犬につくダニで有名なのは「マダニ」です。肉眼でもはっきり見えるマダニは、山や草むらに多く生息しています。 真冬は活動を停止していますが、春から夏にかけて増え続け大発生します。
また、家の中に持ち込まれてしまったマダニは、冬でも活動を続けることができるため注意が必要です。 大きさは1~3ミリ程度ですが、寄生すると1~2週間吸血し続けて何十倍もの大きさになります。動物の体温や体から出る二酸化炭素を感知できるため、寄生できる動物が近づいてくるのを葉の先などで待っているのです。
ツメダニとは、0.5ミリ程度の小さな小さなダニです。激しい痒みと大量のフケが出るのがこのダニの特徴になります。 犬の背中や耳の後ろ辺りを中心に、大量のフケが出ることでダニに気付く飼い主さんが多いようです。 皮膚が炎症を起こして被毛が抜けたり、皮膚がただれたりすることもあります。
また、ツメダニは他の犬からもらってしまうケースが多いものです。 多頭飼いのご家庭は、犬から犬へ感染してしまうおそれがありますので、しっかり治療が終わるまで接触は避けなければなりません。
ダニに刺されると激しい痒みがあるため、頻繁に体を掻いたり、体を床や壁などに擦りつけるような行動が増えます。 犬が自分自身を頻繁に掻くことで皮膚に炎症が起こり、皮膚炎を引き起こしてしまうこともあります。
また、マダニは口器という口の一部を皮膚の中に差し込み、固定して吸血をします。そのため、無理やり取り除こうとすると、この器官が犬の皮膚の中に残ってしまいます。これが原因で皮膚が化膿したり、アレルギーの原因にもなりますので、寄生したマダニは動物病院で獣医さんに取り除いてもらうようにしましょう。これは人が刺された時も同様です。
散歩から帰ったら、家に入る前に被毛の表面を軽くブラッシングしてあげてください。ダニが皮膚にたどり着くには、多少の時間がかかります。 被毛についたダニはブラッシングで簡単に落とすことができますよ。
また、散歩のときに服を着せてあげるのもダニ対策として効果的です。ダニよけのスプレーなどもありますので活用してみるのも手です。
ダニに刺されることで皮膚炎やアレルギー症状の他にも、犬の命にも関わる病気の原因となる可能性があります。
マダニに刺されることで、バベシア原虫が犬の赤血球の中で増殖し、赤血球を壊して貧血を引き起こしてしまう病気になることがあります。 症状は嘔吐や下痢の他に、赤っぽい尿が出ます。重症化すると命を落としてしまうこともある、危険な病気です。
SFTSとは重症熱性血小板減少症候群のことで、マダニにより媒介され、人だけでなく犬や猫にも感染することがわかっている怖い病気です。動物での致命率は60%と非常に高く、発熱や食欲不振、黄疸などの症状が見られます。
今回は、酷い痒みや病気を媒介する「ダニ」についてご紹介しました。ダニ刺されは、犬にとっても不快なものです。 特に山や林、草むらなどはダニの住み家になりますので、自宅に帰ってきたときには愛犬の身体をブラッシングしてあげてください。 またがっつり草むらに入るというときには服やスプレーなどでダニケアをしてあげるといいでしょう。飼い主さんのちょっとした気遣いで、愛犬をダニから守ってあげましょう。
阿片 俊介/クロス動物医療センター 主任動物看護師
茨城県出身。日本獣医生命科学大学を卒業し、認定動物看護師の資格を取得。千葉県の動物病院に勤務後、動物用医薬品販売代理店にて動物病院への営業を経験。犬とのより良い暮らしをサポートできるよう、飼い主の方の気持ちに寄り添いながら、安心して正しい情報をお伝えできるよう心がけています。
安田 ハル/ドッグライター
愛犬のトイプードルと暮らす楽しい毎日。
家族に寄り添って生きてくれている、健気で愛おしいこの子のために「何かできることはないだろうか」これがドッグライターを始めたきっかけでした。
幼い頃から、小型犬・中型犬・大型犬と様々な犬種と暮らした経験を活かし、愛犬家の皆さんに役立つ情報や、楽しく共感していただける記事を発信していければと思っています。
さらに知識を深めるために、動物に関する看護学・栄養学などの資格取得を目指して勉強中です。