実は、犬が好きではなかったワタシ。好きではないというより、犬が向こうから来れば、道を変えるほどの犬嫌い。子供の頃、大きな黒い犬に出合い頭に飛びつかれて以来、犬は絶対に「ムリ」な存在。その後、家族の強い希望で飼いはじめ、18年間暮らしていたシェルティとも心を通わせることができず、今思えば、犬という存在を理解することもなく過ぎ去っていった若かりし頃。
当時のワタシは、犬の種類もわからない、犬を飼うということがどういうことか理解もできていない絵に描いたような「犬初心者」。シェルティと暮らしていたとはいえ、「自分の犬」という概念は全くなく、ただ家には犬がいる、そんな感覚だった。そして、もちろん犬に関しての知識はゼロだった。
犬がいない平凡な毎日を送っていたワタシが、ある日出会った一頭のゴールデンレトリバー。そのゴールデンレトリバー「姫子」に出会ってからワタシの日常は大きく変わっていくことに、その時はまだ気がついてもいなかった。「犬嫌い」を声高に叫んでいたワタシにとって、その「大きな犬」との出会いは驚くことばかり。まず、家の中にまるで人間のように暮らしていることにビックリ。そして、本当に驚いたことは、人の行動を観察し、そして人の話を聞いて、人の心を見透かしているかのような行動をとるところ。その「大きな犬」は、私がイメージしていた「犬」とは大きく異なる、犬の姿をしているけれど「まるで人間」だった。
出会った当時、1歳ぐらいだった姫子は、やんちゃで元気いっぱいのまだ子供のゴールデン。ゴールデンレトリバーがどんな犬なのか、何ひとつ知識がなかったワタシにとって、姫子との日々は新鮮そのもの。「え?私の膝に頭を乗せるの?」「行かないで!って言うの?」「犬なのに嬉しいっていう感情があるの?」犬といえば、よそ者には吠えたり唸ったり威嚇し、気に入らないことがあれば家族に対しても歯を当てることもある、そんな動物だと思っていたワタシにとって、姫子の行動は驚きの連続。大きいのにちっとも怖くない、それどころか異常なほどまでに可愛い。犬に対して、可愛いという感情が芽生えたのは、おそらくこの時が初めてだったと思う。
そんな姫子と遊んでいるうちに、ゴールデンレトリバーと暮らしてみたいと漠然と思い始めたワタシ。ところがその当時のワタシときたら、ゴールデンレトリバーは食いしん坊で水を見れば飛び込む犬という程度の認識しかない上に、今考えれば、犬を飼うこと自体、恐ろしいほどの初心者。多分、今の自分なら仕事をしながら大型犬を飼えるのか?と、不安でいっぱいになるはず。それなのに、なぜだか本当に何故なのか、すでにゴールデンレトリバーと暮らしている自分を頭に描いていた。やがて、その夢の世界が現実となり、日々翻弄されることになるとは、この時想像だにしていなかった。
次回は、「初めての子育て・セナとの日々」をお届けします。
「君たちは私の太陽 ~海辺でゴールデンレトリバーと暮らす日々~」記事一覧