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2021.10.14

シェパードの種類をまとめました!

シェパードの種類を徹底解剖!ロシア・中央アジア原産の5犬種まとめ

世界には、名前に「シェパード」と付く犬種が数多く存在しています。3回にわたって各国のシェパードドッグたちを紹介する本企画、第1回では有名な5種を、第2回ではヨーロッパ原産の6種をまとめてご紹介しました。
さてこの最終回では、ロシア・中央アジア原産のシェパードドッグを5種類みていきましょう。

#ジャーマンシェパードドッグ

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

「シェパード」の語源って?

森の中で耳を立ててあたりをうかがうシェパード

犬の名前としての「シェパード」は、英語で羊飼いを意味する“shepherd”に由来します。日本では一般的に「シェパード」というとジャーマン・シェパード・ドッグのことを指し、警察犬や軍用犬を代表とする使役犬のイメージが強い名称ですが、「シェパードドッグ」とは本来牧羊犬の意味です。

牧羊は最も世界的に行なわれている犬の使役です。そのため「シェパード」と名の付く犬種は、FCI(国際畜犬連盟)に登録されているだけでも、350を越えると言われるほど普及している名称となっています。

名前に「シェパード」が付く犬が多いワケ

シェパード・ドッグは、ドイツにいたオールド・ジャーマン・シェパード・ドッグを基礎犬としてヨーロッパ各地に広がりました。

多種多様なシェパードドッグが存在する理由は、A:各地でその土地の気候や風土に合わせたさまざまな交配が行なわれて誕生した犬種と、B:その土地の土着の犬から発展したシェパードドッグの2タイプがあるためです。

ロシア・中央アジア原産のシェパード5種

ロシア・中央アジアにおいても例外ではありません。今回ご紹介するロシア・中央アジアの代表的なシェパードドッグ5種類は、以下の犬たちです。

  • ベラルーシ原産:イーストヨーロピアンシェパード
  • 中央アジア地域原産:セントラルアジアシェパードドッグ
  • コーカサス地域原産:コーカシアンシェパード
  • ウクライナ原産:サウスロシアンシェパードドッグ
  • トルコ原産:アナトリアンシェパードドッグ

【1】イーストヨーロピアンシェパード

水辺で吠えるイーストヨーロピアンシェパード

一見するとジャーマンシェパードと思える姿をしていますが、ワンサイズ大きく、がっちりとした身体のイーストヨーロピアンシェパード。牧羊犬や護畜犬、警察犬や軍用犬など幅広い使役で活躍する犬種です。

  • 原産国:ベラルーシ
  • 体重:48㎏前後
  • 体高:74㎝前後
  • 被毛:ブラック&タン、ブラック、ブリンドル

イーストヨーロピアンシェパードの歴史

原産国は、かつては白ロシアと呼ばれていたベラルーシ。ロシア、ウクライナ、ポーランド、リトアニアの各国と隣接し、現在は正式名ベラルーシ共和国となっている地域です。

イーストヨーロピアンシェパードは、1920年代にドイツから輸入されたジャーマンシェパードドッグを数十年をかけて改良し誕生。ベラルーシの気候や風土に合わせ、ローカルのさまざまな犬種を計画的に掛け合わせ、牧羊犬や護畜犬として生まれました。

また、軍用犬や警察犬としても高い能力を備え、第二次世界大戦のときには絶滅の危機を迎えましたが、冷戦が始まるとその高い能力のおかげで軍用犬としてKGBに採用されて繁殖が続き、絶滅を逃れたという歴史を持ちます。冷戦終結後はさまざまな使役犬として活躍し、家庭犬としても飼育されるようになりましたが、まだ世界的に普及が進んだ犬種とはなっていません。

イーストヨーロピアンシェパードの特徴

イーストヨーロピアンシェパードの身体の特徴をジャーマンシェパードと比べると、ひと回り大きくがっちりとしている印象です。また、背中がフラットで後肢は直線的なこと、サーベル型の垂れた尻尾、立ち耳は同じですが、マズルは長くて先のほうが細いなどの相違点があります。
厚いショート・コートの被毛の色は、ブラック・アンド・タン、ブラック、ブリンドルがあります。

イーストヨーロピアンシェパードの性格

ジャーマンシェパードと同様に飼い主に忠実で勇敢、クレバーな犬種です。しつけの飲み込みは早く学習能力に優れ、状況判断にも長けています。またパワー、運動能力ともに高レベルです。

