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犬を迎える

2020.08.14

犬の生態販売をとりまく現状を考える

「8週齢規制」の実現で変わること。犬の生体販売にまつわる法規制

現在、日本では、商業目的で犬猫の販売などをできるのは、7週齢を経過してからと定められています。しかし、2019年6月の動物愛護管理法改正により、生体販売の数値規制が強化され、8週齢規制が施工されることになっています。この記事では、8週齢規制の施行により変わることや、欧米諸国における法規制についてご紹介します。

Author :新井 絵美子/動物ライター

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日本の小売店における実態と動物愛護法改正

犬がペットショップのショーケースで販売されている様子

現在、日本において販売目的での犬猫の引き渡しや、犬猫の販売および展示ができるのは、7週齢(49日)を経過してからとなっています。しかし、生体販売の数値規制が強化され、8週齢規制が施行されることになっています。

2021年6月までに8週齢規制が施行

2019年6月に動物愛護管理法が改正され、8週齢(56日)に満たない犬猫の販売などを禁止する8週齢規制が成立しました。そして2021年6月までに施行されることになっています。(※1)

とはいえ、実は2012年の改正時にすでに8週齢規制は規定されていました。しかし、附則で本則の「56日」を2016年8月31日までは45日に、2016年9月1日から別に法律で定める日までは49日に読み替える経過措置が取られていたことから、7週齢での販売が可能となっていました。2019年の改正で附則は削除されたので、ついに8週齢規制が施行されます。

天然記念物に指定されている日本犬は対象外

天然記念物に指定されている日本犬6種(北海道犬、秋田犬、柴犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬)は、8週齢規制の対象外で、今まで通り7週齢を経過していれば販売などができます。これは日本犬保存会の会長の岸信夫衆院議員と、秋田犬保存会の会長の遠藤敬衆院議員が、「日本犬は親離れが早く独立心が強いので、早期に引き離しが必要」と主張して強く8週齢規制に反対したことが主な理由です。

天然記念物に指定された日本犬だけが例外になることを疑問視し、利権が絡んでいるのではないか?という見方も一部では噂されています。

8週齢規制の施行による変化とは

8週齢規制が施行されると、以下のことが変わっていくと考えられています。

成長後に問題行動を起こしにくくなる

子犬は兄弟犬とじゃれて遊んだり、母犬のお乳を飲んだりするときに、これぐらい噛むと叱られる、痛い思いをするということを学び、手加減することを覚えていきます。しかし、早い段階に親や兄弟から引き離してしまうと、それらを学ぶ機会がないまま成長してしまうので、噛み癖などの問題行動を起こす恐れがあると指摘されています。

問題行動を起こす犬を育てきれないとして飼育を放棄し、最悪の場合は殺処分に至ることも少なくありません。そのため、少なくとも8週齢までは親や兄弟と過ごすことが重要だとされています。

社会化不足が防げる

犬は3~13週齢がさまざまなことに対して適応しやすい社会化期とされ、子犬は親や兄弟と触れ合う中で犬同士のコミュニケーションの仕方を覚えて社会性を身につけていきます。

7週齢で親や兄弟から引き離すと十分な社会化が行われず、他の犬や環境に順応できない犬も一定数いると言われています。そのため、7週齢ではなく8週齢が望ましいとして数値規制が変更になりました。

病気にかかりにくい体を作る

8週齢規制には、子犬の免疫力を高めてから外の世界に出すことで、感染症にかかるリスクを減らすという目的もあります。体が弱く病気にかかりやすと面倒をみきれない、医療費が支払えないなどの理由から飼育放棄の原因になりかねません。このように8週齢規制にすることには、殺処分から救うことにもつながっています。

欧米諸国における生体販売にまつわる法規制

8週齢未満の仔犬たちが母犬と一緒にいる様子

欧米諸国では、生体販売の数値規制はどのようになっているのか、ペット先進国のイギリス、ドイツ、オーストラリア、アメリカの法規制についてご紹介します。

イギリス

イギリスでは、生後6ヶ月未満の子犬や子猫をペットショップで販売することは禁止されています。そのため、生後6ヶ月未満の子犬を迎えたい場合は、認定されたブリーダーもしくは動物保護施設から譲り受けるかたちになります。日本の8週齢規制よりもはるかに厳しく、大きな違いが見られます。

ドイツ

ドイツでは、8週齢未満の子犬を母犬から引き離してはいけないと定められています。8週齢規制は日本と同じですが、ドイツはブリーディングに関する規制も厳しく、繁殖施設の条件、繁殖に使用できる成犬の数、犬の扱い方などが細かく規定されています。ドイツと比較すると、日本は大きな遅れをとっていることがわかります。

オーストラリア

ニューサウスウェールズ州やヴィクトリア州も、生後8週間を経過していない子犬や子猫の販売は禁止されています。ヴィクトリア州では、2018年から商業目的とした犬猫をペットショップで販売することが禁止されました。現在、ペットショップで販売されているのは保護犬・保護猫で、里親との出会いの場になっています。

アメリカ

アメリカでも一部の州を除いて、すでに8週齢規制は導入されており、商業目的とした8週齢に満たない犬猫の輸送、および仲介業者への引き渡しが禁止されています。2019年1月からはカリフォルニア州も、ペットショップで営利目的とした犬猫の販売が禁止され、販売できるのは動物保護団体が保護した犬猫となっています。

8週齢規制は動物福祉向上につながる大きな一歩

8週齢ほどの子犬と母犬が一緒にいる様子

8週齢規制の施行により独特の慣習を持つペット業界は変わらざるを得なくなり、動物福祉の向上につながる大きな一歩になりました。

とはいえ、欧米諸国では8週齢規制はもはや常識で、悪質なブリーダーによって動物が犠牲にならないように、営利目的の生体販売に関する規制までもがすでにされています。日本のペットの生体販売に関しては、段階的に見直すべきことがまだまだあると言えるかもしれませんね。

出典
◎ライタープロフィール
新井 絵美子 動物ライター

新井 絵美子/動物ライター

2017年よりフリーランスライターとして、犬や動物関連の記事を中心に執筆活動をおこなう。
過去に、マルチーズと一緒に暮らしていた経験をもとに、犬との生活の魅力や育て方のコツなどを、わかりやすくお伝えします。

  • 公開日:

    2020.07.25

  • 更新日:

    2020.08.14

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