
犬の破壊行動は子犬のうちだけだと考える方もいますが、成犬になっても破壊行動をする犬はたくさんいます。子犬と成犬の破壊行動では原因が異なる場合があるので、まずは、それぞれの原因について探っていきましょう。
人間のように手を使って物をつかむことができない犬は、手の代わりに口を使います。その点を踏まえた上で、まずは、子犬が破壊行動をする原因についてご紹介します。
見るものすべてに興味がある子犬は、届く範囲にあるものすべてを口に入れて、味や感触などを確かめようとします。これは人間の赤ちゃんと同じ行為で、手が自由に使えないため感覚の鋭い部位である口を使うことで、そのものがどんなものか確かめようとする動物の本能的な行為です。
子犬にとっては、ハウスの中にあるものすべてが興味の対象となり、中でも柔らかいぬいぐるみが好きな犬は多いはず。ぬいぐるみをくわえて遊んでいるうちに、何かのきっかけで中の詰め物などが出てくることを経験した犬は、ぬいぐるみを壊せば詰め物が出てくると学習し、破壊行動が習慣化してしまいます。
子犬のうちに、ぬいぐるみは壊してはいけないことを教えましょう。壊している場面を目撃したらすぐにぬいぐるみを取り上げ、「イケナイ、NO」などと言って教えることが大切です。 遊んでいる最中に無理に取り上げようとすると、犬は対抗心からさらに強くぬいぐるみを噛もうとします。犬の対抗心を芽生えさせないよう、取り上げる際はオヤツと交換するなどの工夫をしましょう。
子犬の歯の生え変わり時期は、歯がムズムズと痒いため色々なものを噛みます。壊すつもりがなくても子犬の鋭い歯で噛んでいるうちに、壊れてしまうことがもしばしばあります。
最近では、歯の生え変わり時期の子犬用に噛むおもちゃが多数販売されていますので、そのようなおもちゃを与え、それ以外のものは噛んではいけないことを教えましょう。また、子犬の届く範囲にリモコンや携帯電話など壊されると困るもの、誤飲の危険性があるものを置かないことが大切です。
成犬になってからの破壊行動の原因は、子犬期の破壊行動原因とは異なるケースが多く、原因に応じた対策を行うことで改善することもあります。ここでは、成犬の破壊行動の原因を2つご紹介します。
犬のストレス要因には、心理的ストレスと身体的ストレスの2つがあります。心理的ストレスは、家族が変わる、住処が変わるなどの環境の変化、家族の不仲や飼い主との好ましくない関係性などが挙げられます。身体的ストレスに関しては、運動不足や過度な運動、空腹や体調不良などがストレス要因になります。
このような何かしらのストレスがある場合、犬は破壊行動をはじめとする問題行動を起こすことがあります。
ストレスが原因で犬が破壊行動をする場合、根本的な対策として犬のストレス要因をなくすことが大切です。犬は飼い主が気づかないような些細なことにストレスを感じることがあるので、運動量や生活環境、犬との関係性などを見直してみましょう。
犬の分離不安は飼い主に精神的に依存しすぎた犬に多い心の病気の一つで、飼い主と離れたときに極度の不安を感じます。この分離不安の症状の1つとして、破壊行動が引き起こされます。
軽度の分離不安であれば、トレーニングで解消することができますが、極端な分離不安症になってしまうと薬による治療が必要になることもあります。子犬の頃から、留守番や飼い主と離れることに慣れさせ、分離不安にしないことがポイントとなります。
破壊行動をする犬にとって、最も危険なことは誤飲です。特に、電化製品や化学薬品を使用したものの誤飲は、犬にとって命の危険を招く可能性もあります。破壊行動は、目撃した時にやめさせることが有効な手段。お留守番で退屈だろうからと、簡単に壊れるようなおもちゃを与えて外出したり、犬が届く範囲に壊されたくないものを置いておくことは飼い主の油断とも言えます。
破壊行動をした後に、小さくなっていたり隠れたりする犬もいますが、これは悪いことをしたと犬自身が認識している証拠です。怒られることがわかっているのになぜ破壊行動をするのか、その原因を探ることがとても大切です。破壊行動を見つけた時にむやみに怒るのではなく、破壊行動の理由について改めて考えてみることが、解決への近道と言えます。
家まで壊されるかと思った!大型犬と暮らしているとそんな体験をする飼い主も少なくありません。犬の噛む力は想像以上に強く、壁やドアなどを簡単に破壊できます。はじめのうちは、ぬいぐるみをバラバラにする程度だった破壊行動も、放っておくとだんだんとエスカレートしていき、より固いものや頑丈なものを破壊するようになる可能性もあるのです。犬の破壊行動は、原因に応じた対策を練ることが大切ですので、習慣化してしまう前に早めに対策を行いましょう。
西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士、犬の東洋医学生活管理士2級
ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。