
犬の食器には豊富な種類がありますが、見た目やデザインだけで選ぶと失敗してしまうことがあります。食器の素材による違いや食器ごとのメリットやデメリットには次のようなものがあります。
犬用の食器にはいくつかの素材があり、それぞれ特徴があります。代表的なステンレス製・プラスチック製・陶器で比較してみましょう。
熱や消毒に強く、清潔に保つことができるので、動物病院などでも一般的に使用されています。保温性があり、温めたフードの嗜好性を保つことが可能です。あまり重みがないので勢い良く食べる子が使用すると食器が滑ってしまいますが、食器の下に滑り止めのゴムがついた製品もあります。デメリットとしてはデザインがほとんど選べない、金属アレルギーの犬では使用できないということが挙げられます。
デザインが豊富で飼い主さんには選ぶ楽しみがあります。軽くて扱いやすく価格も比較的手頃ですが、犬にとってはあまりメリットがありません。軽量ですぐに移動してしまうだけでなく、噛み癖がある子は食器をかじって破壊したり、壊れなくても食器についた傷に雑菌が繁殖しかねません。また、犬の食器によるアレルギーはプラスチック素材によるものが多いとされています。
適度に重量があり安定感があります。噛み癖のある犬にかじられても簡単には割れません。あまり種類が無いイメージがあるかもしれませんが、電子レンジ使用可のものや有名ブランドでデザイン性の高いもの、名前が入れられるものもあります。ただし、大型犬用のものは重量があり扱いにくく、種類も少ない傾向があります。
食器選びで考慮することはデザインや素材だけではありません。使用する犬の特徴や、使用するシーンに合ったものを選ぶ方法もあります。
早食いすると満足感を得られないだけでなく、喉に詰まらせたり胃捻転を引き起こすことがあります。胃捻転は特に大型犬に多く、処置が遅れると命の危険性もあります。早食い防止の食器の中は迷路のような作りになっているものや卵型の食器を転がしてフードを出すタイプの製品があり、食べにくい構造をしているため早食いを防止することができます。
犬と一緒にアウトドアを楽しんだり、旅行に出かけるときにはシリコン製の折り畳み式の食器が活躍します。軽くて場所をとらずに収納でき、滑らないので持ち運びも便利です。落として割れる心配もありません。
フレンチ・ブルドッグやパグなどの短頭種はマズルが短く通常の食器では食べにくいことがあります。短頭種用の浅めの食器や、手前に傾くよう角度のついた食器、勢い良く食べる傾向があることを考えて重量のある作りになっているものなどがあります。
犬に合わない食器を購入してしまうと単に勿体なかったというだけでは済まないことがあります。どのようなリスクが考えられるか見てみましょう。
食器の素材に対しアレルギーのある子は、食器を使うことで接触性アレルギーを起こすことがあります。症状としては接触した部位の赤みや痒み、痒みで掻くことによる脱毛、目やにや流涙などがあります。
プラスチックのように強く噛むと割れてしまうような素材の食器は、噛み癖の強い子が使うと破壊されるだけでなく欠けた破片を食べてしまう可能性があります。鋭利な破片を飲み込むと消化管を傷つけるだけでなく、腸閉塞のリスクもあるので、犬の性質を考慮して選ぶ必要があります。
ちょっと神経質な犬では、食器の素材や形状が変わることで食べるスピードが落ちたり食欲が低下する場合があります。極端に痩せてしまうようなことは無いかもしれませんが、気になるようであれば犬に合ったものを選び直してあげましょう。
上記の選び方を踏まえて、おすすめの犬用食器を4つご紹介します。
鍋などのキッチンウェアブランドとして有名なルクルーゼですが、犬猫用の食器も扱っています。素材は陶磁器の一種である「炻器」で、しっかりとした重みがあり、安定感は抜群です。電子レンジにも使用できます。
食器に約8度の傾斜がついているため頸部に負担をかけません。(※大型犬にはやや高さが低い可能性があります。)ステンレスの食器は分離式のため、取り外して簡単に洗うことができるのも嬉しいポイントですね。
早食い防止用の食器です。ポリプロピレン製ですが、ずっしりとした重みがあり鼻で押しても動きません。お皿の底面には滑り止めゴム付きです。通常の食器よりもおよそ4~5倍の時間をかけて食べさせることができますので、早食いを防止したいときにオススメです。
軽くて扱いやすい、シリコン製の折り畳み式フードボウルです。金属性のカラビナが付いているので持ち運びも簡単です。愛犬の身体の大きさに合わせて若干高さの調整ができるのも意外に嬉しいポイントです。
犬にとって食餌の時間は、一日の中で最も楽しみな時間です。飼い主さんの好みだけで選んでしまうと食べにくかったり、噛みついて割れた食器で怪我をする可能性もあるので、犬に合った安全なものを選ぶようにしましょう。また、どの食器を選んだとしても、飼い主さんは常に清潔に保つよう心がけるといいですね。
江野 友紀/認定動物看護士
地域密着型の動物病院にて、動物看護士として14年ほど勤務。看護業務の合間にトリミングもしています。
ドッググルーミングスペシャリスト、コンパニオンドッグトレーナーの資格を保有。
普段の仕事では、飼い主様の様々な疑問や悩みを解消できるよう、親身な対応を心掛けています。
ライターの仕事を通して、犬と人が幸せでより良い生活を送るためのお手伝いさせていただきたいです。