
人間と暮らす歴史が最も古い動物がイエイヌ、犬です。犬は、人類が家畜化した最初の動物で、学名は「イヌ・オオカミ・家族」という意味を持つCains lupus familiarisと名付けられているネコ目(食肉目)イヌ科イヌ属に分類されている動物です。
ネコ目は、獲物を捕らえるために目、鼻、耳、ヒゲ、知能が発達し運動能力にも優れたグループとされています。そのネコ目には、ネコ亜目とイヌ亜目があり、イヌ亜目にはイヌの他にアライグマ、イタチ、スカンクや熊、アシカ、アザラシなどが同じ種目として分類されています。
そんなネコ目の祖先が、約6500万年前~4500万年前に生息していたミアキスという動物です。
動物の母という意味を持つミアキスは、イタチに似た細長い胴体と短い脚、長い尻尾を持つ体長約20~30cmの小型肉食動物だと考えられています。
この時代は、大型の肉食動物が地上で暮らしていたため、体が小さかったミアキスは木の上で生活していた樹上生活動物であると言われています。樹上では、鳥の卵やヒナ、爬虫類などを捕食する樹上生活動物の最上位の動物であったと推測されています。
樹上生活動物だったミアキスは、木に登るために肩と足の関節が発達し、前脚より後脚が長く、手足の先端には猫のように引っ込めることができる構造の爪と5本の指が付いていたとされています。また、ミアキスはこの時代に生息していた肉食動物の中では、体に対して大きな比率の頭蓋骨を持っていたことが特徴です。
森の樹上で生活していたミアキスですが、生存競争が激しくなり、やがてミアキスの中でも、森から草原へと生活範囲を移動した動物と、森の中で暮らす動物とに進化していったとされています。爪を持っていたミアキスは、草原で生活することも可能でした。草原へと生活の場を移したミアキスは、キノディクティス(Cynodictis)と呼ばれる動物に進化します。
約1200万年前に生息していたキノディクティスは、トマルクタス(Tomarctus)と呼ばれる動物に進化します。オオカミや犬によく似た外観を持っていたトマルクタスが、イヌ科の祖先とされています。隠れる場所がない地上で生き残るために、筋肉質の体に加え持久力とスピードのある脚力が発達し、反対にミアキスが持っていた出し入れのできる爪が退化したとされています。
見晴らしの良い広い草原で生き残るためには、集団で生活をすることが必要でした。また、獲物を捕まえるために、群れを作り共同で狩りをするようになったのです。やがて群れにはリーダーが生まれ、主従関係が作り上げられ、現代の犬に向けて進化していったとされています。
草原に出て行かず森で生活を続けたミアキスは、約2500万年前に現代のジャコウネコのようなプロアイルルス(Ploailurus)と呼ばれている肉食獣に進化したとされています。プロアイルルスは、体重10kgほどで、出し入れのできる鋭利な爪や歯、長い尻尾、大きな目が特徴だったようです。やがて、プロアイルルスはプセウダエルルス(Pseudaelurus)に進化したと推測されています。
約2000万年前にはプセウダエルルスに進化したミアキス。プセウダエルルスこどが、現代のネコ科動物の祖先となったとされているのです。プセウダエルルスは、敏しょうな動きと木登りが得意なことが特徴で、プロアイルルスと同じくジャコウネコのような足の形をしていたと推測されています。
ペットとして人気を二分している犬と猫。犬と猫、どちらも同じ動物から誕生したことがわかると非常に不思議に感じます。
また、イヌ科、ネコ科ともに、先史時代から人間と暮らしていたこともわかります。特に、最も古くから家畜化された犬は人間の生活スタイルに合わせた改良が行われ、現代のようにさまざまな種類が存在しています。
一方、猫はネズミ捕りとして人間と共に暮らしていたことがわかっていますが、その猫が現代のイエネコの祖先であるかどうかは不明とされています。現代でも、古代のミアキスの姿や習性、単独生活のスタイルが受け継がれているのは猫だと言えます。自由奔放な猫、人間と共生する犬の違いはそこにあるのかもしれません。
西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士、犬の東洋医学生活管理士2級
ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。