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健康管理 / 病気

2020.03.18

アニマルセラピーの効果とはどんなもの?歴史や期待できる効果を知っておこう

現代は、実にさまざまなストレスが溢れている「ストレスフル社会」です。そのストレスを、動物と触れ合うことによって軽減するという方法が注目を集めています。アニマルセラピーです。今回は幅広い分野に効果があるアニマルセラピーについて、詳しく解説します。

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

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アニマルセラピーとは?

アニマルセラピー

動物と触れ合うことで癒されると感じたことはありませんか。アニマルセラピーという言葉から、「動物×癒し」というイメージがなんとなく浮かぶと思います。ここでは、アニマルセラピーについて、踏み込んで解説していきます。

AAAとAAT、アニマルセラピーには2種類ある

アニマルセラピーは2つの種類に分かれています。一つが「動物介在活動=AAA/Animal-Assisted Activities」で、もうひとつが「動物介在療法=AAT/Animal-Assisted Therapy」です。

AAAは動物と触れ合う活動(Activities)によって人を癒すことが基本で、一般的にアニマルセラピーと呼ばれる活動です。一方のAATには、「Therapy=セラピー」という言葉が含まれています。セラピーには癒しだけでなく、もっと明確に“治療”という意味もあるため、こちらは医療従事者の主導で実施される専門的な治療行為です。動物を介在させた補助療法という内容となっています。

なお、その他にも動物とのふれあい方や命の大切さを子どもたちに学んでもらうための活動「動物介在教育=AAE/Animal-Assisted Education」というジャンルもあります。

アニマルセラピーで活躍するのは犬だけではない

アニマルセラピーで活躍する動物は、犬だけではありません。犬と並ぶペットの代表である猫をはじめ、すべての動物が対象となり、ペットに限らずイルカなど通常では触れることが出来ない動物も活躍しています。

どんな効果がある?

アニマルセラピーの効果は、痛み、疲労、ストレス、イライラ、不安、緊張、悲しみ、怒りやすさなど、心身のマイナス要因を軽減する点です。その一方で、落着きや喜び、明るさや快活さが増大するプラスの効果も報告されているため、数多くの分野で実践されています。さらにその効果の延長として、リハビリ効果や社会性の向上、自尊心や自立心の向上なども期待できます。

特に医療行為となるAATの方は、ダウン症などの遺伝性疾患、脳性麻痺、自閉症、知的発達障害など様々な疾患が対象となり、明確な疾患でなくても、疲労やストレスが蓄積している人や、一般的な高齢者も対象になります。高血圧患者や認知症への効果も報告され、幅広い分野で注目されている療法です。

アニマルセラピーの歴史

アニマルセラピー

人類はその歴史の中で、さまざまな動物たちと深く関わってきました。アニマルセラピーもその一つです。ここではアニマルセラピーの歴史をご紹介します。

世界では

アニマルセラピーの歴史は古く、古代ローマ時代にまで遡ります。負傷した兵士のリハビリに、馬によるアニマルセラピーが実践されていたようです。

現在は最も身近な動物である犬を介在したアニマルセラピーが主流ですが、これは1900年代中盤から本格的に始まりました。

欧米では1962年に心理療法に犬を活用することに関する論文が発表され、1970年代から動物の活用が拡大しました。1987年にはアメリカのNIH(国立衛生研究所)がその効果を認めました。

日本では

日本には1920年頃に初めて導入されたと言われていますが、活発な活動がおこなわれるようになったのは1978年に社団法人日本動物病院福祉協会(JAHA)が設立されてからです。

JAHAは高齢者施設や障害者施設などの福祉施設を訪問するふれあい活動を1986年から行なっています。これはコンパニオン・アニマル・パートナーシップ・プログラム(CAPP)と呼ばれ、おもに医療福祉への貢献が目的で、アニマルセラピーの種類はAAAとなります。