一方、警戒心は強い犬種です。基本的には友好的なので家庭犬としても飼育できますが、しっかりとしたしつけと、毎日の十分な運動量確保(2時間程度)が重要となるため、初心者は避けた方が無難です。

また大型で身体能力に優れているので、逸走への注意も必要となります。番犬やドッグスポーツに向いていますが、股関節形成不全になりやすいので注意が必要です。

【2】セントラルアジアシェパードドッグ

草むらの上に立っているセントラルアジアシェパードドッグ

中央アジア地域原産の古代犬種のひとつとされているセントラルアジアシェパードドッグ。人や家畜のガードドッグとして活躍し、日本では数年に一度、国内登録される珍しい犬種です。

  • 原産国:中央アジア
  • 体重:40~79kg
  • 体高:60~78cm
  • 被毛:ホワイト、ブラック、グレー、ストロー(淡黄色)、ジンジャー(錆色)、グレー・ブラウン、ブリンドル(虎毛)、パイボールド(白地に黒などの班) など

セントラルアジアシェパードドッグの歴史

力の強さと警戒心の固さはトップクラスと言われるセントラルアジアシェパードドッグ

原産国の中央アジアとは、カスピ海東側のロシアと中国とアフガニスタンとイランに囲まれた5か国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)のことを指します。

中央アジア地域において、5000年前とも6000年前とも言われるほど昔から存在していた古代犬種です。チベット原産のチベタン・マスティフを先祖とする世界最古のマスティフ種のひとつでもあり、 アラバイという名前でも呼ばれています。

羊などの家畜をオオカミや泥棒から守るガードドッグとして長年活躍してきましたが、訓練やしつけができる人は希少で大変な賞賛されるほどしつけが困難な使役犬のため、家庭犬としては親しまれていませんでした。しかし、20世紀になるとようやく注目され、徐々に世界各地に広まり、熱心な愛好家によってショードッグやペットとしても飼育されています。

セントラルアジアシェパードドッグの特徴

身体の大きさはオスとメスの違いが明確ですが、超大型犬であることには変わりません。重厚な骨格構成と力強い筋肉を持ち、見た目通りに非常にパワフルです。

被毛はスムースコートとやや長めのショートコートの2タイプ。カラーはホワイト、ブラック、グレー、ストロー(淡黄色)、ジンジャー(錆色)、グレー・ブラウン、ブリンドル(虎毛)、パイボールド(白地に黒などの班)などの毛色があるとされています。

また、容姿として垂れ耳、ふさふさの垂れ尾、弛んで重厚感のあるアゴの皮膚が印象的です。特に、弛んだ厚い皮膚は、外敵の攻撃にも身体のダメージを最小化するための仕組みです。

そして特筆すべきは寿命です。短いと言われる超大型犬の寿命ですが、この犬種の平均寿命は12~15年と長寿で、一説には17年以上とも言われています。原産地域の厳しい気候や環境の中で培った適応力の高さに加え、古来から自然本来の姿のまま飼育され、無理な繁殖がなかったためか、遺伝的な疾患などが起こりにくいことがその要因とされます。

セントラルアジアシェパードドッグの性格

基本的な性格は穏やかで家族に対する愛情もとても深く、普段は安定しており、無駄吠えをする犬種ではないため、家庭犬として飼うことも可能です。

ただし、ガードドッグのため縄張り意識や防衛本能、独立心が強く、また非常に勇敢でパワフル、活力があるため、時には攻撃的になることがあります。そのため、一般家庭での飼育は簡単ではありません。しっかりとしたしつけと訓練が必須の犬種です。

【3】コーカシアンシェパード

舗装路の上に立ちこちらを向くコーカシアンシェパード

コーカサス地方原産の護畜犬であるコーカシアンシェパード。別名コーカシアンシープドッグ、コーカシアンオフチャルカとも呼ばれる巨大犬種です。

  • 原産国:コーカサス
  • 体重:~100kg超
  • 体高:メス62cm超 / オス65cm超
  • 被毛:グレー、グリズル、ブリンドル、ブロンズ など

コーカシアンシェパードの歴史

コーカサス地方とは、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス山脈とその周辺地域のことで、アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアなどの国にまたがる地域のことを指します。コーカシアンシェパードはその地域の犬種として少なくとも15世紀から存在していたと言われていますが、紀元以前からという説もあり、その生い立ちはまだハッキリと分かっていません。

