
タトラシェパードドッグの原産地は、東欧の国ポーランドです。タトラ山地のポダレという地域に由来し、ポーランド・マウンテン・シープドッグやオフチャレク・ポダレンスキーとも呼ばれています。
タトラシェパードドッグは何千年もの間、ポーランドの山地で暮らし、働いていました。その正確な起源は不明ですが、一説によると、この犬はマスチフ種に由来し、クヴァス、グレートピレネー、マレンマ牧羊犬などの他の牧羊犬たちと同じ種類に属しているとされています。
牧羊犬といっても護警犬の性格が強く、農場へ侵入してくる人間を警戒したり、害獣から家畜を守ることが主な仕事でした。 現地の人々によって大事にされてきたため、大きく頭数を減らすことなく現在に至っています。
スタンダードとして公認しているFCI(国際畜犬連盟)によれば、タトラシェパードドッグは「Herder and watchdog(牧畜の見張り犬)」とあり、羊たちを護衛するガードドッグだということが分かります。とはいえ現在は愛玩犬としても活躍していますから、人慣れしやすくて温和な性格も伺い知れます。
タトラシェパードドッグの表情を見ると、いかにも番犬のような厳めしい印象はありません。それどころか柔和さや優しさすら感じられるでしょう。自分で考えて行動できる作業犬だったため、多少は独立心があると言えますが、家族との強い絆を形成し、愛する家族を守れる犬です。
本質的には従順で素直な面が強く、指示もよく聞き分けます。また攻撃的になることはありませんが、家族を守る本能が強いゆえに警戒心から吠えることもありますね。
タトラシェパードドッグは牧羊護警犬として作出されたため、独立した性質と強い意志を持っています。人間が多くを指導することなく働く性質のため、本来の作業をしている時は良いのですが、人間中心の生活環境の中にいれば問題になる可能性があります。
そのため子犬の頃からの社会化と、トレーニングやしつけを進めていく必要があります。また犬の生涯を通じて、しっかりと一貫したトレーニングを維持することが大切です。タトラシェパードドッグ特有の吠え癖の矯正や、引っ張り癖が身に付かないためにも、しっかりと飼い主さんがリーダーシップを取ることです。
次にタトラシェパードドッグの体重や寿命など、健康面について見ていきましょう。適切な運動量も解説していきますね。
タトラシェパードドッグのオスの体高は65~70cm程度、メスが60~65cm程度となっています。体重は個体差がありますが、40~65kgほどになる大型犬です。四肢はたくましく筋肉も発達していますが、やはり太り過ぎは禁物。摂取カロリーと運動量のバランスを見ながら体重管理をしていくようにしましょう。
牧羊のために作出された犬種ですから、持久力とスタミナに優れています。自由に走り回れるフェンスで囲まれた庭があればより最適ですね。体が大きいため、相応の住環境でなければ適しません。またマンションなどの集合住宅で暮らすこも苦手とします。 毎日2~3度の散歩は欠かせませんし、1回の散歩につき40分程度は必要となるでしょう。
タトラシェパードドッグの平均寿命は10~12歳程度とされていて、他の大型犬の平均寿命と大差はありません。タトラシェパードドッグも例に漏れず、大きな体に見合わず内臓が小さいために老化が早くなる傾向があります。あくまで平均寿命ですから、暮らす環境によって長生きも十分可能です。ごはんの質や量、運動量などのバランスをきちんと取ることが大事ですね。
山岳地帯で暮らしてきたタトラシェパードドッグたちは、寒くて厳しい気候から身を守るために、厚い被毛を身にまとっています。真っ白なダブルコートを持っており、オーバーコートには少しのウェーブが掛かっていますね。厚い被毛のおかげで冬は寒さ知らずですが、暑さには弱い犬種のため、気温が高くなる夏場の散歩は、早朝や夕刻の時間を選んだ方が良いでしょう。
他の多くの山岳犬のように、このタトラシェパードドッグは春の終わりにアンダーコートが盛大に抜けるため、その時期には入念なブラッシングをする必要があります。原産地では「セルフクレンジング」と言って、シャンプー要らずだとされていますが、日本の場合は高温多湿になります。住んでいる地域の気候に合わせて、1ヶ月に1度のペースでシャンプーした方がいいかも知れませんね。被毛は比較的長めですが、ほとんど伸びないためカットは不要です。
穏やかで優しげ、そして口角が上がった顔つきは「愛され度」が満点!タトラシェパードドッグは誰からも好かれる犬種と言えます。原産国のポーランドだけではなく、今やヨーロッパでも人気の犬種です。
明石 則実/動物ライター
フリーライターとして動物関連や歴史系記事の執筆を多数おこなう。柴犬と暮らす傍ら、趣味の旅行や城めぐりで愛犬と駆け回る週末。
愛犬家の皆さんにとって、お悩みを解決したり、有益な情報を発信することを心掛けています。