
はじめに、「犬の遠吠え」の意味と由来からご紹介します。
「犬の遠吠え」の慣用句は、臆病者がその人の前では尻込みして思っていることを言えないのに、影では悪口を言ったり、威張った態度を取ったりすることを意味します。ネガティブな意味合いで、影で虚勢を張っている相手に対してやや馬鹿にしている、呆れているといったニュアンスが含まれます。
「犬の遠吠え」の慣用句は、その言葉通り犬の習性が由来になっています。
そもそも「遠吠え」とは、犬や狼などの動物が声を長く引きのばして吠える行為や吠え声のことです。犬が遠吠えする理由は、離れている他の犬とのコミュニケーション手段、ストレスや寂しさを紛らわすため、遠吠えの周波数と似た音に反応したとき、などと言われていますが、いずれにしても「ワオーン」という吠え声はやや寂しげに聞こえます。そのどこからともなく聞こえてくる遠くで吠える犬の声を「まるで遠くで文句を言っているかのようだ」と例えたのが由来と言われています。
また、臆病な犬ほどよく吠えると言われ、強い犬がいたとき近くことができず、少し離れたところから吠えたてるようなことがあります。この様子を人間に例え「犬の遠吠え」の慣用句が使われるようになったという説もあります。
「犬の遠吠え」の慣用句は、どのように使われているのか、いくつか例文を挙げてみます。
・影でグチグチ文句を言っているのは、犬の遠吠えと同じ。直接、本人に言うべきだよ。
・彼がいろいろ言ってるけど、犬の遠吠えでしかない
・あの人の言ってることは犬の遠吠えだから、気にせず放っておこう
上記の例文からイメージができるかと思いますが、臆病な性格で、影でいつも愚痴を言っている相手に対して使うことが多いです。
例文の通り、「犬の遠吠え」のポイントは、「臆病な人」が虚勢を張っているということです。よって、尻込みをせずにズバズバ言える人が、たまたま影で悪口を言っているようなケースには当てはまりません。間違えないように気を付けましょう。
ここでは、「犬の遠吠え」の類義語をご紹介します。どれも耳にすることが比較的多い慣用句なので、覚えておきましょう。
「犬の遠吠え」と混同しがちですが、「負け犬の遠吠え」は、勝負に負けた人が虚勢を張ることを表したものです。
「ケツの穴が小さい」は、ケチな人や小心者、寛容さがない人を意味します。下品な表現なので、ビジネスシーンで使うのはNGです。
能無しの口叩き(のうなしのくちたたき)は、無能な人ほどあれこれとよく喋り、口では一人前のことを言う様子を表した言葉です。
「犬の遠吠え」は、言いたいことがあっても尻込みして言えず、影で虚勢を張っている人のことを言います。類義語の「負け犬の遠吠え」は、「勝負で負けた人」が、勝った相手のいないところで虚勢を張ることを意味する慣用句で、若干意味合いが違うことを覚えておきましょう。
「犬の遠吠え」も今回ご紹介した3つの類義語もネガティブな意味で使われるので、使い方には気を付けていきましょう。
新井 絵美子/動物ライター
2017年よりフリーランスライターとして、犬や動物関連の記事を中心に執筆活動をおこなう。
過去に、マルチーズと一緒に暮らしていた経験をもとに、犬との生活の魅力や育て方のコツなどを、わかりやすくお伝えします。