の後ろに液体を垂らすタイプの滴下剤などがあります。子犬の場合、回虫が寄生していることを前提として駆虫を行った方がよいとされています。
犬の体内を移行中の虫には薬が効かず一度の治療では駆虫されないこともあるので、獣医師の指示どおりに検査を受け、駆虫薬を投与することが大切です。
診察や糞便検査、駆虫薬など、一回の治療に1,000~3,000円くらいかかります。先述したように、検査は複数回行われることがあります。胃腸症状や脱水症状の緩和や栄養補給などの対症療法が行われた場合、その分の費用がかかります。
散歩では地面に落ちている糞便を舐めさせたり、食べさせないように気を付けましょう。感染した犬の排泄物はすぐに処理し、お尻の周りに便が付いていたらきれいにしたり、便を踏んだ足で周りを歩かせないようにしましょう。衛生的に保つことが、再感染や同居する犬・人への感染を防ぐことに繋がります。
定期的に糞便検査を受け、必要があれば駆虫薬を投与したり、人が犬を触った後には石鹸を使って手を洗いましょう。
犬が生活する環境中に感染可能な虫卵が存在すると、再感染することがあります。便は適切に処理しましょう。
犬の回虫症は珍しい病気ではありませんが、人にも感染する可能性のある感染症です。散歩のときや感染犬と遭遇したときに感染するリスクがあるので、散歩ではリードを短く持って拾い食いをしないようコントロールし、感染の疑いのある犬との接触は避けましょう。犬が生活する環境を衛生的に保つことも大切です。日頃から犬の様子をよく観察し、異常があれば早めに動物病院を受診しましょう。