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犬種図鑑

2020.05.18

ジャーマンピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリアの見分け方

一見すると、同じ犬種に見えてしまうほどそっくりなジャーマンピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリアですが、実は原産国が異なる全く違う犬種です。ミニピンの愛称で親しまれているミニチュアピンシャーの基礎犬となったジャーマンピンシャーとトイマンとも呼ばれているトイ・マンチェスターテリアの基礎犬となったスタンダードマンチェスター・テリア。今回は、そっくりだけれどちょっと違うこの2種類の犬種の特徴や共通点、見分け方などについて解説します。

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

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ジャーマンピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリアの共通点

ドイツ、イギリスと全く別の国で誕生したジャーマンピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリアは、どちらもネズミ狩りを主な使役として作出された犬種です。そのため、ジャーマンピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリアともに、細身の体型で機敏、スムースコートが特徴です。若干、スタンダードマンチェスター・テリアの方が体高が高いですが、見た目には判別がつきにくい程度の違いです。また、ブラック&タンの被毛カラーはこの2犬種に共通している色のため、よく見ないと間違えてしまいます。最近では、動物愛護の観点から、断耳・断尾をしないケースが増えてきていますが、どちらの犬種も断耳されることがあるのも共通点の一つと言えます。

ジャーマンピンシャーの特徴

ジャーマンピンシャー スタンダードマンチェスターテリア

ピンシャーは南ドイツで誕生した歴史ある犬種です。ピンシャーの名前の由来は、「ジャンプしてネズミを激しく噛む」といった犬の動き方を指すドイツ語で、英語で挟むことを意味する「ピンチ、ピンチャー」と同じ意味があります。古代からドイツで活躍していたネズミ捕りのラットピンシャーと呼ばれていた犬が基礎犬となり、19世紀にジャーマンピンシャーが誕生しました。初代のジャーマンピンシャーには、スムースコートとワイヤーヘアードの2タイプがありましたが、その後スムースコートはジャーマンピンシャー、ワイヤーヘアードはシュナウザーに改名されたのです。そのため現在では、アーフェンピンシャー、ジャーマンピンシャー、ミニチュアピンシャーの他に、ジャイアントシュナウザー、スタンダードシュナウザー、ミニチュアシュナウザーがピンシャー種として登録されています。

体型

ジャーマンピンシャーの体高は25~32cm、体重は3.6~4.5kgで、筋肉質の締まった体つきが特徴です。

被毛

ジャーマン・ピンシャーの被毛は、短いスムースコート。被毛カラーは、ブラックアンドタンの他に単色でディアー・レッド、レディッシュ・ブラウンからダーク・レッド・ブラウンまでの色調がスタンダードとされています。ブラックアンドタンの場合は、漆黒のボディにレッドもしくはブラウンのマーキングが標準です。

スタンダードマンチェスター・テリアの特徴

ジャーマンピンシャー スタンダードマンチェスターテリア

作家アガサ・クリスティの愛犬としても知られているスタンダードマンチェスター・テリアは、19世紀半ば、イギリスのマンチェスターで誕生したことからその名がつきました。当時のマンチェスターでは、労働階級の人々にうさぎ狩りとラットキリングと呼ばれるネズミ狩りが流行し、より細く足の長い敏捷な犬が求められていたのです。スタンダードマンチェスター・テリアの詳細な起源は不明ですが、イギリスに古くからいたブラックアンドタンテリアを基礎犬として、ウイペットやイタリアングレイハウンドなどとの交配によって作出されたと考えられています。現在、アメリカと日本では、スタンダーマンチェスター・テリアにはスタンダードとトイの2タイプが登録されていますが、イギリスでは、トイタイプは別の犬種であると考えられていた時期が長く、イングリッシュ・トイ・テリアと呼ばれています。

体型

体高は38~41cm、体重は5~10kgとコンパクトでたくましい体つきながら、エレガントな外観が特徴です。垂れ下がった尻尾と立ち耳または上部が垂れ下がったボタン耳が特徴です。

被毛

スタンダードマンチェスター・テリアの被毛は、短いスムースコートと濃いマホガニーのタンが分布したブラックアンドタンの被毛カラーが特徴です。

ジャーマン・ピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリアの見分け方

ジャーマン・ピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリアは、どちらもネズミ狩りの犬として育種が重ねられ、犬種として確立した歴史を持っています。そのため、同じような体型、被毛タイプですが、見分けるポイントがいくつかあります。

ジャーマンピンシャーならではの特徴

ジャーマンピンシャー スタンダードマンチェスターテリア

マズル、首、足、尻尾が長くスクエアな体型が特徴のジャーマンピンシャー。スタンダード・ピンシャーと呼ばれることもあり、ネズミに噛まれることを防ぐためや噛まれた時の傷口が感染症にかからないようにするために断耳・断尾されることが習慣となっていました。また、ブラックアンドタンだけではなく単色のカラーが多いことも特徴と言えます。

