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犬種図鑑

2020.07.20

どこが違う?アメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリアの特徴とは

アメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリア、街で出会うとどちらの犬種か見分けがつかないほど似ているこの2犬種。体格や顔つきがそっくりで、パッと見ただけでは全くわかりません。しかし、犬種誕生の歴史的背景を知ると、アメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリアの違いが見えてきます。この記事では、アメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリア、それぞれの特徴や性格についてご紹介します。

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

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アメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリア、誕生の歴史とは

アメリカン・スタッフォードシャー・テリア アメリカン・ピット・ブル・テリア

まず知っておきたいのが、アメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリアそれぞれの誕生の歴史です。どうやってこの犬種が誕生したかを知ることで、アメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリアの違いが見えてくるかもしれません。

闘犬が生んだ運命の分かれ目

アムスタッフ(AmStaff)の愛称でアメリカで人気があり、AKCに犬種として正式に登録されているアメリカン・スタッフォードシャー・テリア。かたや、世界最強の犬の名を持ち危険犬種としてみなされ各国で飼育を規制されている犬種アメリカン・ピット・ブル・テリア。AKCでは犬種として認められていません。そっくりな風貌ながら、全く違う扱いを受けているこの2犬種の違いを知るために、闘犬の歴史を紐解いてみましょう。

イギリスで生まれた闘犬種スタッフォードシャー・ブルテリア

アメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリアはどちらも同じ先祖を持つと言われています。18世紀ごろ、イギリスで盛んに行われていた闘犬の代表格はブルドッグでした。当時のブルドッグは、現在の穏やかな性質とは違いとても凶暴な性格であったとされています。

その頃のイギリスでは、犬より大きな雄牛やクマと犬を闘わせる「ブルバイティング」や「ベアバイティング」と呼ばれる見世物が流行していました。この時代に、ブルドッグよりさらに強い闘犬の作出が盛んに行われ、気の強さを持つイギリス原産のホワイトイングリッシュテリアやスムースフォックステリア、ブラック&タンテリアなどとブルドッグを基礎犬として作出された犬種がスタッフォードシャー・ブルテリアです。

このスタッフォードシャー・ブルテリアが、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、アメリカン・ピット・ブル・テリアの祖先犬なのです。しかし、強い闘犬種の作出はブリーダーにとってトップシークレットだったため、スタッフォードシャー・ブルテリア誕生に関する詳細はわかっていません。

アメリカに渡りさらに改良された闘犬種

闘犬としてアメリカに渡ったスタッフォードシャー・ブルテリアは、さらに大型の犬を好むアメリカ人によって、大きくまた強い闘犬として改良されたのです。そして誕生したのがアメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリアの祖先犬であるアメリカン・スタッフォードシャー・ブル・テリアです。

当初は、訓練性が高く、番犬としても家庭犬としても能力の高い犬種として評価されていました。大きな動物にも立ち向かえる勇敢さと強さから牧畜農家の番犬として一躍、人気犬種となったアメリカン・スタッフォードシャー・ブル・テリアですが、ここでも闘犬としての運命が待ち受けていたのです。

犬種の誕生は闘犬の禁止に起因する

19世紀に入ると世界的に闘犬が禁止されました。闘犬が禁止されたことで、闘犬は表舞台から裏舞台へと場所を移し、さらに強く凶暴な犬が作出されました。より凶暴になり力が強くなったアメリカン・スタッフォードシャー・ブル・テリアは、元来、訓練性が高く番犬として優秀だった犬種とは大きく性質が異なる犬種となってしまいました。そこで、闘犬として育種されたアメリカン・スタッフォードシャー・ブル・テリアをアメリカン・ピット・ブル・テリア、本来の気質を持っている犬をアメリカン・スタッフォードシャー・ブル・テリアとして犬種分けが行われました。

