基準値を大きく超えていたとは言え、獣医さんからは「このまま様子を見ましょう」と言われたそうです。薬を必要とする状態ではないということになりますが、肝数値(ALP)と中性脂肪の上昇には、どのような原因が考えられるのでしょうか。
ALPは、通常血液中にはほとんど存在せず、主に肝臓で作られる胆汁の中に多くあります。胆汁は消化酵素で、胆嚢、胆管を経て小腸に流れ出すのが通常の流れです。しかし胆汁の中のコレステロールが増えて結石するなどの原因により、胆嚢で胆汁が滞り、血液中に漏れ出してしまうことがあります。これにより、血液検査でALPが上昇してしまいます。その他、ステロイドの使用、添加物の摂り過ぎでも上昇することがあるそうです。
中性脂肪と聞くと、高脂肪なフードやおやつの摂り過ぎが原因ではないかと真っ先に考えますが、それだけではないようです。先天性の高脂血症などの病気、ストレス、運動不足なども、中性脂肪が高くなる原因になり得るようです。
治療レベルではなく、それでも何か対策を講じたい時、飼い主としてはサプリメントや食生活で改善したいと考えるのではないでしょうか?しかしこちらの飼い主さんは、自分のお小遣いの中から愛犬のお世話にかかるお金を全て捻出しています。出費が増える対策は取れないことがわかりました。
その柴犬の食生活を聞いてみました。体重10kgで、フードは2ヶ月で800g。何だかとても少ないです。よく聞いたら、フードを全然食べないので、おやつをたくさん乗せているのだとか。おやつ代が月1万円以上になっていました。それでも食べない日があり、飼い主さんはとても苦戦しています。
その柴犬はとても便が小さく、普通の柴犬と比較すると、1/10くらいしか出ません。下痢と嘔吐も月に数回あります。さらにお父さんにはよくなついているのですが、お母さんと娘さんには全くなついていないらしく、ストレスを感じて吐くこともあるそうです。
この状況を改善するには、どうしたら良いのでしょう。未病の状態で、肝臓に良いフードに変えたり、低脂肪食にするのは危険です。特に療法食は原材料が極端な配合になっているので、獣医さんの指示無しで切り替えると、その後の健康状態に影響が出る恐れがあります。フードは既にシニア用だということもあり、フードは切り替えないことにしました。
前述のように、経済的に、高品質のサプリメントなどを追加することは難しいため、ここは何かをプラスするのではなく、良くないと思えるものを減らす方向で考えてみることにしました。
飼い主さんに、1ヶ月に買うおやつの量と種類を聞いて、実際に見せてもらいました。1つ300円前後のおやつを約1万円分で、全てに添加物がたっぷり使用されていました。試しに私が作った茹で肉をお裾分けしたところ食いつきがとても良かったと話していたので、市販のおやつを減らし、茹で肉などで手作りおやつを与えることをおすすめしてみました。
次に問題なのは、フードの量です。10kgの柴犬が1日で小粒のフードを40粒ではあまりに少なすぎると思いました。とはいえ、朝のフードが夜まで残っていることが多いらしいので、衛生面から手作りおやつは乗せられません。まずは夜の食餌から市販のおやつを減らし、手作りおやつとフードを増量することになりました。
最後の問題は、お母さん、娘さんとの関係です。過剰にかまわれることがストレスの原因とのことなので、お父さんから気をつけてもらうよう話してみるとのことでした。さすがにご家族のことを口出しするわけにもいかず、こちらは飼い主さんにお任せすることにしました。
犬を飼う時、「経済面に問題がないこと」「家族全員の同意があること」が、条件として挙げられます。犬が病気をした時に、その意味がよくわかると感じました。こちらのお宅は様々な問題を抱えていますが、どうにかしてALPと中性脂肪を正常値に戻したいと思います。お金がなくても、家族の協力が得られなくても、柴犬には何の罪もないですよね……
さの さえこ/ドッグライター
子供の頃はアレルギーで飼えなかった犬を、大人になって初めて迎えることができました。しかし里子で迎えた初めての愛犬は、外耳炎、歯肉炎、膿皮症、膝蓋骨脱臼を持っていました。
この子をきれいな体にするにはどうしたら良いか。そんな気持ちから得た経験を、「犬の食」を通してお伝えできればと思っています。
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