magazine

健康管理 / 病気

2020.06.24

【獣医師監修】感染力の強い犬のジステンバー|ワクチン必須の命にかかわる感染症

ジステンバーウイルス感染症は、ニホンオオカミが絶滅する原因ともなった感染症です。命にかかわる3大感染症のひとつで、感染力、致死率ともに高いため、犬が毎年受ける予防接種の中にコアワクチンとして含まれています。
名称は聞いたことがあるけれど、どんな症状が出るのかよく知らないという飼い主さんも多いことでしょう。そこで今回は、恐ろしいジステンバーウイルス感染症について、症状や原因、治療法までを詳しく解説します。

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士(監修:加藤 みゆき/獣医師)

この記事をシェアする

犬のジステンパーウイルス感染症とは?

犬 ジステンパー

ジステンバーは、ジステンバーウイルスに感染することによって起こる感染症です。

ほとんどの肉食動物に感染する

南米ペルーから飼い犬を通してヨーロッパに持ち込まれたとされている感染症で、イヌ科の動物だけではなく、ネコ科、イタチ科、アライグマ科、アザラシ科など肉食のほとんどの動物に感染する病気です。
有名なところでは、タンザニアのセレンゲティ国立公園のライオンにジステンパーが流行しライオンが突然死したことや中国でサルの飼育施設で流行し、大量死したことなどが挙げられます。

感染力と致死率が高いことが特徴

人間のはしかウイルスに似た構造を持つジステンパーウイルスは感染力が高く、犬が感染すると発病率は25~75%、致死率は50~90%と非常に高く、恐ろしい感染症です。
感染しても軽い症状で終わる場合や重篤な症状から死に至る場合、後遺症が残る場合などさまざまな症状があることも特徴です。

犬のジステンパーウイルス感染症の感染経路は?

犬 ジステンパー

ジステンパーウイルスは、ジステンパーに感染している犬のくしゃみや鼻水、唾液などから感染します。
特に、空気が乾燥している冬場に感染しやすいと言われています。

1.飛沫感染

感染した犬のくしゃみ咳によって空中に飛散したウイルス粒を吸い込むことで感染します。

2.接触感染

感染した犬の鼻水、唾液、目やに、尿、便などに接触することで感染します。
また、犬同士で遊んだ時に、感染した犬を舐めたり、かんだりすることからも感染します。

3.間接感染

感染した犬が使用した食器、ブラシ、タオル、ボールなどのおもちゃを共有したことによって感染します。
多頭飼いの場合は、感染した犬が使用したものに、他の犬が触らないように気をつける必要があります。

かかりやすい犬種や年齢

ジステンパーウイルスは、犬種を問わずワクチンを接種していない犬、免疫力の低い子犬、シニアの犬、病気の犬などがかかりやすいと言われていますが、成犬でも感染しないわけではありません。
また、成犬では3歳未満での感染率が高く、子犬は母犬の初乳の免疫が切れワクチン接種が終わっていない3ヶ月齢の頃が最も感染しやすいとされています。

犬のジステンパーウイルス感染症の症状は?

犬 ジステンパー

犬のジステンパーウイルスに感染して発症した場合の症状を見ていきましょう。

初期症状

ジステンパーの症状は、急性、緩やかに進行する亜急性、慢性と3つのタイプに分けられます。
どの場合も、感染後約1週間で鼻水、目やに、40度前後の発熱、食欲不振、元気がなくなるなどの初期症状が現れます。一般的に、初期症状は軽いとされ見過ごされがちですが、子犬やシニアなど免疫の低い犬は、二次感染を起こしやすく重篤な症状となる場合があります。

初期症状の次に出る症状に要注意

免疫力の高い成犬などは、初期症状が治まるとそのまま治癒してしまうケースもあります。
しかし免疫力が低い場合は、感染後2週間程度で初期症状に続いて咳・くしゃみなどの呼吸器症状が出ます。そして嘔吐・下痢などの消化器症状が現れ、再び発熱して脱水や衰弱が起こります。
また、結膜炎、白血球の減少、体重減少などの症状が出ると、そのまま重篤化する恐れがあるため注意が必要です。

重篤となった場合の症状

ジステンパーウイルスが脳に侵入すると、麻痺やけいれん、運動失調といった神経症状が出ます。
この場合、ジステンパーウイルスよるジステンパー脳炎や脳せき髄炎が引き起ります。これにより、網膜炎、網膜剥離、失明、化膿性の皮膚炎、鼻や足の裏のパッドが角質化するハードパッドと呼ばれる症状が出ます。
また、ジステンパーに感染すると、免疫の低い子犬やシニアはジステンパー以外の細菌に二次感染しやすくなり、結果として重篤な症状となる場合があります。

他の犬や人にうつる?

ジステンパーウイルスは、飛沫、接触、間接的に伝播する感染力の高いウイルスです。
現在のところ人に感染することはないとされていますが、ウイルスの変異や進化によって将来的に人にも感染する可能性があるとも言われています。感染した犬と暮らしている場合、犬に触るなどの直接的な接触や食器やボールなどを触る間接接触をした場合には、石鹸できれいに手を洗うことが推奨されています。
また、多頭飼いの場合は、感染した犬を隔離することも重要です。

犬のジステンパーウイルス感染症、治療法は?

犬 ジステンパー

ジステンパーウイルスに感染すると、有効な治療法がないために症状緩和のための対症療法がとられます。
初期症状の段階では、ウイルスを抑制する抗ウイルス剤や抗生物質、ステロイドなどの他に症状ごとに投薬が行われます。また、感染力が高いため隔離による入院が必要となるので、隔離施設のある動物病院を選択する必要があります。

治療にかかる費用

ジステンパーウイルス感染症は、簡易検査キットによって4,000~5,000円の費用で検査をすることができます。
また、初期症状の場合は投薬による治療となるため1回の通院で約4,500円程度となりますが、通院が長引く場合や隔離入院が必要となる場合はこの限りではありません。

犬のジステンパーウイルス感染症を予防するために

犬 ジステンパー

犬は、母犬からもらう免疫(移行抗体)を生後12週程度までは獲得しています。この移行抗体が切れる12週以降が、最もジステンパーウイルスに感染しやすくなる時期だと言われています。
子犬が複数回に分けてワクチン接種をするのは、ジステンパーウイルスに対する抗体をしっかり作るためでもあるのです。また、成犬になってから接種する混合ワクチンの中にも、ジステンパーウイルスに対するコアワクチンが含まれているので、忘れずに接種するように心がけてください。

再発する可能性

ジステンパーウイルスは、一度治ったように見えて再発することがある恐ろしい感染症です。これを亜急性の発症と呼び、脳の中にジステンパーウイルスが潜んでいることによって神経症状が現れます。
また、4~8歳の犬では、慢性的な症状を発症することがあり、徐々に進行し重篤な状態になることもあります。

犬のジステンパーウイルス感染症との向き合い方

犬 ジステンパー

有効な治療法が確立されていないジステンパーウイルス感染症は、一度発症してしまうと致死率が高い恐ろしい病気ですが、定期的にワクチンを接種する事で予防できます。
また、多くの野生動物が感染している可能性があるため、登山やハイキングなど自然の中で遊ぶ場合は、野生動物と接触させないように気をつけることも大切です。
ワクチン接種については賛否両論ありますが、重篤な病気から愛犬を守るためには必要であることも知っておいてください。

◎監修者プロフィール
加藤みゆき 獣医師

加藤みゆき/獣医師

日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。

◎ライタープロフィール
西村 百合子

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士、犬の東洋医学生活管理士2級

ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。

  • 更新日:

    2020.06.24

この記事をシェアする