
グレーター・スイス・マウンテン・ドッグはスイス原産の山岳犬として知られていますが、その歴史は遥か紀元前にまで遡ります。まずは、犬種の起源や人間と共存してきた歴史を紐解いていきましょう。
スイス原産の山岳犬には4種類が存在しており、グレーター・スイス・マウンテン・ドッグをはじめバーニーズ・マウンテン・ドッグなども近い種類となります。たしかに外見がよく似ていますね。
その中でもグレーター・スイス・マウンテン・ドッグは、最も歴史が長く体が大きいのが特徴です。
もともとこの犬種は、古代ローマ時代にマスティフ系の犬がアルプス地方へ持ち込まれ、土着の犬と交配が続けられて誕生したと言われています。その後、ヨーロッパ各地へ広まっていったと考えられています。
アルプスでは牧畜のための番犬や運搬犬として活躍し、「肉屋の犬」として食肉を運んだと言います。しかし19世紀も後半に入ると、運搬などの仕事は車や鉄道などに取って代わられ、徐々に活躍の場を失っていくことになりました。
20世紀に入るまで、グレーター・スイス・マウンテン・ドッグという独立した認識されていませんでした。
1908年にスイスで開催されたドッグショーにおいて2頭の短毛のバーニーズ・マウンテン・ドッグが披露されたことをきっかけに、それらの犬がヨーロッパの大型山岳犬の典型であると認識され、1909年に初めて固有の犬種としてスイス・ケネル・クラブに公認されました。
さらに1912年には、グレート・スイス・マウンテン・ドッグクラブが設立され、最初のスタンダードはFCI(国際畜犬連盟)によって1939年以降に公表されました。その後アメリカに渡ったこの犬種は、AKC(アメリカンケネルクラブ)に認められて1995年に正式な認定を受けました。
グレーター・スイス・マウンテン・ドッグは、その体格に見合った力強さを持っています。次に、グレーター・スイス・マウンテン・ドッグの身体的特徴を解説します。
体高は64.5~72.5センチで、体重は47~63キロとかなり大きいサイズ感で、もちろん大型犬に部類されます。丈夫でがっしりと筋肉質な体格をしていますが、圧倒的な存在感がある外見とは違って動きは機敏で持久力も兼ね備えています。
また体高より体長の方が長いため、しっかりと地面を踏ん張れるようになっており、堂々とした威厳を感じさせます。
眉間から鼻先にかけてホワイトでマーキングされ、頬、目の上、耳の内側、前胸の両側にレディッシュ・ブラウンがある3色のトライカラーが特徴です。
主な毛色はブラックで、マーキングは途切れることなく喉から胸にまで降りてきています。またホワイトマーキングは足及び尾の先にもあり、ブレーズと目の上のタンマーキングの間には黒い被毛の部分が残っていなければなりません。首のホワイトパッチまたは首周りのホワイトカラーは許容されています。
同系統の犬種バーニーズ・マウンテン・ドッグなどは温和な性格で知られていますが、グレーター・スイス・マウンテン・ドッグの場合はどうなのでしょうか。
体の大きさそのままに、堂々としていて物怖じしません。非常に温厚で、慣れた人に対しては愛情をもって接します。
また子供に対しても優しく、賢くて物覚えも良いので、比較的しつけはしやすいと言えるでしょう。
かつては牧畜犬としての役目を負っていたこともあり、警戒心が強い側面も併せ持っています。また縄張り意識があるため、見知らぬ人や犬に対して防衛本能を発揮してしまうこともあります。
きちんとしたしつけによって改善できますが、日頃の運動などによってストレスを発散させることが不可欠です。
ここ近年の日本での登録頭数は毎年0~1頭というごく少数のグレーター・スイス・マウンテン・ドッグは、とてもインパクトがある犬種です。
日本ではあまりお目にかかることはできませんが、もしイベントなどで出会う機会があれば、じっくりと観察してみて下さいね。
明石 則実/動物ライター
フリーライターとして動物関連や歴史系記事の執筆を多数おこなう。柴犬と暮らす傍ら、趣味の旅行や城めぐりで愛犬と駆け回る週末。
愛犬家の皆さんにとって、お悩みを解決したり、有益な情報を発信することを心掛けています。