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犬にまつわる雑学

2020.03.30

四字熟語『羊頭狗肉』。故事から読み解く犬と人間の歴史と関係性

四字熟語に『羊頭狗肉(ようとうくにく)』という言葉があります。一見、犬とは関係なさそうですが、「狗」とは犬のことで、音読みでは“く”ですが、訓読みでは“いぬ”と読みます。この犬にまつわる四字熟語について、その意味をはじめ、語源や由来、類義語や対義語から日常での使用例までをご紹介します。

#犬にまつわることわざ

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

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『羊頭狗肉』の読み方とその意味は

羊頭狗肉

『羊頭狗肉』という四字熟語を知らない人が初めて見た場合、かなりの割合でその読み方に悩むと思います。そしてその意味となると、まず分からないと答えるでしょう。しかし四字熟語には歴史や教訓などが4文字の中に凝縮され、慣用句的に用いると、知的な印象を与えることもあって、最近は若い世代からも注目を集めています。まずは『羊頭狗肉』の読み方、由来や意味についてご紹介します。

読み方

『羊頭狗肉』という四字熟語は、分解すると「羊」「頭」「狗」「肉」の4文字で成り立っています。それぞれの文字は、最初から3文字は「羊/よう」「頭/とう」「狗/く」と音読みで、最後の文字は「肉/にく」と訓読みで読みます。

意味

最初の文字から順番に意味を読み取ると、ヒツジの頭とイヌの肉となります。この単純な解釈では何のことやら、意味が分かりません。しかし、ここには四字熟語らしい歴史的な物語や普遍的な教訓などが含まれているのです。いくつか辞典を調べてみたところ、次のような意味が記されています。

◇見かけや表面と、実際・実質とが一致しないたとえ。良品に見せかけたり、宣伝は立派だが、実際には粗悪な品を売るたとえ(新明解四字熟語辞典/三省堂)
◇見せかけや触れ込みはりっぱでも、実質が伴わないことをいう(日本大百科全書(ニッポニカ)/小学館)
◇見かけと実質が伴わないことのたとえ。立派なものをおとりに使い、実際は粗悪なものを売ることのたとえ。(故事ことわざ事典)
これらを見れば意味は明らかですね。この四字熟語は、ヒツジの頭を見せてその肉と思わせ、実際に売るのはイヌの肉ということを意味し、見かけの良さと実質が一致していない場合の比喩として使われます。要するに“見かけ倒し”という意味なのです。

『羊頭狗肉』の由来と出自は?

羊頭狗肉

四字熟語には由来と出自があります。『羊頭狗肉』という四字熟語は何に由来しているのでしょうか?

中国の故事『無門関』に由来

由来は、中国の故事です。宋の時代の禅書『無門関・六側』に「無門曰、黄面瞿曇、傍若無人。壓良爲賤、懸羊頭賣狗肉」という記述があります。その中の一文「懸羊頭賣狗肉」が“羊頭を懸けて狗肉を売る”ということを意味します。

お釈迦さま批判のところで登場

この記述が見られるのはお釈迦さま批判のところです。“お釈迦さまのやっていることはまやかしだ”という意味で使われ、「懸羊頭賣狗肉」という一節が略されて『羊頭狗肉』という四字熟語として残ったのです。

『羊頭狗肉』の使い方を例文で紹介

羊頭狗肉

『羊頭狗肉』を用いるのは、他者に対する皮肉や愚痴を表現するときが一般的です。自らを表現するときは使用しません。ここでは具体的な使用例を解説していきます。

“羊頭狗肉”

頼りになると信頼していましたが口だけで、羊頭狗肉と言う方がふさわしい人でした。

あそこの病院は高級ホテルのような外観だけど、働いている医者の評判はあまりが良くないね。あの病院は羊頭狗肉かもしれない。

“羊頭狗肉ぶり”

飲み会では偉そうに上司を批判しているけれど、本人の前では逆にご機嫌取り。彼の羊頭狗肉ぶりはすごいよね。

“羊頭狗肉もいいところ”

商品写真がよかったから購入したのに、実物は全然違った。羊頭狗肉もいいところだ。

『羊頭狗肉』の類義語とは

羊頭狗肉

『羊頭狗肉』の類義語には、同じような四字熟語があります。また、四字熟語以外の同じような言葉も合わせてご紹介します。

動物が登場する四字熟語の類義語

四字熟語の類義語には、同じように動物が登場する言葉があります。『羊頭狗肉』のバリエーションとも言えるような言葉となっています。

「羊質虎皮(ようしつこひ)」

実際は羊なのに虎の皮をかぶっている。ここでの羊の立場は『羊頭狗肉』とは逆になります。

「羊頭馬脯(ようとうばほ)」

羊の頭を掲げておきながら、実際には馬の干し肉を売るという意味です。

「牛頭馬肉(きゅうとうばにく)」

牛の頭を掲げておきながら、実際には馬の肉を売るという意味です。

動物が登場しない類義語

『羊頭狗肉』の類義語として使用される四字熟語としては「有名無実(ゆうめいむじつ)」や「言行齟齬(げんこうそご)」があります。また、四字熟語ではないものでは、看板倒れ、看板に偽りあり、見掛け倒し、玉を衒いて石を売る、なども類義語となります。

『羊頭狗肉』の対義語と英語での慣用句

『羊頭狗肉』の対義語として挙げられるのは「言行一致」「看板に偽りなし」「看板隠れなし」などです。英語の慣用句では「He cries wine and sells vinegar.(ワインだと叫んで酢を売る)」「sell someone a bill of goods(いかさま品を売る)」などがあります。

残念ながら決して高くない犬の立場

羊頭狗肉

犬が登場する『羊頭狗肉』にも当てはまりますが、熟語や慣用句に犬が登場する場合、「犬死に」「○○の犬」「犬も食わない」「負け犬の遠吠え」など、その立場は決して良いとは言えません。言葉は時代とともに変わります。犬に対する認識が大きく変わりつつある今、言葉の中でも犬の立場向上を願ってやみません。

◎ライタープロフィール
西村 百合子

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。

  • 更新日:

    2020.03.30

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