
学名とは何でしょうか?学名とは動植物の世界共通の呼び名になるもので、動物や植物の正式名称と言えるものです。たとえば日本語の犬にしても、英語のDogにしても、その言語の国の人に通じる名称に過ぎません。
学会などで研究発表や論文を書く場合など、世界中で共通の名前を使っていないと支障があるため、統一した名称である学名を定めているわけです。
すべての動物や植物は大きいカテゴリーから界、門、綱、目、科、属、種へと細分類され,それぞれ学名が与えられています。万国命名規約に基づいてつけられ、おもにラテン語またはラテン語化したギリシア語その他の国語を用い、なかには人名が由来となる場合もあります。
学名の多くは「二名法」というルールに従って付けられ、これは2つのラテン語の単語を組み合わせたもので、属名(分類)+種小名(特徴等)のようになっています。
犬の学名は、「カニス・ルプス・ファミリアリス(Canis Lupus Familiaris)」となります。日本語に訳すと「犬・狼・家族」となります。
犬(Canis)は狼(Lupus)から派生したとされています。人間ととても親しい関係であることから、家族というニュアンスを持つ言葉(Familiaris)が当てられました。パピヨンでも柴犬でもセントバーナードでも、どの犬でもカニス・ルプス・ファミリアスと呼びます。
正式な分類を細かく紹介すると、動物界>脊索動物門>哺乳綱>食肉目(ネコ目)>イヌ科>イヌ属> タイリクオオカミ種>イエイヌ亜種に分類されているのです。
犬という動物の生物学的分類が現在の形になったのは、比較的最近のことです。ここではその歴史と犬の起源も含めて説明します。
1735年のカール・フォン・リンネ氏による生物の分類以来、犬は独立種とされていました。しかし1993年にタイリクオオカミの亜種とされ、学名も現在のものに変更されました。
タイリクオオカミ(別名ハイイロオオカミ)とは、ざっくりいうとオオカミの正式名称です。ほとんどのオオカミがこれに属します。
犬の起源はDNA研究が進んだ現在でも確定されるに至っていません。現在もさまざまな説が発表されています。
犬の起源についての最近の説を調べてみると、まず起源となる動物はこのタイリクオオカミという説が主流ですが、未知のイヌ属の動物という説も見られます。
年代については1万2500年ぐらいから1万8000年前という説が多いですが、なかには2万年代、3万年代、13万5000年前という説もあります。
また、場所においては、世界に複数箇所あるという説から中東、中央、東の各地アジア説とヨーロッパ説があり、中でも中国大陸/東アジア説が有力となっています。
発生はオオカミグループから独立したという独立発生説と、家畜化されたオオカミを祖先として各地で他のオオカミ亜種やコヨーテなどの他の動物との交雑により発生したという単一起源説があります。
最新のDNA研究から、オオカミにいちばん近い犬種は柴犬ということがわかりました。
オオカミに近いその他の犬種は、シャーペイ、チャウチャウ、秋田犬、バセンジー、シベリアンハスキー、アラスカンマラミュート、アフガンハウンド、サルーキ、サモエドなどですが、シーズーやペキニーズといった小型犬も近いようです。
大きいカテゴリーから目、科、属、種、亜種と細分化が続く分類を、逆に遡って仲間の動物を探ってみます。
イエイヌは最下部の亜種ですが、同じ階層のタイリクオオカミの亜種には、ホッキョクオオカミとディンゴが存在します。
ひとつ上がってイヌ属に分類される動物には、ホッキョクオオカミ以外のオオカミ種や、ジャッカルやコヨーテなどが属しています。
もうひとつ上のイヌ属になると、複数種のキツネが含まれ、さらにイヌ科まで上がるとすべてのキツネとタヌキも含まれてきます。
そしてその上の目までいくと、ネコをはじめクマやレッサーパンダ、アライグマやイタチ、アシカやアザラシなどが登場してきます。
その動物の特徴の一部も表している学名。犬の学名に“家族”を意味する言葉が入っていることや、“イエイヌ”という亜種に属していることなど、人は犬を学術上においても家/イエという他の動物と一線を画した名称をつけました。
こんなところにも人と犬の深いつながりを痛感します。また、犬が家(人)と切っても切れない動物ということも分かります。にもかかわらず、起源がいまひとつ不明瞭なのは残念です。人類最良の友である犬のルーツは、やはり知りたいものですね。
西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士
ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。