ときどき、過去のことを振り返り考え直すと「あのとき、ああすればよかった」などと後悔することがあります。これは、私が愛犬との生活でひどく後悔し、今でも思い出すと心が痛むエピソードと、その後のお話です。
ドッグトレーナーとして仕事をする前は、朝、家を出て帰宅は20時を過ぎるという、いわゆるフルタイムで働いていました。
その間、もちろん愛犬はひとりで留守番をしていました。
働かなければお金はもらえませんので、当たり前のことなのですが、愛犬は私と一緒にいる時間よりも、ひとりでいる時間の方がだんぜん長い生活をしていました。
散歩と食事が終わると、私が仕事に行くと察知し、あきらめてひとりで眠ろうとします。「行ってくるね」と声をかけると、あまり感情がない目でこちらを見る愛犬。
怖がりの愛犬にとって、ひとりの留守番は大きな精神的負担がかかっていたのだと思います。
ある日、帰宅をすると部屋の明かりがついていませんでした。
玄関の扉を開けると、暗闇の中から愛犬が走ってきました。いつもは部屋の照明をつけて出かけるのに、その日は忘れていたのです。
震えながらも一生懸命にしっぽを振って出迎えてくれる愛犬。
犬は暗闇の中でも物が見え、不自由をしないといわれています。ですが、日が落ちだんだんと暗くなる部屋の中で、愛犬はどれだけ不安を感じたのだろうと思うと、悲しい気持ちと申し訳ない気持ちがこみあげてきました。
部屋の明かりをつけると、愛犬がそこにいたと思われるへこみがソファーのすみにできていました。さわると少し温かいちいさなへこみ。そこに、まるまって震えながら私の帰りを待つ愛犬がいたのだと思うと、切なくて仕方がありませんでした。
今は、お互いがいつも側にいる生活をしています。
お互いがいつも側にいる生活をして感じたことは、犬も人も寄り添う相手がいないと、寂しさや不安を感じるということです。
長い時間ひとりで留守番をしていた愛犬は、何を考えどれくらいの不安に耐えていたのかを考えると、胸を締め付けられるような気持ちになります。
私たちは自由に行動できますが、自宅で待っている犬たちは外へ行ったり、食べ物を食べたりする自由はありません。ひたすら飼い主の帰宅を待つしかないのです。
ただそのような状況でも、少しでも愛犬に負担がかからないようにできることはあると思います。それをしなかった自分に今でも後悔をしています。
家庭の事情で、愛犬を留守番させる時間ができてしまうことは、仕方がないと思います。
逆に今のような生活の方が稀だと思っています。
後悔を消すことはできませんし、留守番をさせていた時間も戻りません。
ですが、その時間を消せるくらい幸せで、穏やかな時間を愛犬に今は過ごしてほしいと思っています。
もっと早くこういう生活ができたらよかったのに。なんで病気になってからなんだろう。このように、この先もきっと後悔することが多々あると思います。
「今、君は幸せですか?」。
今まで頑張ってくれた分、幸せと感じる日々を過ごしてほしいと願っています。
只野 アキ/ドッグライター
犬の素晴らしさを皆様にお伝えし、犬を手放さない社会の実現を目指すドッグライターです。
家庭犬ドッグトレーナーとして、トレーニングやイベント運営を経験。愛犬の病気をきっかけにトレーナー業は休止し、現在はドッグライターとして活躍中。
趣味は犬とたわむれること。愛犬との生活が豊かになる情報や、皆様のこころがほんのりと温かくなるような記事をお届けします。
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