フランダースの犬は、イギリス人のウィーダ(ルイズ・ド・ラ・ラメー)という女性作家が書いたベルギーを舞台にした小説です。日本では、1975年にアニメが放送され貧しい少年と犬の悲しい物語が大きな話題を呼び、現在でも名作として語り継がれています。ここで少し、フランダースの犬の簡単なあらすじを紹介します。
1870年頃のベルギー・フランダース地方の小さな村に住んでいる絵を描くことが得意なネロは、祖父の仕事を手伝いながら貧しくも幸せに暮らしていました。
ネロは、金物屋の主人に酷使された末に捨てられた荷車引きのパトラッシュを介抱して、一緒に暮らすようになります。ネロのおかげで元気になったパトラッシュは、祖父の仕事である牛乳運びを手伝い、ネロといつも一緒に行動していました。しかし、祖父が亡くなってしまい、ネロの貧しさと絵を描く夢によって村人たちからの風当たりが強くなり、ひとりぼっちになってしまうのでした。
そして、唯一の希望だった絵のコンクールに落選してしまい、パトラッシュとともに家を出たネロは教会を訪れて、憧れのルーベンスの絵の前で静かに息を引き取り、天国へと旅立ったのでした。
フランダースの犬に登場するパトラッシュの犬種と言われているのはずばり、ベルギー原産の「ブービエ・デ・フランダース」という犬種です。私達が知っているパトラッシュとはかなりかけ離れた外貌をしていますよね。
一方で、同じくベルギー原産のベルジアン・シェパード・ドッグ・マリノアという立ち耳の牧羊犬がモデルではないかという説もあります。しかし、ネロが住んでいたとされる町ホーボーケンに建てられているネロとパトラッシュの銅像では、パトラッシュはブービエ・デ・フランダースの姿をしているため、この犬種がモデルになったという説が有力です。
ブービエ・デ・フランダースは、16世紀頃にスペイン人がフランドル地方に持ち込んだ犬と土着犬が掛け合わせて誕生した犬種といわれています。優秀な牧羊犬や運搬犬、そして第一次世界大戦で軍用犬としても用いられたため、多くの犬が戦争の犠牲になりました。それでも、生き残った犬たちを繁殖し、現在では農場などの番犬や警察犬、盲導犬などとして活躍しています。
大きさは、理想体高はオスで62~68cm、メスで59~65cm、体重がオスで約35~約40kg、メスで約27~約35kgの大型犬に分類されています。筋肉質で分厚くずんぐりとした体型で、粗く硬い豊富な被毛が特徴的です。愛情深く穏やかな性格で主人にはとても従順であり、「フランダースの犬」のパトラッシュのモデルとしてぴったりの性格の持ち主と言えるでしょう。
私達の知っているパトラッシュとはかなりかけ離れた犬種がモデルということで、拍子抜けした方も多いでしょう。なぜこんなにも外見が異なっているのかというと、有名なあのアニメは日本で制作されたもののため、日本人が親しみやすいようオリジナル犬を作り上げたと言われています。
つまり、日本アニメのパトラッシュは、ブービエ・デ・フランダースとはまったく違う犬ということなのです。セントバーナードや柴犬、秋田犬などの和犬などの犬種を参考に、日本の子どもたちが好むような外見に変化させたとされています。
ブービエ・デ・フランダースが日本人に知られておらず、黒くもじゃもじゃの外見が少し近寄りがたい犬種だったからかもしれませんね。
フランダースの犬は、日本ではとても有名で長く愛されている作品です。
ネロとパトラッシュの友情と悲しい最期はこれからも語り継がれていくことでしょう。そんなフランダースの犬に登場するパトラッシュの犬種がなんなのか知っておくと、雑学として話のネタになりますね。ぜひこの機会に、家族や友人にパトラッシュの犬種についてお話してみるのはどうでしょうか?
関 ゆりな/ドッグライター
ビションフリーゼのココメロ(1歳)とのんびり暮らすフリーランスライター。ココメロの健康のため栄養満点の手作り食を作るべく、栄養学について勉強中。
長年犬を飼ってきた経験を元に、愛犬との生活がより充実できるような、愛犬家の皆様のためになる情報発信を目指します。