さらに、AKCは、スタッフォードシャー・ブル・テリアとアメリカン・スタッフォードシャー・テリアを別の犬種として区別し、現在に至っています。

アメリカン・スタッフォードシャー・テリアの特徴

アメリカン・スタッフォードシャー・テリア

大型でいかつい顔をしたアメリカン・スタッフォードシャー・テリア。闘犬としてより大きく、より強く育種されてきたことから、筋肉質で頑丈な体と強い顎を持ち、多少の怪我ではビクともしない強靭な肉体が特徴です。また、重心が低く俊敏に動くこともアメリカン・スタッフォードシャー・テリアの特徴の一つ。

性格は、飼い主に対しては従順で賢く、小さな子供にも優しく接することができます。寂しがり屋な面もあり、長時間のお留守番ではストレスがたまってしまうこともあります。また、闘犬としての過去を持つことから、突然何かのきっかけで攻撃性が出る可能性もあるため、攻撃性を引き出さないようにしっかりとしつけをする必要があります。

アメリカン・ピット・ブル・テリアの特徴

アメリカン・ピット・ブル・テリア

世界各国では、飼育・所有に規制がかかり、AKC、JKCでは犬種として認められていないアメリカン・ピット・ブル・テリア。アメリカでは、このアメリカン・ピット・ブル・テリアのために設立されたと言われるユナイテッドケンネルクラブ(UKC)では、アメリカン・スタッフォードシャー・テリアをアメリカン・ピット・ブル・テリアとして犬種登録しています。

アメリカン・スタッフォードシャー・テリアと同じ体格、基本的な性格も同じでありながら、闘犬としての能力を引き出され作出されたことから、闘争心が強く攻撃性の高い犬種として知られています。最近では、闘犬としての攻撃性を抑えたショータイプ、家庭犬タイプのアメリカン・ピット・ブル・テリアも作出されていますが、遺伝子には闘犬としての気質が組み込まれていると言われ、どの段階でその性質が現れるか予想がつきません。そのため、一般家庭で家庭犬として飼育するには難易度が高いことが大きな特徴です。

アメリカン・スタッフォードシャー・テリアとアメリカン・ピット・ブル・テリア、性格の違いは?

アメリカン・スタッフォードシャー・テリア アメリカン・ピット・ブル・テリア

どちらも同じスタッフォードシャー・テリアという闘犬種を祖先犬に持つ犬種ですが、アメリカン・スタッフォードシャー・テリアは闘犬としての気質を抑えることに特化して作出された犬種です。反対に、闘犬としての気質を強く引き出すように作出されたのがアメリカン・ピット・ブル・テリアです。

どちらも難易度の高い犬種であることに変わりはない

どちらの犬種も飼い主に対して服従心が強く、明るい性格ですが、警戒心が強い面もあります。特に、アメリカン・ピット・ブル・テリアの場合は、飼い主がしっかりとリーダーシップをとり、人間社会に適応できる性格にしつけをしていないと、攻撃性が前面に出てしまい、手に負えない犬となってしまいます。だからと言ってアメリカン・スタッフォードシャー・テリアが、誰にでも飼いやすい犬種であるということもありません。

どんなに闘犬の気質を抑えた穏やかな犬を選んで作出していても、やはり、闘犬の血統を引きついでいる犬種であることには変わりはないので、気軽に飼える犬種というわけではないことを覚えておきましょう。

同じ血を引く犬種なので飼うには注意が必要

アメリカン・スタッフォードシャー・テリア アメリカン・ピット・ブル・テリア

この2犬種は、登録されている犬種団体が異なることや育種の過程が全く違う過去を持つことから、違う犬種のように捉えられがちですが、実は同じ犬種であることがお分かりいただけたでしょうか。街で出会っても見分けがつかないこともうなづけます。どちらも同じ祖先犬を持ちながら、育種の過程で全く正反対の方向へと進んでしまった犬種なのです。特に、闘犬というとても悲しい歴史の被害者でもあると言えるアメリカン・ピット・ブル・テリア。アメリカ人好みの犬種と言われていますが、現在でもアメリカでは、シェルターに持ち込まれることが多い犬種なのです。

もし、見た目だけでどちらかの犬種を迎えることを検討しているのであれば、犬に対する知識、犬を制御できる能力が自分にあるのかを今一度見直してみてください。

◎ライタープロフィール
西村 百合子

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士、犬の東洋医学生活管理士2級

ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。

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