
リードは、飼い主と犬をつないでおくためのものではありません。リードを通じて飼い主の指示を犬に伝え、コントロールするという重要な役割もあります。犬に合った長さや素材のリードではない場合は、大切なその指示を伝えることが難しくなってしまいます。リードは、快適で安全な散歩を支える心臓部のひとつともいえるアイテム。豊富な種類があるリードですが、愛犬に合ったリードを選ぶことで、その役割を果たすことができると言えます。
カラダが大きくパワーがある大型犬との散歩は、飼い主の身体に大きな負担がかかります。リードが飼い主の手に食い込む、引きずられる、時にはバランスを崩して転倒するなど、上手にリードを使えないことで怪我をすることも。リードでのコントロールがしっかりできないと、犬の散歩中の事故を回避できなくなります。そのため、大型犬のリード選びは、慎重さと正しい知識が必要となります。
大型犬のリードは丈夫なことが第一条件。基本的には太いもの、幅広のものを選びます。犬の引っ張る力はとても強いので、リード部分だけでなくナスカンなど各部のパーツまで、犬のパワーに負けない丈夫なものを選ぶことが肝心です。
大型犬用のリードを選ぶときの目安として、ベルトタイプは幅が2.5cmのものがおすすめです。2cm幅では細すぎ、3cm幅の場合は女性の手には太すぎて力が入りにくくなってしまいます。ロープタイプの場合は、直径2cm程度の太さが丈夫で持ちやすいサイズです。また、持ち手部分に、クッション性をもたせてあったり、その部分だけ柔らかい素材が使用されているなど、持ちやすい工夫がされているタイプなら女性でも安心して使用することができます。
リードは大きく分けて3タイプ。それぞれに特徴がありますが、特に大型犬で使用する場合は、タイプによって向き不向きがあります。ここでは、それぞれのタイプとその特徴を説明します。
スタンダードリードとは、片側が飼い主用の持ち手、もう片側には犬の首輪やハーネスとつなぐための金具がついているもの。大型犬用に限らず、犬のリードとして基本的なタイプで、ショートタイプ、レギュラータイプなど長さや素材など豊富な種類が揃っています。大型犬用として販売されているリードの長さは120㎝~150㎝のものが主流ですが、あまり長すぎると犬の足に絡まってしまったり、引きが強い犬の場合は飼い主の腕に大きな荷重がかかるため80~100cm程度がおすすめです。
また、スタンダードタイプの中には持ち手がリードの上部だけでなく、首輪やハーネスをつなぐ下側にもうひとつ持ち手が備わったダブルタイプのものがあります。このタイプは、状況に合わせてリードを短く持つことができるため、手のひらにリードをグルグルと巻きつけずに済みます。特に大型犬の場合は、リードを短く持ちたい状況が多いためとても便利です。
最近、大型犬の飼主から注目されているリードが、ショルダーリードです。肩から斜めがけすることで、引きの強い犬や体重のある犬を腕だけではなく全身の力を使ってコントロールすることが可能です。また、両手がフリーになることもショルダーリードの魅力。肩だけではなく、腰に回して使用することもでき、また2頭引き用としても使用できるものもあります。さらに丈夫な素材を採用していることも、ショルダーリードの大きな特徴です。
ロングリードは、3mから30mとスタンダードリードに比べてとても長く、トレーニングリードとも呼ばれています。これは、散歩用のリードとして使用するものではなく、呼び戻しやモッテコイなど、屋外でしつけをするときや広い場所で走らせるとき海などで泳がせるときなどに使用します。
ただし、このロングリードは近くに人や犬がいるときには、巻きついたり絡まってしまうなどの危険性が高いため、使用が制限されている公園やドッグランが多くあります。あくまで呼び戻しといったトレーニングや海や湖などで泳がせるときなど何もない安全な場所で使用するものと考えましょう。
手元のスイッチで伸ばしたり縮めたりできるタイプのリードが伸縮リードです。リードを伸ばすことができるため、公園やドッグランなどで使用している飼い主も多くいますが、スイッチの破損などによってリードの伸び縮みができなくなるトラブルも多くあります。
また、大型犬用の伸縮リードはリード部分にワイヤーを採用していることが多く、伸ばした状態では歩行者や犬からとても見えにくいことも事実です。力の強い大型犬では、このワイヤー部分が切れることもあり大変危険です。犬をフリーにできるところが少ない日本では、とても便利に感じるリードですが、大型犬での使用はおすすめできません。
