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住まい / 生活

2020.07.28

東京都の「殺処分ゼロ」の実態。「2020年に向けた実行プラン」の結果は?

東京都は、2016年に都政の政策展開を示した「2020年に向けた実行プラン」を策定し、動物の殺処分ゼロの目標を掲げてさまざまな取り組みをしてきました。果たして目標は達成できたのでしょうか?東京都における殺処分の状況や、殺処分ゼロに向けて行った取り組みなどをご紹介します。

Author :新井 絵美子/動物ライター

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東京都における犬猫の殺処分の状況

殺処分ゼロ

はじめに、東京都における犬猫の殺処分の状況を見ていきましょう。

殺処分数

東京都における2018年度の犬猫の殺処分数は、犬も猫もゼロです。(※1)

2016年に東京都は、2020年までの4年にかけて、都政の課題をどのようにまとめて進めていくのか、その具体的な政策展開を示す「2020年に向けた実行プラン」を策定しました。その実施計画の中の1つとして、「動物の殺処分ゼロ」も掲げており、殺処分ゼロに向けた取り組みが行われてきました。猫においては、殺処分数ゼロになったのは、2018年度が初めてです。

殺処分数の推移

2015年度から2018年にかけての東京都の殺処分数は、以下のように推移しています。(※1)

・2015年:犬10頭 / 猫193匹
・2016年:犬0頭 / 猫94匹
・2017年:犬0頭 / 猫16匹
・2018年:犬0頭 / 猫0匹

3年連続で犬の殺処分数がゼロなのに加え、猫の殺処分数が大幅に減少し、殺処分ゼロに導いたのも驚くべき成果です。

東京都の「殺処分ゼロ」はどう実現した?

殺処分ゼロ

それでは、東京都はどのようにして殺処分ゼロを実現したのでしょうか?その主な理由をご紹介します。

適正飼養・終生飼養の啓発

そもそも、動物愛護センターへ持ち込まれる犬猫がいなければ、殺処分は起きません。そのため、引き取り数の減少に向けて、主に以下のような適正飼養、および終生飼養の取り組みをしてきました。

・適正飼養についての講習会を開催
・飼い主の責務についての啓発活動
・犬のしつけに関するテキストを作成・配布
・猫の室内飼い・避妊去勢手術・マイクロチップの装着の普及啓発活動 など

譲渡の推進

引き取り数減少に向けての活動と共に、以下のような譲渡推進の取り組みも進めてきました。

・民間の動物保護団体と連携し譲渡を促進
・譲渡のPRイベントを開催
・譲渡会などの情報を広く発信
・民間ボランティアと協力し、離乳前の子猫を譲渡できる段階まで育成したのち譲渡 など

東京都の「殺処分ゼロ」|今後の課題とは?

殺処分ゼロ

このように4年の道のりをかけて、殺処分ゼロを実現した東京都ですが、その裏にはまだ課題が残っています。

民間動物保護団体の飼育崩壊対策

行政と連携して活動をしている民間の動物保護団体は、行政に収容されている犬猫を引き出し、里親に譲渡するまでお世話をしています。殺処分ゼロになったのは、そのおかげによるところも大きいですが、殺処分ゼロを達成しようとするあまり、動物保護団体が保護犬猫を抱え込み過ぎて、多頭飼育崩壊になることも考えられます。

そのため、このようなことを防ぎながら、譲渡を拡大させていく仕組みを構築する必要があります。

殺処分ゼロになっていないとの批判も

実は東京都の「殺処分ゼロを達成」には、批判の声もあがっています。というのも、殺処分ゼロの中には、病気の治療をしても回復が見込めない、攻撃性が強い性格という理由で譲渡不適切と判断した犬猫、収容後に死亡した犬猫は含まれていないからです。つまり、「健康状態に問題がない譲渡ができる犬猫」の殺処分がゼロだったということです。

実際は2018年度、犬猫合わせて146匹が譲渡不適切として殺処分されています。(※2)しかし、譲渡不適切とする判断の根拠となる基準やガイドラインが設けられていないことから、真相を確かめられないとして殺処分ゼロに対して疑問や批判の声があがっています。

また、治癒の見込みがないなどとして譲渡不適切と判断された犬猫たちには、生きる権利がないのかと問う声も見られます。 このようにさまざまな声があがっていることから、今後さらに譲渡不適切の判断基準を明瞭化する必要が迫られるでしょう。

殺処分ゼロには根本的な解決が必要

殺処分ゼロ

民間の動物保護団体と連携し、譲渡を推進することで東京都が掲げた「殺処分ゼロ」は達成できました。しかし、殺処分問題は行政への持ち込み数が減らなければ、根本的な解決にはなっていません。残された課題を解決しながら、適正飼養・終生飼養の普及啓発をさらに進めていく必要があると言えます。

【参考文献】
(※1)東京都 殺処分の状況
(※2)東京都福祉保健局 致死処分数の内訳

◎ライタープロフィール
新井 絵美子 動物ライター

新井 絵美子/動物ライター

2017年よりフリーランスライターとして、犬や動物関連の記事を中心に執筆活動をおこなう。
過去に、マルチーズと一緒に暮らしていた経験をもとに、犬との生活の魅力や育て方のコツなどを、わかりやすくお伝えします。

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