チベタン・マスティフやオオカミを起源にする犬種で、家畜を外敵や盗難から守るために活用されてきました。身体がとても頑強で、家畜や家族に危機が迫ると果敢に戦ったため、人気を集めた犬種でした。また、アルメニアタイプ、ターキッシュタイプ、アストラカンタイプなど地域ごとの需要に応じてさまざまなタイプも作出されました。

しかし、その後、無計画な異種交配が頻繁に行われ、純血の犬が激減し、一時は絶滅も危惧されましたが、近年は犬種クラブが設立されるなど、種として保存が行なわれ、徐々に復活が進んでいます。外国にも知られるようになり、現在は実用犬としてだけでなくショードッグとしても注目されています。ただし、家庭犬としての数はまだ非常に少ないのが現状です。

コーカシアンシェパードの特徴

身体の特徴として、まずはサイズの大きさが挙げられます。オス・メスの差が大きい犬種です。地域ごとのタイプにも差があり、オスの場合で体高90cm/体重100kgという巨大な個体も存在するようです。

体つきは骨太、筋肉質でがっしりとしています。額に少しシワがある頭は大きく、マズルは短く太いですが、目は小さく、耳は垂れ耳。ふさふさの垂れ尾を持っています。

被毛のタイプは剛毛で毛量の多いロングコートと、さらりとした短毛のショートコートの2タイプ。どちらもダブルコートです。毛色はグレー、グリズル、ブリンドル、ブロンズなどの単色や混色、白いパッチ入りの場合もあります。

コーカシアンシェパードの性格

コーカシアンシェパードは非常に慎重で用心深く、守る時はオオカミやクマなどに対しても立ち向かうほど積極的で勇猛果敢な性格です。意志が強く、独立心と防衛本能が強いですが、普段は穏やかで安定していて、家族に対しては忠実でフレンドリーです。

ただし、大型犬ということもあり、飼う時はしっかりとした訓練やしつけが絶対条件。運動量はそれほど必要ありませんが、飼い主には経験と知識が求められ、軽い気持ちと安易な心構えで飼う犬種ではありません。

【4】サウスロシアンシェパードドッグ

2頭で座るおっとりとしたたたずまいのサウスロシアンシェパードドッグ

サウスロシアンシェパードドッグはウクライナ原産の護畜犬です。ウクライナシェパードドッグ、サウスロシアンオフチャルカ、オフチャルカデルシエメリディアナーレという別名もあります。

  • 原産国:ウクライナ
  • 体重:48~50kg
  • 体高:62~65cm
  • 被毛:ホワイトあるいは少量のブラックの混色

サウスロシアンシェパードドッグの歴史

1790年にウクライナで誕生した犬種で、羊を守る護畜犬として作出されました。ウクライナでは羊の放牧が盛んで、牧羊犬が活躍していましたが、オオカミに狙われてしまうことも多く、優秀な護畜犬を作り出すために、護畜犬として優秀なコモンドールや地元のサイトハウンドをはじめ、さまざまな犬種とのクロスブリードによってサウスロシアンシェパードドッグが誕生しました。

19世紀ごろに多く出没した家畜泥棒によって、その数は一時減りましたが、それを乗り越え、第二次世界大戦の時は軍用犬(伝令犬)として活躍。旧ソ連では一般の番犬としても普及しました。現在ではウクライナやロシアでは人気犬種ですが、他の地域にはあまり浸透しておらず、また使役犬ではなく家庭犬としての数も少ない犬種です。

サウスロシアンシェパードドッグの特徴

サウスロシアンシェパードドッグは、白くてもふもふ、毛むくじゃらという愛らしい容姿をしていますが、体つきそのものは骨太で筋骨隆々、がっちりとした大型犬です。各部は、大きな頭部、短めで太いマズルと強靭なアゴ、垂れ耳、ふさふさの垂れ尾、長く太い脚などが特徴です。

被毛は柔らかく長いむく毛で、やや粗いオーバーコートと分厚く密生するアンダーコートのダブルコート、色はホワイトあるいは少量のブラックの混色です。

サウスロシアンシェパードドッグの性格

性格は基本的には活発で、飼い主に忠実ですが、護畜犬らしく高い防衛本能を持ち、危険を感じるときわめて攻撃的になります。オオカミの群れを1~2頭で撃退したり、銃を持った家畜泥棒に勇猛果敢に戦いを挑んで退治するなど、逸話も多くあります。

