腎臓病と下痢は原因も症状も全く異なるものです。そのため注意すべき点も異なります。おからについてお話しする前に、それぞれがどのような点に気をつけるべきかを確認しておきましょう。
腎臓の機能として老廃物の排出が一番に挙げられますが、中でも余分な塩分の排出、尿素のろ過、血中リン濃度の調整を行うという大切や役割を持ちます。
そのため、腎臓に負担を掛けないようにする以下のような食生活が必要となります。
食物アレルギーや感染症など、原因がはっきりとした下痢の場合は動物病院での診察と治療が必要となりますが、食べ過ぎや夏バテ、腐った食物などによる一時的な下痢の場合は、水分補給の他に、絶食や以下のような食べ方をすることで改善することも可能です。
私が普段食べているおからパウダーの栄養成分表示(100gあたり)は以下のとおりです。
豆腐を作った時に出る搾り汁が豆乳、そして絞りカスがおからになります。しかしカスとはいえ栄養は豊富です。タンパク質、脂質、炭水化物が主要成分となります。
おからは大豆製品です。ゆでた枝豆は野菜に分類されますが、おからの原料となる大豆は乾燥させた豆であり、穀物に分類されます。しかし同じ穀物の小麦や米とは違い、大豆には以下のような特長があります。
小麦や米に含まれるグルテンが、おからには一切含まれていません。そのため、おからはグルテンアレルギーの犬にも与えることができます。
小麦の炭水化物のほとんどは糖質です。それに対しておからは8割以上が食物繊維です。犬はタンパク質と脂質から糖質を作り出すことができるため、余分な糖質は脂肪になります。逆に体内で作り出せない食物繊維の方が、犬には必要となります。
動物性脂肪が飽和脂肪酸を多く含む一方、おからには不飽和脂肪酸が多く含まれます。
飽和脂肪酸はエネルギー源として一番に使われる脂肪ですが、摂り過ぎた分は脂肪として蓄えられます。不飽和脂肪酸は物質的に不安定なため体内に蓄積されることはほとんどなく、細胞の材料として使われます。また、不飽和脂肪酸は体内で作り出すことができないため、食物から摂り入れる必要のある「必須脂肪酸」が多いことも特徴の1つです。
おからだけを食べて健康を維持するのは、本来肉食傾向の強い犬には難しいことです。しかし穀物を消化できる遺伝子を持ち始めたことにより、栄養を吸収できるようになってきていることも事実です。
では、おからにはどのような健康効果が期待できるのでしょうか。
タンパク質は犬の主要栄養素のため、仮に制限はあっても摂取する必要があります。肉類からのタンパク質摂取を一部おからに変更することは、リンや飽和脂肪酸の摂取を同時に抑える効果が期待できます。腎臓への負担とともに太り過ぎの対策も必要な犬であれば、低糖で不飽和脂肪酸が多く含まれるおからは体重管理にも適している食材となります。
おからは脂質が少なく食物繊維が豊富に含まれる食材のため、消化機能に効率的に働いてくれることが期待できます。「一過性の下痢であればおからで治る」と話している獣医さんもいることから、薬がない時に試してみたい食材ですね。
可能な限りシンプルな材料で食べられるおからのおやつのご紹介です。愛犬の体に負担のかからないものをご紹介したいと思います。
脂質ゼロ、リンもほとんど含まれていない卵白は、卵黄に比べてタンパク質も少なく与えやすい食材です。
フライパンに専用ホイルを敷いて焼くと10分ほどでできますが、サクッとせずにカレーのナンのような仕上がりになりました。
※写真の向かって右側がフライパン、左側がオーブンで焼いたものです。
何も混ぜずにおからだけを食べさせたいということであれば、焼いた肉などをお皿に乗せて香り付けした後で、水に溶いたおからパウダーをそのお皿に入れるだけでも口にしてくれることがあります。ほんの少しだけ肉汁を残してあげるとさらに美味しそうに食べてくれます。
今回はおからの健康効果についてお話ししましたが、おからが腎臓病や下痢の薬になるわけではありません。おやつ選びに迷った時や突然下痢をしてしまった時などに体に優しい食べ物だと考えていただきたいと思います。
しっかりとした健康管理は獣医さんに頼らざるを得ないのが実状だと思いますが、おからの効果が少しでも役に立つ情報になれば嬉しいです。
さの さえこ/ドッグライター
子供の頃はアレルギーで飼えなかった犬を、大人になって初めて迎えることができました。しかし里子で迎えた初めての愛犬は、外耳炎、歯肉炎、膿皮症、膝蓋骨脱臼を持っていました。
この子をきれいな体にするにはどうしたら良いか。そんな気持ちから得た経験を、「犬の食」を通してお伝えできればと思っています。
「手づくりごはん|パートナーに優しいレシピ」記事一覧