
一般に「動物愛護法」と呼ばれてはいますが、正式な名前は「動物の愛護及び管理に関する法律」と言います。
動物愛護法の大きな目的は、人と動物が互いに幸せに共生できる社会の実現です。そのためには「動物を虐待してはいけません」「動物愛護をしましょう」などというルールが決められています。
また、ただ可愛がるだけではなく、正しく飼育管理することもこの法律の中では求められています。
つまり、私たち飼い主にとってはとても深く関わりのある法律と言えます。
動物愛護法の対象になる動物は、家庭で飼育されている犬や猫などのペットだけではありません。動物園やペットショップなどにいる「展示動物」や、牛や豚や鶏など一般的に家畜と呼ばれる「産業動物」、あとは企業や研究所などで今もなお使われている「実験動物」なども含まれます。
2019年6月19日に「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されました。施行日は項目によって異なり、およそ1~3年以内となっています。この改正によって、大きく変わった点を抜粋してご紹介します。
今までは生後50日から子犬や子猫の販売が可能でしたが、改正後は生後57日からと販売可能な日にちが1週間延長されました。この時期は子犬たちにとっては社会性を築くとても大切な期間です。あまりにも早く親や兄弟から離してしまうことは、その後の成長に影響が出てしまうこともあるので、本改正はそういった観点からも重要と言われています。
今までは、所有者のわからない犬や猫は都道府県などが引き取らなければいけないと定められていましたが、今後は周辺の生活環境が損なわれるおそれがないと認められる場合などには引き取りが拒否できるようになります。この法律がどう影響してくるかは定かではありませんが、むやみやたらに犬猫を捨てる方が減ることを願っています。
不適切な飼育により、多頭崩壊してしまったり、不衛生な環境で周囲に迷惑をかけている場合などには、都道府県の指導や助言、立ち入り調査などができるようになりました。また、今までは「多数の動物による場合」以外は勧告などもできませんでしたが、今後は多数飼育でなくても立ち入り調査などができるようになります。
トラやオオカミ、ニシキヘビなど650種の「特定動物」と呼ばれる危険な動物の愛玩目的の飼養などが禁止されます。
動物をみだりに殺傷した場合には、今までは懲役2年または罰金200万円だったのが、懲役5年または罰金500万円と罰則が強化されました。また、虐待や遺棄をした場合の罰則も厳しくなり、懲役1年または罰金100万円となります。
上記の変更点に加えて、このマイクロチップの義務化も大きな変更点の1つとして挙げられます。 最近ではマイクロチップを装着している犬や猫も増えてきましたが、今後はこのマイクロチップの装着が義務化されるのです。といっても、その対象者はペットショップやブリーダーなど「第1種動物取扱業者」と呼ばれる生態販売者に限ります。
今回の法改正では、私たち飼い主には愛犬へのマイクロチップ装着義務は課せられていません。
ですが「努力義務」といって、できるだけ装着させる努力をしてください、と求められています。
マイクロチップの装着は、首の後ろにとても小さいカプセルのようなものを注射器のような器具で挿入するだけで完了します。動物たちにはそれほど痛みもなく一瞬でできる処置です。
愛犬が迷子になってしまった時や、災害などの時にはこのマイクロチップが飼い主さんと愛犬とをつなぐ命綱にもなります。この機会にマイクロチップの装着を検討してみてはいかがでしょうか。
動物愛護法は改正されましたが、ペット先進国と呼ばれるヨーロッパの国々と比べると、残念ながら日本の法律はまだまだ発展途上と言わざるを得ません。国民全体の意識を高めるために、まずは愛犬家である私たちが動物愛護法をよく知り、周りの方へも周知していくことから始めてみませんか?
▼下記の資料を参考に執筆しました。
(1)環境省
(2)公益社団法人日本愛玩動物協会
Qt/家庭犬トレーナー、ドッグシッター、ペットロスケアアドバイザー
動物愛護の中間支援団体での活動を経て、より多くの人と動物の幸せな生活を支えるお手伝いができればと、家庭犬トレーナー1級やペットロスケアアドバイザーなど複数の資格を取得。
シニア期にさしかかった2匹の愛犬とのゆったりとした幸せな日々に感謝しながら、今日も仕事とライティングのWワークに励みます。