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健康管理 / 病気

2020.06.08

獣医師監修|犬の胃捻転(いねんてん)ってどんな病気?正しい知識で愛犬を守る

犬には「胃捻転(いねんてん)」という病気があることをご存知ですか?もちろん人間にも同じような症状の病気があります。胃捻転は罹ると非常に怖い病気で、明確な原因は不明であるものの、特に大型犬で起こりやすいことから注意が必要です。本記事では獣医師監修のもと、犬の胃捻転について解説していきます。

Author :監修:加藤 みゆき/獣医師

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犬の胃捻転はどんな病気?

犬が吐いている様子

胃捻転は、正確には「胃拡張捻転症候群」という病気です。「胃拡張捻転症候群」とは胃が膨らみすぎて位置が変わってしまう(変位と言います)ことによって起こる病気の総称のことです。

胃の変位が長時間にわたると胃内ガスや泡による過度の拡張や、それによって血液の流れが邪魔されて心臓への血流が低下したり、また胃から感染が起こることによる敗血症でショックと呼ばれる状態が誘発されることがあります。

「胃拡張捻転症候群」は大型犬に多く発症し、十分な治療を施しても致死率が15~28%と高い病気で、積極的な治療が必要な救急疾患となります。

犬の胃捻転の具体的な症状とは?

胃捻転に罹ると、胃の捻れが起こると同時に食道も捻れるため、胃内からガスや内容物の流出が困難になります。そして、過度な胃の拡張のために血液の流れが邪魔されて、心臓に上手く血液が流れなくなり、血圧が低下しショック状態になります。

また捻転によって胃が虚血し、壊死してしまいます。胃の壊死が見られる場合には血液中の乳酸濃度が上昇し、予後が悪いという報告があります。さらに壊死部分に孔が空くと胃内容物が腹腔に流出して腹膜炎を発症し、腹膜炎から敗血症性ショックへと移行します。このとき心筋に対する毒素が生じるため、不整脈が起こることがあります。

胃捻転になると犬が見せる行動とは?

この病気を生じると動物は嘔吐しようとするが嘔吐できず、多量の流涎(りゅうぜん。よだれを流すこと)の症状が出ます。また急激なお腹の膨らみ(腹部膨満)を伴い、背中を丸め、落ち着きのない様子を見せることもあります。重篤な場合には血圧低下、心拍数の増加、呼吸が荒くなり、沈鬱な状態になります。

犬がよだれを垂らしている様子

犬の胃捻転の原因・かかりやすい犬種は?

胃拡張捻転症候群の明らかな原因は不明ですが、大型犬で胸が深い大型犬(ジャーマンシェパードやボルゾイのような)で、一度に多量の食事を与えるなどの給餌方法、食後の運動やストレスが危険因子として挙げられています。発症が多い犬種はグレート・デン、ワイマラナー、セント・バーナード、ジャーマン・シェパード、アイリッシュ・セッターなどが挙げられます。

犬の胃捻転の診断方法は?

診断方法は単純X線検査が有効です。明らかに胃が拡張しているだけなのか、捻転しているのかがすぐに分かります。また胃内以外にもガスが認められた場合には孔が空いている可能性が高く、緊急手術が必要になります。

愛犬が胃捻転になってしまった場合の対処法は?

犬の胃捻転

致死率が高く、怖い病気である犬の胃捻転。そんな胃捻転になったしまった場合の対処法はあるのでしょうか?ここからは治療法と予防法についてご紹介します。

犬の胃捻転の治療法は?

胃捻転になってしまったら、胃の過度な拡張は血流を邪魔し、呼吸に影響するため、迅速に減圧しなければなりません。口からチューブを胃内に入れてガスを抜くか、太い針をお腹に刺してガスを排出します。チューブの方が望ましいですが、捻れていると食道を通過できないこともあります。

血流低下によってショック状態になっている場合には急速輸液療法を行います。また不整脈が起きている場合には抗不整脈であるリドカインを投与します。

胃拡張捻転症候群では時間がたつと胃の虚血壊死が進行して孔が空いてしまう危険性が増加するため、犬の状態が安定した後は出来るだけ早く外科的治療を実施すべきです。外科的治療の目的は胃を元の位置に戻し、どの程度消化管や内臓が傷害されているか確認し、壊死している部分は除去し、そして再発防止のために胃をお腹の壁に固定することです。

犬の胃捻転を予防する方法は?食事は?

怖い胃捻転の発生を予防する目的で、発症の危険性が高い犬種では次のような予防策をとった方が良いでしょう。食事は小分けにして与え、1度に多量の食事を給餌しないようにしましょう。また食餌中は興奮させないようにし、多頭飼育では犬を分けて給餌する方が良いでしょう。また食事直後の運動は控えましょう。さらに空気を飲み込んでしまうかもしれないので食器は台などを用いて高い位置に配置して食事させましょう。

愛犬の急な胃捻転に対処するために

犬の胃捻転

もし愛犬が大量によだれをたらしていたり、腹部膨満などの普段とは違う症状が認められた場合には、出来るだけ早く動物病院を受診するようにしましょう。そのためにも日頃から愛犬の正常な状態をチェックするようにしてくださいね。

◎監修者プロフィール
加藤みゆき 獣医師

加藤 みゆき/獣医師

日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。

  • 更新日:

    2020.06.08

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