人間とは違い、犬の口内環境はアルカリ性ですから、比較的虫歯にはなりにくいと言われています。しかし口臭の一番の原因は溜まった歯石にあるのです。
歯石を放置してしまうと雑菌が歯茎へ侵入し、歯周病の根本原因となりますし、最悪歯を抜かなければならなくなります。オーラルケアの基本は歯石を溜めないこと。それに尽きますね。
歯を直接ブラッシングしてあげることで、歯垢の付着を防ぎ、歯石が溜まることもありません。歯磨き初心者の方にはちょっとハードルが高いかも知れませんが、段々と歯磨きに慣れさせてあげることが肝心です。
まずは口を触られてもらえる関係性作りが大事です。スキンシップのつもりで口周りや歯茎などを触ってあげましょう。触らせてくれたら愛犬にご褒美をあげること。そして段々慣れてきたら、今度は歯磨きシートを指に巻いてゆっくり優しく歯を拭いてみてください。
歯磨きシートでこすり磨きができたら、いよいよ歯ブラシの出番です。最初はいきなり奥歯を磨かずに、前歯から始めていくようにしてくださいね。徐々にゆっくりと奥歯へ向かって磨いていくのがポイントです。
歯磨きに対して拒否反応を示す犬もいるので、あまり無理に磨こうとすると噛まれてしまうことも考えられます。そんな時にできる歯磨きに代わるオーラルケアの方法を解説します。
どうしても歯磨きが無理な場合は、口腔洗浄液をお勧めします。
普段の飲み水に入れて希釈するタイプで、食事が終わった後に与えるのが効果的です。
キシリトールが含まれていますので、歯垢の沈着をある程度防げます。やはり歯磨きをすることが最も効果的ですから、あくまで補助的役割のものとして考えてくださいね。
食後に歯磨きガムを与えることも方法の一つです。歯と歯の隙間に入り込んでブラッシング効果が期待できますし、歯垢をある程度除去してくれるのもうれしいところ。
ただし、そのままの状態では与えないでください。飼い主さんが手に持ったまま与えることによって奥歯できちんと噛むようになりますよ。
犬の口臭の原因は、歯石や歯周病だけではありません。もっと内面的なものが関係している場合も多くあります。ストレスや腸内環境の悪化によって引き起こされる口臭は厄介なもの。その予防法をご紹介しますね。
腸内環境が良くないと、便の色や状態も良くありませんし、口臭もちょっと魚臭くなったりします。そんな時はどうすれば良いのでしょうか。
普段与えているドライフードに、砂糖が入っていないヨーグルトを混ぜてみて下さい。乳酸菌が腸にまで届き、腸内環境の改善に役立ちます。善玉菌が増えて便の状態も良くなりますし、消化を助けることにもなります。
乳酸菌入りのサプリやオヤツも市販されていますから、試してみるのも良いですね。
普段から与えているドライフードが合っていないのであれば、見直すことも必要でしょう。消化が良くなかったり、アレルギー症状などが起きているのであれば、犬に合ったフードを選択するのも方法の一つですね。
また、手作りごはんだと口臭が少ないという方もいらっしゃいますので、試してみるのもいいでしょう。
犬がストレスを感じていたり、緊張状態にある時などに口臭が臭くなることがあります。犬は意外にデリケートな動物ですから、唾液の分泌が減って口内細菌が増殖することが多いもの。そういった環境を改善してあげることも必要ですね。
動物病院等の待合室や、人が多い場所など、犬の緊張感をほぐしてあげることは飼い主さんの役目ですよね。絶えず声を掛け、触ってあげることで緊張を解きほぐしてあげましょう。
犬は思うように身体を動かせないとストレスが溜まるもの。特にお出かけしにくい梅雨の時期などは顕著ですね。定期的にドッグランなどへ出かけて、思い切り走り回らせてあげることで、ストレス軽減に役立ていきましょう。
ふとしたことで犬の口臭が気になったら、なるべく放置せずに気に掛けてあげてください。そして、口臭の原因をきちんと突き止めることが病気の予防にも繋がります。お口の中だけでなく、身体の内側にも目を向けてみてくださいね。
▼参考資料▼
・キシリトール(厚生労働省 e-ヘルスネット)
阿片 俊介/クロス動物医療センター 主任動物看護師
茨城県出身。日本獣医生命科学大学を卒業し、認定動物看護師の資格を取得。千葉県の動物病院に勤務後、動物用医薬品販売代理店にて動物病院への営業を経験。犬とのより良い暮らしをサポートできるよう、飼い主の方の気持ちに寄り添いながら、安心して正しい情報をお伝えできるよう心がけています。
明石 則実/動物ライター
フリーライターとして動物関連や歴史系記事の執筆を多数おこなう。柴犬と暮らす傍ら、趣味の旅行や城めぐりで愛犬と駆け回る週末。
愛犬家の皆さんにとって、お悩みを解決したり、有益な情報を発信することを心掛けています。