そのため、正しく厳しい訓練を行うことがとても重要で、ドッグトレーナーに任せることも推奨されているほどです。訓練とコミュニケーションが取れるようになれば、優秀な番犬となります。しかし身体が大きく豊富な運動量が必要なので、家庭犬として飼うのはおすすめできません。

【5】アナトリアンシェパードドッグ

周囲を警戒しているアナトリアンシェパードドッグ

アナトリアンシェパードドッグはトルコ原産の護畜犬です。トルコ原産の護畜犬には類似犬種が存在し、それらの犬種認定については世界的に今でも混乱が続き、特にこの犬種はカンガールドッグと混同されがちです。

  • 原産国:トルコ
  • 体重:65kg前後
  • 体高:81cm前後
  • 被毛:基本色に淡黄褐色(マスクは黒)ほかにも、ぶち、ホワイト、まだら など

アナトリアンシェパードドッグの歴史

アナトリアンシェパードドッグのルーツとなる犬は、約6000年前から存在していた超古代犬種のジョパンコペギで、これがアクバシュ(トルコ西部)、カンガールドッグ(同中部)、カルスドッグ(同東部)に分化しました。

それらの犬種はおよそ2000年の歴史を持ちますが、アナトリアンシェパードドッグが犬種として確立したのは1900年代に入ってからです。トルコは東洋と西洋の接点という地理的特徴もあって、カンガールドッグをベースにさまざまな犬が自然交雑して生まれたと言われています。

近代では1967年に米国兵士によって2頭の仔犬が持ち帰られてブリーディングが行われました。これがキッカケとなってトルコ原産の犬種認定問題が起こり、現在でもそれは続いているのです。

アナトリアンシェパードドッグは、AKC(アメリカンケネルクラブ)ではカンガールドッグとは別犬種の扱いですが、FCI(国際畜犬連盟)では同一犬種となっています。ちなみにJKC(ジャパンケネルクラブ)では非公認ですが、日本にも愛好家は存在しています。

アナトリアンシェパードドッグの特徴

身体の大きさは体高81cm前後、体重65kg前後のきわめて大型の犬です。短めのマズル、長くて太い脚、そのわりに短めでフラットな背線、垂れ耳、ふさふさの垂れ尾、そして全体的に骨太で筋骨隆々の体つきなどが特徴としてあげられます。

被毛:被毛は厚いアンダーコートを持つダブルコートタイプで、毛の長さはショートコートとラフコートの2タイプがあり、色は基本色に淡黄褐色、マスクは黒ですが、ほかにぶち、ホワイト、まだらなども存在します。

やや多めの運動量が必要ですが、体重が重く、股関節形成不全症の懸念もあるため、激しい運動はあまりおすすめしません。

アナトリアンシェパードドッグの性格

性格の最大の特徴は、防衛本能が強く、特別なトレーニングをしなくても家畜や家族の番をして守るということが身についている点です。飼い主に忠実なのはもちろんのこと、知的で観察力、洞察力に優れ、勇敢です。しつけの飲み込みや状況判断力もよい方で、主人に危害を及ぼしそうにないと判断した人や犬とは仲良くすることもできます。

ただし、子供や猫などほかの動物といった予想外の行動を取る対象には強く警戒し、時には驚いて攻撃するので注意が必要です。飼う際にはパワフルな大型犬ということを念頭に、隙のないきちんとした訓練をしましょう。

ロシア・中央アジア原産のシェパードは超大型犬ばかり

雪山の上から周囲をうかがう白いシェパード

歴史的にも混乱の多い地域で誕生したロシア・中央アジア原産のシェパードは、牧畜犬としてよりも護衛犬として活躍してきた犬種が多くいます。また、マスティフを祖先犬としていることから、私たちがイメージするジャーマンシェパードとは比べ物にならない大型犬が多いことも特徴です。日本では、ほとんど見かけることのない希少犬種ばかりですが、それぞれの原産国では現在でも現役で活躍しています。

  • 公開日:

    2020.07.05

  • 更新日:

    2021.10.14

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ライター・専門家プロフィール
  • 西村 百合子
  • ホリスティックケアカウンセラー、愛玩動物救命士
  • ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。 現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。