
犬のフィラリア症とは、フィラリアという寄生虫が心臓や肺動脈に寄生して、さまざまな機能障害を引き起こす病気です。感染源は蚊で、以下の1~4を繰り返すことで広がっていきます。
1.フィラリアに感染した犬の血を吸った蚊に、フィラリアの幼虫が体内に取り込まれる
2.その蚊が他の犬を吸血したときに、その犬の体内にフィラリアの幼虫が入る
3.犬の体内に入ったフィラリアの幼虫は、発育を続けながら血管の中に入り、血流に乗って心臓や肺動脈に移動する
4.さらに発育して成虫になったフィラリアは、幼虫を産む
フィラリア症にかかりやすい犬種や年齢などはなく、どの犬でも感染するリスクがあります。
心臓内に成虫が寄生すると血液循環に障害が生じ、さまざまな症状を引き起こします。とはいえ、フィラリアに寄生されてもすぐに症状は現れず、発症するまでの期間が長いことが多いため、気付いたときには症状が深刻化していたという場合もあることが厄介なところです。
発症すると息切れがする、咳が出る、疲れやすいなどの状態が見られるようになります。重症の場合は腹水や呼吸困難、咳をしたとき血が混ざるなどの症状が現れます。
症状の重さは、寄生された部位や成虫の数、肺や肺動脈の状態、治療を始めるまでの期間などによって変わってきます。
フィラリア症を予防するためには、以下の対策をすることが非常に重要です。
フィラリア症は予防薬を適切に投与することで、かなりの高い確率で防げます。予防薬には、飲み薬、首の下に垂らす滴下剤、注射がありますが、どれもフィラリアの感染自体を未然に防ぐものではなく、感染源の蚊から体内に入ったフィラリアの幼虫を退治してくれる、いわゆる駆除薬です。
予防薬の投与を開始する前には、まず愛犬の体内にフィラリアの幼虫が寄生していないか、獣医師に診てもらう必要があります。というのも、すでに犬の体内にフィラリアの幼虫がいる状態で予防薬を投与してしまうと、一度にたくさんの幼虫が死滅し、その死骸が細かな血管に詰まることによりショック症状を起こすことがあるからです。最悪の場合は死亡することもあります。
予防のために投薬をしたのに、危険な状態にさらすことになっては本末転倒です。動物病院で事前検査を必ず受けるようにしましょう。
予防薬を投与する期間は、蚊が発生する期間およびいなくなってから1ヶ月後までです。具体的な投与期間の目安としては5月?12月頃までで、毎月1回の頻度で投与します。
なお、獣医師から指定された日に予防薬を投与し忘れた場合、指定日から数日程度であれば、すぐに投与すれば問題ありませんが、半月以上経過してしまった場合は、獣医師に相談するようにしましょう。
予防薬だけでもフィラリア症を防げますが、そもそも蚊を寄せ付けないようにするために、虫よけスプレーを使用するのもよいでしょう。ただし、人間用のものでは犬にとって刺激が強すぎることがあるので、ペット用の虫よけスプレーを使うようにしましょう。
フィラリア症は最悪の場合、死に至ることもあることから軽視できない病気です。しかし、獣医師の指示通りに予防薬を投与するれば、高い確率で防げます。なお、投薬を開始する前には、フィラリアの幼虫がすでに愛犬の体内にいないか、必ず事前検査を受けましょう。蚊よけ対策も併せて行い、愛犬の健康を守っていきましょう。
新井 絵美子/動物ライター
2017年よりフリーランスライターとして、犬や動物関連の記事を中心に執筆活動をおこなう。
過去に、マルチーズと一緒に暮らしていた経験をもとに、犬との生活の魅力や育て方のコツなどを、わかりやすくお伝えします。