犬用リードの素材はナイロン、布、ロープ、革、ラバーの5つに分けられます。大型犬用には特に強度や耐久性が求められるため、それぞれの素材の特徴をおさえておきましょう。
カラフルでおしゃれなデザインが多いナイロンリードは、犬のサイズを問わず最もポピュラーなリードです。耐久性が高く劣化しにくい上、比較的軽量でカラフルな点が特徴です。静電気が発生しやすいというデメリットもありますが、最近ではナイロンテープの上に静電気防止素材を巻き付けたものやコットン素材と組み合わせたもの、ラバーコーティングしたものなどさまざまな工夫がされています。なお、力が強い大型犬用の場合は、購入時に耐荷重の確認と定期的にリードの状態をチェックすることが大切です。
布製のリードは、カフェリードやファッションリードと呼ばれることもあるデザイン性の高さが特徴です。色やデザインもさまざまで軽量で洗濯も可能です。手になじみやすくリードコントロールしやすい素材と言えますが耐久性にはやや劣ります。お散歩用はナイロンリード、お出かけ用は布製リードなどの使い分けをしている飼い主も多くいます。大型犬用として使用する場合は、リードの耐荷重の確認を忘れずに。
登山用ロープ、ヨット用ロープそしてパラシュート用ロープ(パラコード)と、最近ではロープ素材を使用したリードが大人気です。人気の秘密はその耐加重と耐久性にあります。また、自作できるところも大きな魅力。丈夫でカラフル、耐水性にも優れているロープ素材のリードは、大型犬が安心して使用できる素材と言えます。
ヨーロッパでは古くから愛用されているのが革製のリードです。高級感はもちろん使っていくうちに手に馴染むことが大きな魅力です。革が持つ適度な伸縮性がありリードコントロールがしやすく、耐久性にも優れた大型犬向きと言えます。ただし、水に弱いことがデメリットで、カビや経年劣化を防ぐため、使用後のお手入れが必須となります。
最近、大型犬の飼い主の間で話題となっているのが、ナイロンにラバーを編み込んだタイプやシリコンゴムをリードの一部に取り入れたリードです。ラバーを使用することで衝撃吸収力が高く、急にひっぱられた時などに対応可能なものです。摩擦熱によるやけどやショックを軽減してくれるという特徴があります。
ここでは、大型犬用に求められる要素を満たしたリードを5タイプ、ピックアップしました。ぜひ、リード選びの参考にしてください。
上部のハンドルに加え下方にもハンドルをつけた2ハンドルタイプのリード。ナイロン素材を二重にし耐久性をアップ、グリップの内側にはネオプレーンを採用し、手が痛くなりにくいことが特徴です。リードの両面に反射ステッチを使用、360度回転するナスカンでリードの絡まりを防止します。
登山やヨット用品に使用される頑丈な素材を採用し、リード本体にポリエチレンスプリングを装着した衝撃吸収タイプのリードです。グリップ内側にはネオプレーンを採用しています。犬と接続するカラビナは耐荷重270kg。
長さ76cmと短めのリードは、犬のコントロールがしやすく人混みでも安心して使用できます。反射素材を使用した11mmの太く頑丈なロープとスクリューゲートカラビナを採用、クッション性のある持ち手で引きの強い犬にも安心して使用できます。
長さ200cmと腰に巻いて使用できる長めのリードで、2ハンドルタイプです。引っ張りやショックに強いバンジージャンプ用のロープを使用。ハンドル内側にはネオプレンを採用し手が痛くなりにくいデザインです。
長さ90cmと訓練にも最適なサイズの2.5cmの太さに編みこまれた本革のリードです。持ち手には滑り止め用の編み組がしてあります。高級感ある丁寧な作りが魅力です。
リードは飼い主の指示を愛犬に伝え、お互いの絆を深めるライフラインです。特に大型犬の散歩では、適切なリードコントロールが飼い主に求められます。ご紹介したリードはどれも耐久性や機能性に優れたものばかりです。ぜひ、最適なリードを使用して周囲に迷惑をかけることなく安全・快適なお散歩を楽しんでください。
西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士、犬の東洋医学生活管理士2級
ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。