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犬を迎える

2020.03.22

身近にいるかもしれない多頭飼育崩壊「アニマルホーダー」について知っておきたいこと

アニマルホーダーは聞きなれない言葉ですが、マスコミやSNSで「多頭飼育崩壊」の文字を目にしたことはあると思います。多頭飼育って、数頭の犬や猫を飼っている人のことを指すのでは?そう思う方も多いと思います。しかし、多頭飼育者とは、数頭の動物を飼育している人を指すのではなく「何十頭もの動物を劣悪な環境で飼育している人」を指しています。
この記事では、そんな多頭飼育者=「アニマルホーダー」について考えます。

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

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アニマルホーダーとは?

アニマルホーダー

アニマルホーダーとは、アメリカから発信された言葉で、劣悪な環境で動物を多頭飼育している人のことを指します。直訳すると「動物(アニマル)を抱え込む人(ホーダー)」となります。

ホーダーの語源は、ゴミや物を大量に集めて捨てられずに溜め込んでしまう精神疾患の人に対して使われている専門用語からきています。
では、具体的にアニマルホーダーとはどのような人を指すのでしょうか。

アニマルホーダーの定義

2004年「動物との共生を考える連絡会」主催のセミナーで、アメリカ人道協会のランダル・ロックウッド博士が以下のように定義しています。

・多数の動物を飼育している。
・飼育動物に対し、最低限の栄養、衛生状態、獣医療が提供できない。
・環境悪化に対応できない。
・本人はもとより同居人に対しての健康や幸せにマイナス効果が生じていることに対応ができない。

以上の項目を満たす人を、アニマルホーダーと定義づけるとしています。

アニマルホーダーと多頭飼いのすみわけとは?

多くの動物を飼育していることで、動物保護団体を主宰する代表や保護活動家とアニマルホーダーを混同しがちですが、動物保護を行っている人とアニマルホーダーには大きな違いがあります。

最も大きな違いとしてあげられるのが、里親探しをしているかしていないかということ。保護団体や保護活動家は動物の里親探しをしますが、アニマルホーダーとなった人は里親探しをしないばかりか譲渡できない言い訳を用意しています。

また、多くのアニマルホーダーの特徴として、不妊手術をせずにメスとオスを同じ環境で飼育し、自家繁殖させてしまうことが挙げられます。

アニマルホーダーは精神疾患の一種

アニマルホーダー

アニマルホーダーとなるのは女性が多く、未婚者や離別経験者で年齢は50代以上がほとんどであるとされていますが、その兆候は20~30代から始まるそうです。

属性として特徴的なのは、教育レベルが高く、教師、看護師、獣医師などの職業に従事している人が多いことです。性格的な特徴として、寂しがり屋であること、一つのことにのめり込みやすいこと、熱くなると周りが見えなくなること、収集癖があり手放すことができないことなどが挙げられています。

精神疾患である強迫性障害(OCD)と似ている部分が多くあると言われています。強迫性障害とは、普通の人なら気にしなくても良いことが常に気になってしまう「強迫観念」にとらわれることや特定の行動を繰り返さずにはいられなくなる「強迫行為」が主な症状です。

強迫性障害とは

強迫性障害の特徴的な行動として、外出したことで自分が菌に汚染されたという不安から、手を洗い続ける、長時間お風呂に入るなどの汚染に関する行動や鍵、をかけ忘れてないか、アイロンを消したかなどの安全確認のために何度も家に戻って確認する行動などさまざまなものがあります。

中でも、不要なものが捨てられず家の中が不要なものでいっぱいになる人と、アニマルホーダーは似ている精神性を持っていると言われています。

またどちらも、親や子供、パートナーの死や離別などの大きな喪失感から発症することが多いとされています。

アニマルホーダーの心理

アニマルホーダー

アニマルホーダーは、周囲からは「かわいそうな動物を助ける良い人」と見られていることが多いのも特徴と言えます。

アニマルホーダー自身は「かわいそうな動物を保護している」と信じていたり、寂しさを紛らわすために動物に救いを求める心理から「動物を集める」行動をとります。特に、自宅内で飼育可能な猫を集める人が多く見られます。結果、自分がきちんと健康を管理し面倒を見られるキャパシティーを超えてしまい、不適切な飼育状態となってしまうのです。

しかし、アニマルホーダーはどんなに不適切な飼育環境となっていても、そのことが動物に対して虐待となっているとは思っていません。逆に、自分が飼育しなければ動物たちは殺されてしまうといった風に思い込んでいる場合が多いです。

そのため、動物保護団体などの手で自分が飼育していた動物が保護されても、また「動物を助けなくては」と思い、同じことを繰り返すこともアニマルホーダーの特徴的な心理と言えます。

アニマルホーダーにはどのような対策をすればいい?

アニマルホーダー

「犬や猫は自分の元にいるのが一番幸せだ」と考えるアニマルホーダーは、自分が動物を集めていることを悪いことだとは思っていません。また仮に悪いことだと気がついていても、「かわいそう」だという思い込みから動物を手放さそうとはしないのです。

アニマルホーダーとなる人の多くは、正常な判断や決断ができなくなっています。そのため、自分が飼育している動物を苦しめているとは思っていないのです。

動物へ愛情を求め、その結果負のスパイラルに陥っていくアニマルホーダーに最も必要なのは「心の理解者」だと言えます。孤独な心や深刻な心の問題を理解し、動物への執着を解いていくことが有効な対策とされています。そのためには、専門のカウンセリングが行えるセラピスト指導のもと家族や友人が治療に協力していくことが大切ではないでしょうか。

身近にもいるかもしれないアニマルホーダー

アニマルホーダー

大きな社会問題ともなりつつある犬、猫の多頭飼育崩壊。多くの場合、動物の多頭飼育の事実は、悪臭や害虫の発生などの被害を近隣の住民が通報することで発覚します。犬の多頭飼育の場合は、吠え声や外飼いなどで近隣の住民が気付きやすいですが、猫の場合は飼育崩壊するまでなかなか気がつかれないことが現状です。

もし、近隣で常に悪臭がしたり、複数の動物の鳴き声が聞こえる家がある場合は、アニマルホーダーである可能性が考えられます。日本の法律では、飼育者がいる場合、例えそれがどんな飼育環境であっても、動物はその飼育者の所有物となります。

近隣の住民がアニマルホーダーであると気づいた場合は、動物保団体や行政に相談をし、動物の保護を含めた適切な対応を取ってもらうことが必要です。また、アニマルホーダーの人が抱えている心の問題は、簡単に解決できるものではありません。とても難しい問題ですが、動物たちの幸せを考えれば一刻も早いレスキューが必要です。

もし、近隣にアニマルホーダーがいると感じた場合には、まずはコミュニケーションをとることから始めてみてください。あなたの勇気ある行動が、多頭飼育崩壊を防ぐ一歩となるかもしれません。

◎ライタープロフィール
西村 百合子

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。

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