オス犬が片足をあげておしっこをする光景はよく見られますが、これにはどんな意味があるのでしょうか?
一般的に片足をあげておしっこをするのはオス犬に見られる行動です。
これはオスの本能的な行動で「マーキング」と呼ばれます。マーキングは「ここは自分のテリトリーだよ」と他の犬に知らせるために行なう行動です。
なぜ片足をあげてマーキングするのかというと、他の犬がこのマーキングの上から上書きをしてしまうため、より高い位置におしっこをかけて消されないようにするためではないかと言われています。
しかし、オスだけでなくメスでも片足をあげておしっこをする犬がいます。なぜメスも片足をあげてマーキングするのかはっきりとした理由は解明されていないようです。
犬が片方の前足を少しだけ持ち上げている姿は、とても可愛らしく感じますよね。前足を片方あげているという動作は、カーミングシグナルの一つと言われています。カーミングシグナルとは、言葉が話せない犬が行動やしぐさ、表情などで気持ちを表し、自分自身や相手を落ち着かせるために行う動作のことを指しています。実際に片方の前足を上げるという仕草にどんな意味があるのか見ていきましょう。
子犬が片方の前足をちょこんとあげてくる場合はどうでしょうか?これは、遊んでほしかったり、おやつがほしかったり、飼い主の気を引こうとするときに行うパピーリフトという動作とも考えられます。 パピーリフトとは、子犬が母乳を飲みたいときなど食べ物を要求するときに片足をあげることからきていて、子犬や若い犬に多く見られます。
極度に緊張していると前足を上げたまま、停止して動かなくなります。緊張や興奮状態を一度自分で落ち着かせるために足をあげるのです。
例えば、鳥などの獲物を発見すると、凝視したまま動かなくなることがあります。散歩中などにこの行動を行った場合は、追いかけたりする可能性があるのですぐに気を反らせましょう。
また、自分を落ち着かせるためでなく、相手の気持ちも落ち着かせようとするために片足をあげて敵意がないということを示すこともあります。
相手に威圧感を感じたり、怖くなったりと軽いストレスを感じたときに見られます。緊張したときと同じように前足をあげたまま凍りついたようにピタリととまります。
先程説明したような一時的に片足をあげるのであれば、カーミングシグナルの可能性が高いので健康的には問題はありません。しかし、常に片足をあげたままなのであれば足に異常がある可能性があります。考えられる理由について解説します。
肉球に異物がついており、地面につけると違和感や痛みを感じるため足を上げている可能性があります。例えば散歩中にガムがくっついてしまったり、棘が刺さってしまったりしている場合です。
膝蓋骨脱臼とは、膝のお皿と呼ばれる部分の膝蓋骨が脱臼してしまう病気のことです。外傷性のものもありますが、先天性や発育に伴い発症する場合がほとんどです。症状が軽いと無症状の場合もありますが、足を上げたりスキップするような歩き方をしたりします。
片足をあげるという動作ひとつでも、こんなにもいろんな理由が隠れていることが分かりましたね。愛犬のしぐさや行動をよく観察すると、気持ちが読み取れるようになります。日頃から愛犬の行動を観察し、普段と違う行動や動作を見分けられるようにするといいですね。
阿片 俊介/クロス動物医療センター 主任動物看護師
茨城県出身。日本獣医生命科学大学を卒業し、認定動物看護師の資格を取得。千葉県の動物病院に勤務後、動物用医薬品販売代理店にて動物病院への営業を経験。犬とのより良い暮らしをサポートできるよう、飼い主の方の気持ちに寄り添いながら、安心して正しい情報をお伝えできるよう心がけています。
関 ゆりな/ドッグライター
ビションフリーゼのココメロ(1歳)とのんびり暮らすフリーランスライター。ココメロの健康のため栄養満点の手作り食を作るべく、栄養学について勉強中。
長年犬を飼ってきた経験を元に、愛犬との生活がより充実できるような、愛犬家の皆様のためになる情報発信を目指します。