犬に必要な栄養素はまず、三大栄養素の「たんぱく質・脂質・炭水化物」これに「ミネラルとビタミン」の2つをプラスし「五大栄養素」となります。まずは、最も基礎となる三大栄養素をチェックしましょう。
たんぱく質は丈夫で健康な筋肉を作ります。皮膚や免疫、ホルモンに関係し体を作るとても大切な栄養だと考えてください。特に、筋肉は遊んだり走ったりするときに活用するだけでなく、心臓をはじめ大切な内臓を支え動かす筋肉も含まれます。たんぱく質は犬にとって、とても重要な栄養だともいえるでしょう。
脂質が少ないフードを希望される飼い主さんが非常に多いのですが、脂質は大切なエネルギー源です。炭水化物などから比べるとすぐに燃えてエネルギーにすることができます。健康で運動が大好きな犬は、適量の脂質を摂取するように心がけてください。
炭水化物は消化吸収され糖質として体のエネルギーとして利用されます。糖質は持続性の高いエネルギー源となり、脳など神経細胞の活動には欠かせない栄養素となります。目をキラキラとさせて活発に遊ぶ姿を守るために必要不可欠な栄養と考えましょう。
それぞれの栄養を体に取り入れるために、薬やサプリメントが効率的で有効だと思う方もいるかもしれません。しかし、基本的に栄養は食べ物を口から摂取し体の中で消化し吸収されることで体内に入ります。その過程で、たくさんの栄養が複数作用しあい健康な体が作られていきます。
それでは、ドッグフードの栄養バランスはどこでチェックしたらよいでしょうか?<例の一つとして「AAFCO(全米飼料検査官協会)が定める栄養基準を満たしている」というポイントがあります。成長期(子犬)の時期はこの分野の栄養素は何%必要、大人になったら(維持期)はこの栄養素が何%必要という基準数値を出しています。
AAFCOは認定や検査をする機関ではなく、総合栄養食の栄養基準などのガイドラインを提供する機関です。この栄養基準を満たしていることが一つの基準となります。
他にもヨーロッパなどでは独自の基準を持っています。AAFCOの基準に満たないから悪いドッグフードという訳ではないので、メーカーに問い合わせるなどをしながら正しいフードを選んであげる必要があります。
必須栄養素ではなく、ドッグフードなどのパッケージに必ず含有が記載されている栄養ではありませんが、様々な情報からプロが注目している新しい栄養素をご紹介します。
タウリンは猫に必要と考えられていましたが、犬にも必要なアミノ酸ではないかと議論されています。
・抗酸化作用
・心臓サポート
・肝臓サポート
・繁殖能力の維持
・視力を正常に維持
など体の中の様々な働きに役に立ちます。タウリンが足りないと免疫機能不全や成長遅延など体の不具合を引き起こすので積極的な摂取が望まれます。
タウリンは、貝類や甲殻類に多く含まれるとされています。しかし、犬が苦手な食材でもありますよね。実は犬はお肉などたんぱく質を消化吸収する過程でタウリンを体の中で合成することができます。タウリンをしっかり摂らせるには上質なたんぱく質がとても重要、という点をチェックしておきましょう。
魚の油オメガ3脂肪酸はDHA・EPAを多く含みます。
DHA・EPAは、血液をサラサラにするなどとよく言われますが、ひとに対する効果とほぼ同じような効果を犬も得られるということが分かっています。そのため、皮膚被毛の健康維持だけでなく脳や心臓をはじめ内臓の健康維持に効果的だと言われています。
実際は、多くの犬が肉をベースにしたドッグフードに慣れ親しんでいるので、魚を取り入れるときに戸惑う方も多くいらっしゃいます。魚ベースのドッグフードは味や香りが肉ベースとは異なるため、変えづらいのも現状です。まずはトッピングやおやつで取り入れることをおすすめします。
また、ドッグフードによっては肉ベースにサーモンなどの魚もプラスしているブランドもあるので、ぜひ活用してみてください。
犬の摂取する栄養成分は、日々のご飯やおやつによってバランスがとられています。犬は人と違い体内で栄養素を作ることができたり、様々な優れた機能を持っています。「多くの良い栄養を与えなければいけない」と思いがちですが、「犬が持つ本来の能力を最大限に発揮するために、栄養が必要」と考えると、少し見方も変化しそうです。
加藤 みゆき/獣医師
日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。