
粘膜便は、便の表面に半透明のゼリーのような液体が付いている状態です。便に付いている粘液は、弁の排泄をしやすくするためであったり、腸を保護したりするために、腸の粘膜細胞から分泌されているものです。
そのため、粘液が分泌されていることに関してはごく普通のことで、便に粘液が油膜のようにわずかに付いている程度であれば、心配する必要はありません。なんらかの原因によって粘液がたくさん分泌されて便と共に出てくるときは、明らかにいつもの便と違うことが見て分かるので、原因に応じて対処する必要があります。
便の状態は、健康のバロメーターです。愛犬が粘膜便であったときに考えられる原因としては、以下が挙げられます。
大腸炎などにより、腸に炎症が起きているせいで粘膜便になっていることが考えられます。腸に炎症が起きると、炎症によって傷ついた腸の壁を修復するために、粘液がたくさん分泌されるので、便に付いてしまうのです。大腸炎の場合は、軟便や下痢を伴っていることが多く、排便回数が増える場合もあります。また、ときには出血が見られることもあります。
腸内の細菌バランスが崩れると粘膜便になることもあります。腸内には乳酸菌やビフィズス菌などの体によい影響をもたらす善玉菌と、病原性大腸菌などの体に悪影響を及ぼす悪玉菌、そして善玉菌にも悪玉菌にもなり得る日和見菌(ひよりみきん)が、バランスよく棲みついています。
しかし過度のストレスや風邪などにより、細菌のバランスが崩れ悪玉菌が増えると軟便や下痢を起こし、ゼリー状の粘液も一緒に出てくることがあります。
粘膜便になってしまわないようにするには、どのようなことに気をつければよいのか、対策をご紹介します。
食べ過ぎや、普段食べなれないものを一度にたくさん食べるなどは、大腸炎を招く原因になるので気をつけるようにしましょう。また、誤飲にも注意が必要です。誤飲した物により腸に異常をきたすことがあるからです。腸を守ることで、粘膜弁を防ぐことができます。
愛犬が寝ているときは構ったりせず、ゆっくり休ませてあげるようにしましょう。犬は人間よりも多くの睡眠時間が必要な生き物で、1日平均12?18時間ほど寝て過ごします。休息が足りないと体が回復しないため体調を崩しやすくなり、腸内環境の乱れから粘膜便になる可能性があります。
腸内環境の乱れにより粘膜便になるときは、ストレスが原因であることも少なくありません。散歩はもちろん、一緒に遊ぶ時間も毎日確保して、愛犬にストレスが溜まらないようにしてあげましょう。
また、引っ越しなどの大きな変化もストレスになりやすいので、注意が必要です。大きく環境が変わるようなことがあるときは、愛犬が不安にならないようにケアしてあげるようにしましょう。
愛犬の便がいつもと明らかに違うと、心配になってしまいますよね。粘膜便の原因は腸に起きた炎症によるものや、腸内環境の乱れからくるものなどが考えられます。何が原因で粘膜便になっているのかを探り、適切に対処しましょう。もし粘膜便の状態が長く続くようなときは、獣医師に診てもった方がよいでしょう。
新井 絵美子/動物ライター
2017年よりフリーランスライターとして、犬や動物関連の記事を中心に執筆活動をおこなう。
過去に、マルチーズと一緒に暮らしていた経験をもとに、犬との生活の魅力や育て方のコツなどを、わかりやすくお伝えします。