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健康管理 / 病気

2020.04.26

【獣医師監修】排便が困難になる犬の会陰(えいん)ヘルニアとは?症状・治療法を解説

会陰ヘルニアという疾患をご存知でしょうか?まれに人間でもかかることがあり、排便や排尿が困難となって犬が重篤な状態に陥る危険な病気の1つです。そのまま放置しておくと命にかかわることもあり、早急に治療が必要となります。今回は会陰ヘルニアという疾患のメカニズムを解説すると共に、予防法や治療法などもご紹介させて頂きます。

Author :docdog編集部(監修:加藤 みゆき/獣医師)

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犬の「会陰ヘルニア」ってどんな病気?

犬 会陰ヘルニア

会陰部(えいんぶ)とは、肛門と生殖器の出口付近のことを指し、会陰部の筋肉が何らかの原因で委縮すると隙間ができてしまいます。

会陰ヘルニアでは、その隙間から直腸、膀胱、脂肪などが飛び出してしまい、まるで肛門の周りがパンパンに大きく膨れたように見えます。そのままの状態で放置してしまうと激しい痛みを伴うと共に排尿・排便が困難となって、尿毒症となる危険性すらあります。

会陰ヘルニアの初期症状|痛みを伴う

犬の会陰ヘルニアの場合、初期の段階では排便時間が長くなったり、しぶりが出たりして、徐々に病状が進行していきます。

次第にきばっても便が出ず、激しい痛みを伴うことになり、肛門の両側または片側が腫れあがっていきます。 また膀胱が反転するために排尿が困難となり、尿が溜まってしまうことになります。

他の犬や人にうつる?

ウィルス性の病気のように伝染する疾患ではありませんので、他の犬や人にうつる心配はありません。

犬の「会陰ヘルニア」の原因とは?

犬 会陰ヘルニア

会陰ヘルニアにかかる犬は圧倒的にオスが多いとされています。その原因はどこにあるのか?解説していきましょう。

オスのホルモン「アンドロゲン」に原因あり?

犬の会陰ヘルニアの原因は、まだ「解明されていない」というのが実情です。しかし、オスのホルモンである「アンドロゲン」が深く関わっているということは間違いないようです。

アンドロゲンは骨や筋肉、生殖器などの生成に大きく関係があるため、筋肉増強ホルモンとも呼ばれています。筋肉量の維持に役立ついっぽうで、何らかの原因でアンドロゲンの分泌異常が起こり、結果的に会陰部の筋肉を委縮させてしまうということが考えられます。

無理な腹圧が掛かる

排便の際に無理にいきんだり、激しく吠えるなどして腹腔に無理な圧力が掛かり、会陰ヘルニアになる場合もあります。ごくまれにメスがかかってしまう場合はそういった原因が考えられます。

「会陰ヘルニア」にかかりやすい犬種や年齢

会陰ヘルニアにかかりやすい犬種としては、ウェルシュ・コーギー、トイプードル、ミニチュア・ダックスフント、ボストン・テリア、マルチーズなどが挙げられます。

かかりやすい年齢としては、特にオスの中年期~シニア期にかけてが最も多いとされています。

犬の「会陰ヘルニア」の主な治療法とは?

犬 会陰ヘルニア

排便しやすいように支えたり、便を柔らかくする薬を飲ませるなど、症状を和らげることはできますが、根本的な治癒には至りません。外科手術によって回復させることが重要だと言えるでしょう。

まず直腸検査などによって脱出部の蛇行や拡張の具合を診断し、その上で術式を決定します。切開してからヘルニアでできた穴へアプローチし、飛び出した部分を腹腔内へ納めます。厚みのある筋肉組織を繋いで縫い合わせるか、無理な場合は人工物を使って縫合します。

会陰ヘルニアの治療にかかる費用

手術費としては3~4万円前後が平均的で、術前検査や入院費、手術後の通院費などを合わせると、おおよそ8~10万円程度が相場と考えられます。また再発防止のために去勢手術も並行して行うことが多いのですが、その分費用が高くなる可能性はあります。

犬の「会陰ヘルニア」の予防方法は?

犬 会陰ヘルニア

発症するほとんどの場合がオスであること、またオスのホルモン「アンドロゲン」に起因していることなどから考えれば、去勢することが最も有効な予防法となります。去勢は若年であるほど望ましく、生殖器系疾患を予防するといった観点でも去勢手術は推奨されています。

再発する可能性は?

手術が成功して回復したとしても、同時に去勢を行わなければ再発の可能性はあります。再びアンドロゲンの分泌異常が起これば筋肉が萎縮して薄くなり、同じ状況になりかねないからです。去勢によって疾患の根本原因を断ち切ることが重要となります。

また便が固くなったりして、無理にいきむのを防ぐために食餌内容に配慮する必要があるでしょう。あえて食物繊維や善玉菌が含まれているフードを与えるなどして腸内環境を整えることが大事ですね。

愛犬の会陰ヘルニアとの向き合いかた

犬 会陰ヘルニア

会陰ヘルニアのように事前に予防できる疾患については、飼い主さんの考え方にもよりますが、去勢などの予防措置を取っていると予防できる部分もあります。また何よりも普段から排便の様子や、便の状態などをきちんと観察しておくことが重要です。異常に排便時間が長かったり、下痢が続くようでしたら獣医師の診察を受けるようにしましょう。会陰ヘルニアにかかったとしても治療によって必ず治る疾患ですから、慌てずに愛犬とじっくり向き合って治療していきましょう。

◎監修者プロフィール
加藤みゆき 獣医師

加藤 みゆき/獣医師

日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。
日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。

  • 更新日:

    2020.04.26

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