一般的に健康な犬の歯茎はきれいなピンク色です。そして、弾力があり適度に湿った艶やかな状態になります。 歯茎が乾燥していたり、弾力がなくシワがあるような状態の場合は要注意!
また、ピンク色の歯茎でも個々によって多少の違いがあるため、飼い主さんは普段から愛犬の歯茎の色や状態を知っておくことが大切になります。 愛犬の歯茎の変化にいち早く気付いてあげることが病気などの早期発見につながります。
歯茎に黒っぽい点があったり、少しまだら模様になっていることもあります。 これは色素沈着が原因になっていることが多く、硬いおもちゃを噛んだり、歯磨きで圧がかかることで起こる現象です。
このような場合は、慌てて獣医さんに診てもらう必要はないでしょう。 ただし、いつもは歯茎になかったはずの黒い点やまだら模様などが見られた場合は、早めに獣医さんに診てもらうことが大切です。
なかには、生まれつき歯茎が黒かったり、成長と共に黒っぽくなりやすい犬種もいます。柴犬・チワワ・ゴールデンレトリーバー・ダックスフント・ヨーキーなどに色素沈着が見られることがあります。ただし、遺伝との関係についてはまだ定かにはなっていません。
犬の歯茎の色がいつもと違う場合は、病気が原因になっていることもあるため注意して観察する必要があります。
歯茎全体が白っぽくなっている場合に考えられる病気には次のようなものがあります。
・貧血
・ショック症状(出血やアナフィラキシー、敗血症などによって低酸素状態に陥ること)
・低栄養
何らかの病気によって貧血が起こっている可能性もあるため、血液検査やレントゲンで原因を調べます。病気の場合は治療をすることで貧血が改善されます。
歯茎が黒く盛り上がっていたり、しこりのようなものがある場合はメラノーマ(悪性黒色腫)の可能性があります。メラノーマは進行が早く命に関わるこわい病気です。それらの症状がみられるときは、早急に獣医さんに診察してもらう必要があります。
歯茎が赤く炎症を起こして出血することがあります。その場合考えられる原因は次のようなものになります。
・歯肉炎
・歯周病
歯石を放置しておくと歯肉炎や歯周病を引き起こしてしまいます。 歯周病になると歯茎が赤く腫れたり、出血することもあります。歯茎の炎症によって歯がグラグラになり、痛みからごはんを食べられなくなることも。 そのため、歯周病が重症化してしまうと全身麻酔で歯石除去や抜歯をすることもありますので、日頃からのチェックがとても大切です。
歯周病を予防するには、毎日の歯磨きがとても大切です。 歯ブラシを使って力を入れずにゴシゴシしてあげましょう。もし歯ブラシを嫌がるようなら、飼い主さんの指に巻いて使う歯磨きシートを試してみるのもよいですね。日頃からの歯磨き習慣が歯周病を防ぐ一番の方法ですよ。
今回は「犬の歯茎」についての記事をお届けしました。愛犬の体の変化にいち早く気付いてあげられるのは飼い主さんだけです。 愛犬の健康を守るためにも、日頃からお口の中をチェックする習慣をつけておくと良いですね。
加藤 みゆき/獣医師
日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。
安田 ハル/ドッグライター
愛犬のトイプードルと暮らす楽しい毎日。
家族に寄り添って生きてくれている、健気で愛おしいこの子のために「何かできることはないだろうか」これがドッグライターを始めたきっかけでした。
幼い頃から、小型犬・中型犬・大型犬と様々な犬種と暮らした経験を活かし、愛犬家の皆さんに役立つ情報や、楽しく共感していただける記事を発信していければと思っています。
さらに知識を深めるために、動物に関する看護学・栄養学などの資格取得を目指して勉強中です。