magazine

健康管理 / 病気

2020.05.05

獣医師が教える犬の緑内障に関する基礎知識|初期症状を把握して早期発見・早期治療を

最近、愛犬が物にぶつかったり、つまずいたりしているのなと心配されている方いませんか?もしかしたら、それは犬の目の病気である「緑内障」かもしれません。犬の緑内障は、一度発症すると完治するのが難しく、いずれは失明してしまうとされています。そのため、救急疾患とも言われていて、少しでも長く視力を保つために早急な治療が必要になります。ここでは、犬の緑内障とはどんな病気なのか、治療方や予防法などについて紹介していきますので、ぜひ愛犬の視力を守るための知識としてチェックしてくださいね。

Author :関 ゆりな/ドッグライター(監修:加藤 みゆき/獣医師)

この記事をシェアする

犬の「緑内障」とは?

犬 緑内障

緑内障とは、眼球内部の圧力である眼圧が高くなることにより、網膜や視神経が圧迫され視覚障害を起こして失明してしまう病気です。

進行すると視力が低下するため、物にぶつかったり、段差につまずく、階段の昇り降りなどを嫌がるなど愛犬の行動にも異変が見られます。さらに進行すると強い痛みや失明する可能性もあり、早期発見・早期治療が大切です。

犬の緑内障の初期症状

犬の緑内障には、急性緑内障と慢性緑内障の2種類があります。慢性緑内障の場合は徐々に眼圧が高まるため、初期段階では自覚症状がほとんどなく、愛犬の異変に飼い主が気づいて動物病院を訪れた頃には、かなり進行していたという場合も多いようです。

しかし、急性緑内障の場合は、急激に眼圧が乱れるため、以下のような症状が見られます。

・目の充血
・瞳孔が閉じない
・目の浮腫
・痙攣
・涙が止まらない
・触られるのを拒絶する
・嘔吐
・食欲不振
・元気がない など

緑内障は他の犬や人にうつる?

緑内障は伝染病ではないため、他の犬や人にうつることはない病気です。 そのため、多頭飼いしている場合や他の動物と飼育している場合なども心配する必要はありません。

犬が緑内障にかかる原因とは?

犬 緑内障

ここでは、犬の緑内障がどのように引き起こされるのか原因について詳しく紹介していきます。

循環バランスの悪化

通常、眼球は眼内へ栄養供給をする房水(ぼうすい)という透明の液体で満たすことにより、眼圧を保っています。

この房水は、毛様体という水晶体を取り囲んでいる組織内でつくられ、隅角という部分から排出する循環サイクルによって、房水が増えすぎないようバランスが保たれています。

しかし、何らかの原因によって循環サイクルが崩れてしまい、眼球内の房水が多くなり眼圧が上昇してしまうことで、網膜や視神経が障害を受けてしまうのです。その結果、徐々に視力が低下していき、失明や痛みを伴うようになります。

原発性

緑内障を引き起こす他の病気がなく原因不明の場合、遺伝の関与があるとされています。先天的に房水の排出口である隅角の異常が見られる場合もありますが、犬においては稀です。

特定の犬種に多く緑内障が発症しているのは、遺伝的要因があると考えられています。

続発性

原発性緑内障が,原因となる病気がないにもかかわらず起こるのに対し、続発性緑内障は他の病気が原因で引き起こされます。

外傷や腫瘍、白内障、ブドウ膜炎、水晶体脱臼などの目の病気が先に起こり、それらが原因で眼圧が上がり緑内障を発症します。

緑内障にかかりやすい犬種や年齢

緑内障の好発年齢は、約6~8歳の中年期とされていますが、原発性緑内障の場合は4歳程度で発症する例もあります。 かかりやすいとされる犬種は以下が挙げられます。

・シー・ズー
・マルチーズ
・ボストン・テリア
・アメリカン・コッカー・スパニエル
・チワワ
・ビーグル
・柴犬 など

犬の緑内障の治療法

犬 緑内障

犬の緑内障は一度発症してしまったら、完治することはありません。しかし、治療によって進行を遅らせることは可能です。

治療方法としては、症状の程度や犬の状態などによって異なりますが、内科的治療法と外科的治療法があります。緑内障の原因が他の病気によるものであれば、まずはそちらの病気の治療を行います。

内科的治療法

まずは、高くなった眼圧を正常値まで下げるため、主に点眼薬を使用します。 点眼薬を愛犬の目にさすのが難しい場合は、内服薬での治療もあります。しかし、先ほども説明したように緑内障の初期症状はほとんどないため、飼い主が気づいて病院を受診した頃にはかなり進行していることが多いのです。そのため、受診した段階では内科的治療の効果が見られない場合も多く、この場合は外科的治療を行う必要があります。

外科的治療法

点眼などの内科的治療だけでは眼圧が下がらない場合には、房水の産生量を減らすためのレーザー治療の毛様体光凝固術を行います。

また、症状が進行して失明や強い痛みがある場合は、緑内障インプラントを結膜下に設置する前房シャント挿入術や目を残す義眼手術、眼球摘出手術などが検討されます。

外科的治療の目的は、内科治療で眼圧を抑制しやすくさせるためなので、外科的治療に踏み切ったとしても、継続して点眼を行うなどの内科的治療も並行して行う必要があります。

犬の緑内障治療にかかる費用

犬の緑内障の内科的治療にかかる費用は、眼圧の検査代と処置代、処方代がかかるため約1万5千~2万円程度です。

外科的治療にかかる費用は、行う治療によって異なりますが、手術費に加えて検査費や入院費もかかるため、トータルで20~30万程度とみましょう。

犬の緑内障の予防方法

犬 緑内障

犬の緑内障には、明確な予防方法はありません。

そのため、進行を遅らせるためにも早期発見・早期治療がとても大切なのです。愛犬の異常行動など症状が出始めてから治療を開始するのでは、進行していてすでに視力が低下していることが多いので、早期発見するために定期的な検査が欠かせません。

愛犬の大切な目を守るために、年一回以上の目の健康診断を行いましょう。また、少しでも異常を感じた場合には、様子を見ようとするのではなく早めに動物病院を受診して、すぐに治療を開始できるよう努めましょう。

愛犬の緑内障との向き合い方

犬 緑内障

犬の緑内障は、完治することが難しく、生涯にわたって進行していく病気です。そのため、発症してからずっと病気と向きあっていく必要があります。

もし、愛犬が失明してしまっても鋭い嗅覚や聴覚、記憶などを使ってこれまでとあまり変わりなく生活することは可能です。治療はもちろん、視力の低下した愛犬がこれまで通り安全に暮らせるよう家具の配置などを変えない、ぶつかったり、つまずかないよう物を置かないなど環境を整えてあげることも大切ですね。

◎監修者プロフィール
加藤みゆき 獣医師

加藤 みゆき/獣医師

日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。

◎ライタープロフィール
関 ゆりな ドッグライター

関 ゆりな/ドッグライター

ビションフリーゼのココメロ(1歳)とのんびり暮らすフリーランスライター。ココメロの健康のため栄養満点の手作り食を作るべく、栄養学について勉強中。
長年犬を飼ってきた経験を元に、愛犬との生活がより充実できるような、愛犬家の皆様のためになる情報発信を目指します。

この記事をシェアする

知りたい情報を検索!