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健康管理 / 病気

2020.06.15

【獣医師監修】犬の血管肉腫とは?症状や原因、治療法からかかりやすい犬種まで

大型犬がかかる病気で上位を占める悪性腫瘍。その中でも比較的多いのが血管肉腫です。元気に過ごしていた犬が、ある日突然余命宣告される血管肉腫。飼い主にとって、まさに青天の霹靂とも言える悪性腫瘍です。おそろしいのは、とても進行が早く、転移が多い悪性の腫瘍であるということ。今回は、犬の命に関わる血管肉腫の症状、原因や治療法などについて解説します。

Author :監修:加藤 みゆき/獣医師、文:西村 百合子

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犬の血管肉腫とは?

犬 血管肉腫

血管肉腫は、特に大型犬に多く発生する悪性の腫瘍です。血管肉腫の特徴は、血管の内側にある血管内皮細胞と呼ばれる細胞が腫瘍化することによって起こる悪性のガンです。血管が多い組織である脾臓、心臓(右心房)、肝臓、腹膜などに多く発生するとされていますが、皮膚や皮下組織に発生することもあります。進行が早い上に、血液の流れに沿って転移しやすい悪性度の高い腫瘍として知られています。

血管肉腫の初期症状

血管肉腫は、特に脾臓に発症することが特徴です。この病気の恐ろしいところは、目に見える症状が現れた時には、命にかかわる状態であることが多いこと。また、8歳以上のシニアに多く発症する病気であることから、元気が無くなったり、食欲が落ちたりなどの初期症状があっても、飼い主が気がつきにくいことも特徴です。

脾臓に血管肉腫が発生した時の症状

比較的発生することが多い脾臓に血管肉腫が発生した場合は、腫瘍化した部位が破裂するまで症状に気がつくこともなく普通に暮らしていることが多くあります。ある日突然、腫瘍の破裂が起き脾臓に出血が起こると、極度の貧血や突然倒れるなどの症状が出ます。出血量が非常に多い場合は、そのまま命を落としてしまうこともあります。

心臓に血管肉腫が発生した時の症状

心臓に発生する腫瘍の8割は血管肉腫であると言われています。心臓に発生した場合は、激しい咳、呼吸困難、腹水がたまるなどの症状が現れます。お散歩中に歩かなくなる、息苦しそうにしている、お腹が張っているなどの症状が初期に現れますが、気がつきにくいことが特徴です。また、心臓と心臓を覆っている心のう膜の間に血が溜まることから心機能の低下や心不全、心タンポナーゼを起こすこともあり、最悪の場合には心臓破裂で命を落とすこともあります。

皮膚に血管肉腫が発生した時の症状

皮膚にできる血管肉腫は、皮膚の上から触るとコリコリとした固い腫瘤が皮下にできる皮下血管肉腫と、皮膚の真皮の部分にできる真皮血管肉腫の2種類があります。他の血管肉腫と比べると悪性度は低く、外科手術で治ることもあります。

犬が血管肉腫を発症する原因

犬 血管肉腫

発症すると進行が早く転移も起こる血管肉腫ですが、その発症の原因は解明されていません。

かかりやすい犬種や年齢

8歳以上の大型犬に発症することが多いと言われる血管肉腫ですが、若い年齢で発症する場合もあります。また、メスに比べてオスの方が発症率が高いとされていることが特徴です。好発犬種として、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ボクサー、ドーベルマン、グレートデンなどの大型犬の他にミニチュア・シュナウザーも発症が多い犬種として挙げられます。

犬の血管肉腫の治療法

犬 血管肉腫

血管肉腫は、原因がわからないため、現在の症状や検査によって確定されます。検査は、全身の状態を把握する血液検査、画像診断、心電図、腹水や胸水の検査などが行われます。血管肉腫の場合、心臓や脾臓に発生することが多いため、細胞診を行う前にまずは外科手術が選択されます。

外科手術は期待できる?

血管肉腫は、非常に脆い腫瘍であることから破裂する可能性が高く、まずは外科手術によって腫瘍の摘出が選択されます。しかし、転移が多く進行が早い血管肉腫では、手術によって完治することはほとんど望めず、また術後の生存率も低いとされています。そのため、進行を遅らせる、出血を止めることが主な目的として外科手術を行うことも多くありますが、余命は短いとされています。

抗がん剤治療は有効?

残念ながら血管肉腫は、抗がん剤が効きにくい悪性腫瘍とされています。全身に転移が認められ、外科手術が難しい場合でも、抗がん剤治療で効果は期待できないのが現状です。また、抗がん剤治療は延命のために行われますが、抗がん剤を使用しても、犬にとってつらい副作用が出ることがあり、どれだけ延命できるか不明であることから、獣医師によっては使用しないこともあります。

治療にかかる費用

血管肉腫を疑う場合、まずは全身の状態をみる検査が行われます。検査は、血液検査、X線検査、超音波検査、腹水・胸水検査、心電図などが最初の診察で行われます。さらに、必要とあればCTやMRI検査、病理組織検査が行われます。検査費用は約1~3万円程度、腫瘍摘出費用が1回の手術が平均92,700円(アニコム損保調べ)、脾臓摘出費用は入院を含め約10~12万円が目安ですが、犬種、血管肉腫の状態や転移の状況、入院の有無によって動物病院ごとに検査日、治療費、入院費が異なります。

犬の血管肉腫は予防できる?

犬 血管肉腫

発症の原因が不明な血管肉腫は、予防ができない病気です。また、はっきりとわかる初期症状も出にくく、気がついた時には、手遅れであることも多い病気です。そのため、8歳を過ぎたら、毎年の定期的な健康診断を受けることや、消化の良い健康的な食生活を送らせてあげることが大切です。

再発する可能性

転移が多い血管肉腫では、手術で取り切れたと考えられていても、目に見えないところに転移し再発する可能性もあります。また、残念ながら血管肉腫は、手術後の予後が悪い病気とされています。手術や抗がん剤治療を行っても完治することは望めず、すべて延命治療となってしまいます。ただし、皮膚に発症した血管肉腫は、外科手術によって完治するケースもあることから、紫外線に当たらないようにするなどのケアをすれば再発は予防できる可能性があります。

愛犬が血管肉腫を発症。病期との向き合い方

犬 血管肉腫

昨日まで元気だった愛犬が、いきなり余命宣告されてしまう、飼い主とって大きなショックを受けるのがこの血管肉腫です。「頭が真っ白になってしまい、どうすればいいのかわからなくなってしまった」血管肉腫を宣告された多くの飼い主さんがこのような状態になってしまうのもよくわかります。しかし、一番辛いのは血管肉腫を患っている愛犬なのです。たとえ余命3ヶ月と獣医師から告げられてしまっても、食事療法などで延命したケースはたくさん報告されています。犬は、飼い主の気持ちを受け取ってしまう動物です。血管肉腫と診断が下ってしまったら、愛犬のQOLを考え今まで以上に愛情たっぷりに、楽しい毎日を送れるように工夫をしてあげてください。

◎監修者プロフィール
加藤みゆき 獣医師

加藤みゆき/獣医師

日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。

  • 公開日:

    2020.06.10

  • 更新日:

    2020.06.15

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