一方AATは、1990年代後半から学術的研究が盛んになり、紹介される機会が増えて今日に至っています。

なお、日本での一風変わったアニマルセラピーとしては、1991年に日本オラクル株式会社が社員のリフレッシュと創造力を高めるオフィス環境のため初めて採用した「社員犬制度」が挙げられます。他にも株式会社パソナグループや株式会社ニチイ学館など、いくつかの企業でも動物を社員として認めています。

アニマルセラピーは発展途上のため問題点も

アニマルセラピー

多方面への効果が期待できるアニマルセラピーですが、欧米では広く浸透した医療行為の一環となっているものの、日本では社会的認知度も含めて発展途上です。そのため、総合病院での実践は少なく、公的医療制度として認定されるには科学的な裏づけが乏しいなど、まだまだ多くの問題点が存在するのが実情です。

5つの大きな問題点

犬を介在するアニマルセラピーには、主に5つの問題点があります。
まずは1.犬へのアレルギー、次に2.感染症の可能性、また、3.噛みつき引っかきの問題があります。そして自宅でのセラピーの場合は、4.飼育管理が困難なケース(飼い主が一人暮らしの場合や犬同居不可の賃貸物件)も問題点として挙げられます。さらに日本では、治療目的であっても衛生面の点から5.病院施設に入れないのが実情です。

セラピードッグの認知度

欧米では、すでに多くの医療現場においてセラピードッグが大活躍しています。それによる医療費の削減の報告もされています。
一方、日本ではまだセラピードッグの認知度や地位は確立されていません。代表的な使役犬である盲導犬・聴導犬がようやく公共施設等への同伴が普及してきた日本では、まだセラピードッグの同伴は認められていないのが現状です。

まだある見逃せない問題点

医療や介護の現場での効果が期待されるアニマルセラピーですが、現場における専門知識を持った人の不足は問題です。
常駐の場合は飼育環境を整えることも問題となります。また、セラピードッグにも引退制度があるため、ペットロスの問題も発生します。さらに、セラピーすることによって犬側にもストレスが蓄積されるため犬たちのメンタルケアなども必要となります。

世界でのアニマルセラピー効果

アニマルセラピー

アニマルセラピーはまだ世界中に普及したと言える段階ではありませんが、現在積極的に世界中で実践されはじめています。
ここでは、オーストラリア、ドイツ、フィンランド、スウェーデンの効果事例をご紹介します。

「医療費の節約」と「死亡リスクの減少」

オーストラリアとドイツでは、ペットを飼っている人と飼っていない人を比較する調査がおこなわれました。飼っている人は、1年間に病院に訪れる回数が15~20%ほど少なく、医療費の節約効果があると報告されています。

フィンランドでは、犬がいる家庭で育つ乳児は感染症や呼吸器疾患にかかるリスクが少ないとする報告があります。

さらに、一人暮らしの人で犬を飼っている人は飼っていない人に比べて死亡リスクが33%減少、心血管疾患に関連する死亡リスクが36%減少する可能性があるというスウェーデンでの調査がイギリスの科学雑誌で発表されています。

アニマルセラピーは公的資格はないが、動物のプロとしての登録が必要

アニマルセラピー

アニマルセラピーの資格は、いくつかの民間団体による認定資格が存在するものの国家資格のような公的資格は現在のところありません。

ただし、日本で動物とのふれあいを含むアニマルセラピー事業を行なう場合は、第一種動物取扱業(展示・動物を見せる業)の登録が必要で、動物取扱責任者の要件を満たさなければいけません。

これは動物園や水族館などと同様、動物を扱うプロとして、管理の方法や飼養施設の規模や構造などの基準を守ることが義務づけられているからなのです。

日本でもアニマルセラピーで“最良の友”の力を借りる環境を整えよう

アニマルセラピー

古い歴史を持ち、幅広い分野で効果が期待されているのがアニマルセラピーです。
中でもセラピードッグを用いたものは、最も身近な方法として世界的に広がりを見せています。日本でも認知度をより一層アップし、いくつかのハードルを乗り越えて“最良の友”の力を借りる環境を整えていきたいところです。

◎ライタープロフィール
西村 百合子

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。

  • 更新日:

    2020.03.18

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