ぶどう膜とは目の一部である「虹彩」「毛様体」「脈絡膜」など、血管や血流の多い膜の総称です。ぶどう膜が炎症を起こした状態をぶどう膜炎と言います。
ぶどう膜炎になると目が赤くなり涙や目やにが出るほか、症状が進行すると目の表面が曇り、目の中が曇ったように見えたり、虹彩の色や形が変化することがあります。ぶどう膜に隣接する網膜に炎症が広がると、最終的には失明することもあります。また、急性期には激しい痛みを伴う場合があります。
目を細めるような様子が増えて涙の量が増える、目やにが出る、白目の部分の充血などが初期症状として見られます。
ぶどう膜炎自体がうつると言うよりは、ぶどう膜の原因がウイルスや細菌、真菌など感染症であった場合に、病気を移された側がぶどう膜炎を発症する可能性があります。原因となり得る感染症にはアデノウイルスやジステンパー、レプトスピラなどがあります。
ぶどう膜炎の原因は様々で、原因が特定できない特発性の場合も多くあります。
ジステンパーやヘルペスなどのウイルス感染、レプトスピラやブルセラなどの細菌感染、真菌によるクリプトコッカス症、その他寄生虫や原虫などが原因でぶどう膜炎を発症します。
結膜炎や白内障などから続発してぶどう膜炎を発症したり、咬傷事故などで目に怪我をすることでぶどう膜炎を発症することもあります。
糖尿病や高脂血症などの代謝性疾患のほか、アレルギー、腫瘍などもぶどう膜炎を引き起こすことがあります。
ゴールデン・レトリバーは「色素性ぶどう膜炎」という遺伝性のぶどう膜炎を発症しやすい犬種です。また、秋田犬やサモエド、シベリアンハスキー、ミニチュアダックスフントなどもぶどう膜炎にかかりやすいと言われています。
治療法は原因にもよりますが、ぶどう膜炎を引き起こす原因となる疾患があればまずはその治療をし、加えて消炎剤や抗生剤などの点眼薬の投与や内服薬による治療が施されます。
治療費は動物病院ごとに異なりますが、診察料や検査、薬の処方など、一回の通院につき3,000~12,000円ほどかかります。症状が慢性化したり、ぶどう膜炎から緑内障を続発するなどして治療が長期的にわたると余計に費用もかかるでしょう。
ぶどう膜炎を引き起こす要因は様々ですが、感染症や外傷など予防可能なものもあります。アデノウイルスやジステンパーなどの感染症はワクチンで予防できるので、獣医師の指示に従い定期的にワクチン接種を受けましょう。
目を傷つけないために、散歩中に顔を草むらに突っ込ませないようリードを短くしたり、目の中にホコリや砂などが入った場合は犬用の目薬やコットンを使い拭き取ることも大切です。
ぶどう膜炎は再発する可能性が多いため、治療後も注意深く経過観察することが重要です。目が赤くなる、目を痛がる、食欲が低下する、寝ている時間が長くなるなどの症状が見られた場合には、様子を見ずに速やかに動物病院を受診しましょう。
犬のぶどう膜炎は軽度で済む場合もありますが、重症化して緑内障などの目の病気を併発することもあります。視覚障害を引き起こしたり失明に繋がる可能性もある病気なので、目に異常が見られた時には早めに動物病院を受診しましょう。
加藤みゆき/獣医師
日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。
江野 友紀/認定動物看護士
地域密着型の動物病院にて、動物看護士として14年ほど勤務。看護業務の合間にトリミングもしています。
ドッググルーミングスペシャリスト、コンパニオンドッグトレーナーの資格を保有。
普段の仕事では、飼い主様の様々な疑問や悩みを解消できるよう、親身な対応を心掛けています。
ライターの仕事を通して、犬と人が幸せでより良い生活を送るためのお手伝いさせていただきたいです。