耳の形と位置

ジャーマン・ピンシャーは、かつては断耳されることが習慣となっていましたが、最近では、動物愛護の観点から断耳されないことも多くあります。断耳されている場合は立ち耳ですが、本来の耳の形は、上部が垂れ下がったV字型のボタン耳で、頭部の高い位置についています。

マーキングの位置

ジャーマン・ピンシャーのマーキングは、鼻先にまでタンがありますが、鼻と鼻骨部分はブラックで、両ほほ、両目の上、顎の下には小さくタンが入ります。喉には、はっきりしたV字型のタンがあることが特徴です。また、膝から下にはタンが入っていますが、サムマークと呼ばれるブラックのマークが足のすぐ上にあり、指先にはペンシルマークと呼ばれるブラックの線が入っています。さらに、後ろ足の内側、尻尾の裏側、肛門周辺にもタンのマーキングが入っています。

尻尾の形と位置

ジャーマン・ピンシャーの尻尾は、耳と同じく断尾をする習慣がありますが、本来はシュッとした先細りの形で腰の高い位置についていることが特徴で、ピンと立つことやカールすることもあります。

スタンダードマンチェスター・テリアならではの特徴

ジャーマンピンシャー スタンダードマンチェスターテリア

イギリスでは、ジェントルマンズ・テリアとも呼ばれているスタンダードマンチェスター・テリア。コンパクトで引き締まった流線型の体つきで、ウイペットの特徴や気質を色濃く受け継いでいると言われています。テリアグループに分類されていますが、その立ち姿はウイペットを小型化したかのようによく似ています。被毛カラーは、ブラックアンドタン一色のみであることも特徴の一つです。

耳の形と位置

スタンダードマンチェスター・テリアは、犬種として確立されるまでに耳の形が大きな課題となっていました。現在は、上部が垂れ下がったボタン耳がスタンダードとして固定されましたが、それまでは、大きな耳が特徴で、断耳された立ち耳がスタンダードマンチェスター・テリアの特徴の一つだったのです。耳全体が、前方を向いている形状であることもスタンダードマンチェスター・テリアの特徴です。

マーキングの位置

鮮やかで明瞭なマーキングが求められているスタンダードマンチェスター・テリアですが、マーキングの位置は、両耳の上、喉の下側、パスターン、足、後ろ足の内側、尾の付け根の裏側にあります。また、胸には2つの均一のはっきりと分かれた三角形のマーキングがあることが特徴です。

尻尾の形と位置

断尾される習慣がなかったスタンダードマンチェスター・テリアの尻尾は、ウイペットに似た先細りのサーベル型の尻尾で垂れ下がっていることが特徴です。尻尾の先がわずかにカールすることがありますが、ジャーマン・ピンシャーのように背中の上にまで上がることはありません。

ジャーマン・ピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリアの性格の違いはある?

容姿、持って生まれた使役がそっくりなジャーマン・ピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリア。どちらの犬種も、陽気で家族思い、家族に対しては献身的な性格が特徴と、性格的には似ている部分が多くあります。

元気いっぱい運動能力が高いジャーマン・ピンシャー

ジャーマンピンシャー スタンダードマンチェスターテリア

賢く忍耐強い性質のジャーマン・ピンシャーは、家族に対しても優しく、小さな子供と遊ぶこともできます。スムースコートで寒さには弱いですが、運動能力が高いため、毎日の十分な運動を必要としています。また、持って生まれた狩猟本能からネズミには敏感に反応することがあるため注意が必要です。知能が高く、好奇心が旺盛なため、訓練が入りやすいことも特徴です。

寂しがり屋のスタンダードマンチェスター・テリア

ジャーマンピンシャー スタンダードマンチェスターテリア

テリア独特の気質である好奇心と独立心を持っているスタンダードマンチェスター・テリアは、「猫」のような性格であると評されることが多い犬種です。信頼する飼い主と過ごす時間を最も大切にする性格であることから、長時間のお留守番など一人にされることが苦手です。多くのテリアに比べて訓練性が高いことも特徴ですが、運動欲求が高いため飼い主と一緒に楽しめるドッグスポーツなどアクティブに遊ぶことで、犬種本来の性質を伸ばすことができます。

どちらも古くから親しまれている犬種

ジャーマンピンシャー スタンダードマンチェスターテリア

とても興味深いことに、ジャーマン・ピンシャーとスタンダードマンチェスター・テリアどちらの犬種も育種の過程でウイペットやイタリアングレイハウンドといったハウンド系の犬種が選択されていること。また、同じようにネズミ狩りを使役としていたことも、全く異なるルーツを持ちながら、この2犬種が似たような容姿になったのではと推測されます。細かい部分の容姿や性質は異なりますが、パッと見でどちらの犬種か判断できないのは、仕方のないことかもしれません。

◎ライタープロフィール
西村 百合子

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士、犬の東洋医学生活管理士2級

ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。

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