直接野菜を食べることは推奨されるに至っていませんが、犬にも野菜の栄養素は必要です。今回は非常時における野菜の摂り方について考えてみたいと思います。ドッグフードがない状況でも、最大限に野菜の栄養を摂れるよう、工夫できる方法を探してみました。
野菜に対する消化酵素が少ないことと、ビタミンCを体内で生成できること、そしてタンパク質と脂質から糖を作り出すことなどもできる犬は、人間や草食動物とは違い、それほど多くの野菜や穀物は必要としていません。では犬にとって野菜とはどのような存在なのでしょうか?
肉(筋肉)から得られる栄養素は、主にタンパク質と脂質です。そのほかビタミンやミネラルも摂取しています。一方で野菜から摂取することができるのは、主に食物繊維と水分になります。食物繊維は腸内環境を整え、水分は水を飲むことが苦手な子の水分補給や、夏場の脱水防止に役立ちます。
野菜の消化が苦手な犬でも栄養を吸収できる食べ方は「消化酵素と一緒に摂ること」です。消化酵素がたっぷり詰まった草食動物の胃を食べることで、中に残されて発酵した植物とともに栄養を摂りこみます。消化酵素と一緒ならビタミンやミネラルも吸収できます。
十分に発酵し分解された場合、犬には禁忌とされている玉ねぎも問題が起きないと言われています。実際に犬用の発酵野菜ふりかけで玉ねぎが入ったものがあったのでメーカーさんに問い合わせたところ、そのような回答がありました。実際にうちのコにも与えましたが、問題はありませんでした。
消化酵素により発酵・分解された野菜は、犬にとって低カロリーで栄養を吸収できる貴重な食物になります。生や加熱した野菜よりも健康効果への期待は高まります。
専門の知識がない私のような一般の飼い主が与えられる野菜は限られています。絶対に与えてはならない玉ねぎやユリ科の野菜などは、たとえ発酵させてみるとしても危険です。無理のない範囲で安全な野菜を食べさせてあげたいですね。
同じ野菜も、調理方法やカットの仕方で栄養素の吸収率が変わるのをご存知でしょうか?せっかく与えるなら、最大限に栄養素を引き出したいですよね。そんな調理法、カット法についてご紹介します。
私達が愛犬に与える機会が多いニンジンやブロッコリーなどの野菜には、「生長点」という場所があります。生長点は文字通り野菜が生長しようと活発に細胞分裂を繰り返す栄養豊富な場所です。
ニンジンでは、葉が生えている根本部分で、ブロッコリーはツボミのある房の部分が生長点になります。さらにニンジンは皮にも栄養が詰まっていますし、ブロッコリーは茎の芯の部分をスライスすると食物繊維がたくさん摂れます。
加熱はレンジか蒸すのがおすすめです。ブロッコリーはカットして3~5分ほど放置してから加熱すると、ガン抑制効果が高まると言われています。
ちなみにトマトも皮ごと与える方が効果的です。
次はカット方法に注目してみましょう。
ピーマンやパプリカは、加熱するなら縦切りがおすすめです。栄養素が流れ出るのを防ぎます。生で与えるなら口当たりが良くなる輪切りがベターです。ただし輪切りは栄養がなくなりやすくなるので、切ったらすぐに与えるようにしましょう。
ここからは最もおすすめな食べ方についてのご紹介です。ニンジン、キュウリ、キャベツは、すりおろすと酵素が3倍に!抗酸化作用が高まることが科学的に証明されているそうです。生長点をすりおろしたニンジンは特に栄養満点な野菜となります。
すりおろすと、おろし器によっては水分が出てしまいます。そこで今回は竹製の「鬼おろし」で、ニンジンとキュウリをおろしてみました。鬼おろしを使うと水分が出ず、サラッとした状態でおろすことができます。
私は北国育ちなのですが、子供の頃、雪遊びをして喉が乾くと周りの新雪を食べていました。このニンジンとキュウリを食べた感触はそれによく似ていて、口に入れるとシユワッと水分が広がりながら溶けるような食感です。
このすりおろしたニンジンやキュウリをスープなどに入れたり、おやつのトッピングにすると、手軽に抗酸化作用のある野菜を摂ることができます。すりおろすことで消化も良くなるのが嬉しいところです。私は小さく切ったトマトとパプリカも加えて、馬のミンチと混ぜてスープにしてみました。
少し目先を変えて、すりおろしリンゴも美味しくて栄養のあるおやつになりますよ。
野菜は工夫次第で栄養を最大限に引き出すことができます。犬の消化能力を考えると多くは与えられませんが、食欲がない時やフードを与えられない状況の時などに、一番効果的な与え方で少しでも栄養補給してあげられると良いですね。
さの さえこ/ドッグライター
子供の頃はアレルギーで飼えなかった犬を、大人になって初めて迎えることができました。しかし里子で迎えた初めての愛犬は、外耳炎、歯肉炎、膿皮症、膝蓋骨脱臼を持っていました。
この子をきれいな体にするにはどうしたら良いか。そんな気持ちから得た経験を、「犬の食」を通してお伝えできればと思っています。
「手づくりごはん|パートナーに優しいレシピ」記事一覧