magazine

インフルエンザにかかったベージュの毛の犬が寝込んでいる
健康管理 / 病気
鉛筆アイコン

2021.10.29

犬にインフルエンザがうつる?予防法や対処法について解説【獣医師監修】

冬に猛威をふるう人間のインフルエンザですが、犬にうつることはあるのでしょうか?また、愛犬がインフルエンザにかかってしまった場合、どのような対処をすればいいのでしょうか?
今回は、犬のインフルエンザについて考えていきたいと思います。万が一のために対処法を知っておきましょう。

#Healthcare

監修:加藤 みゆき/獣医師(文:明石 則実/動物ライター)

犬に人間のインフルエンザは感染する?

インフルエンザにかかった茶色と白の毛の犬が足を噛んでいる

人間のインフルエンザはA~D型に分類され、毎年何らかの形で流行するものですが、人間のインフルエンザが犬へうつることがあるのでしょうか。

人間のインフルエンザがうつっても犬はほとんど発症しない

過去をみると、1970年代から人間のインフルエンザが犬にうつって感染したという報告例がありますが、人間のように集団感染やパンデミックを引き起こしたということはないそうです。

しかし、アメリカではインフルエンザから肺炎に移行したという例があります。

また、日本でも犬の感染例は報告されているものの、実際にインフルエンザ特有の高熱や咳などの具体的な症状の報告はなく、人間のインフルエンザが犬に感染する可能性はあるが、ほとんど発症しないという見解が一般的です。

人間のインフルエンザを犬が媒介することもある

犬の場合、人間のインフルエンザを発症することはないものの、感染する可能性は否定できません。言い換えれば、犬が感染したまま発症せずに人間と接触すれば、ウイルスを伝播させてしまうかもしれないということです。

インフルエンザが大流行している時に、人間がうがいや手洗いなど感染防護を行っていても、感染した飼い犬から伝染ってしまう可能性も否定できないため、やはり予防接種などの対策は必要でしょう。

犬インフルエンザを発症するとどうなる?

インフルエンザにかかった茶色と白の毛の犬の前に注射器が差し出されている

人間のインフルエンザがあるように、実は犬にも犬インフルエンザというものがあります。果たしてどんな症状を引き起こすのでしょうか?詳しく解説していきましょう。

近年になって発見された犬インフルエンザウィルス

2004年、アメリカフロリダ州のドッグレース場で犬インフルエンザの発症例が初めて報告されました。感染した22頭のうち8頭が亡くなったとのことで大きな話題になりました。

ウイルスを解析したところ、鳥インフルエンザの亜種というべきもので、その後全米各地で犬インフルエンザは拡大していったのです。

また、タイでも同時期にアヒルを食べた犬が罹患し、死亡したことが報告されています。

ちなみに日本での発症例はなく、インフルエンザウイルスの侵入は確認されていません。

犬インフルエンザの具体的な症状とは?

犬種や年齢に関わらず感染する可能性はあります。症状としてはウイルスが気道で増殖するため、急性の呼吸器症状が現れますが、その症状は比較的軽く、合併症がなければ2~3週間以内に回復します。

咳を中心に鼻水、くしゃみ、発熱、倦怠、抑うつ、食欲不振などを伴います。臨床的には「ケンネルコフ(ウィルス性呼吸器疾患)」と区別することが難しいそうです。

インフルエンザに罹患するだけでは重い症状にはなりませんが、免疫力が低下することによる細菌の二次感染や、下部気道へのウイルス増殖に伴って症状は重篤化する可能性があります。

また、40℃以上の高熱や呼吸器不全を伴う肺炎を発症する場合もあります。

犬インフルエンザが人間にうつる可能性は?

犬がかかるインフルエンザと、人間がかかるインフルエンザとはそれぞれ種類が違うため、犬インフルエンザが人間に伝染る可能性は低いとされています。

ウイルスの表面の粒子はいわば鍵状になっていて、ウイルスの宿主となる特定の種の動物の細胞にぴたりと当てはまります。ですから、犬インフルエンザに突然変異が起きてウイルスの構造が変化しない限り、人間に伝染することはありません。

犬インフルエンザは猫に感染する

海外では犬インフルエンザが猫に伝染することが報告されていて、さらに猫からフェレットに感染することが確認されています。

元々は鳥インフルエンザが変異したものですから、他の哺乳類へ伝染るというプロセスに関して、今後の研究成果が待たれるところです。

犬インフルエンザの予防法や治療法

インフルエンザにかかった白とグレーに毛の犬がぐったりして眠っている

日本でまだ犬インフルエンザの発症例がないとはいえ、もしかしたらすでに感染している犬がいるかも知れませんし、2018年には中国で新型犬インフルエンザが発見されたという論文も発表されています。

感染を予防するためには何をすればよいのでしょうか?対策や予防法を考えていきましょう。

犬インフルエンザのワクチンはまだ開発されていない

犬インフルエンザのワクチンはありません。実際の治療法としては対症療法や栄養管理に頼る他なく、それ以外の有効な治療法としては以下の方法があります。

細菌の二次感染を防ぐ

犬インフルエンザ自体は重篤な症状を引き起こすことはありませんが、免疫力の低下に伴う細菌の二次感染は注意するべきでしょう。

もし細菌感染が疑われる場合は、適正な抗菌薬や抗生物質を投与することが肝要です。

高熱対策をしっかりすること

妊娠している場合や、基礎疾患、免疫不全などの有無なども考慮する必要はありますが、高熱や炎症症状が見られる場合には、非ステロイド系の抗炎症薬を投与します。

また、脱水症状には点滴で対処します。

くれぐれも人間用の抗インフルエンザ薬(タミフルなど)は投与しないようにして下さい。

犬が鼻水を垂らしている時は?

人間がインフルエンザにかかった際の症状として、鼻水が止まらなくなることが多いのですが、犬が鼻水を垂らしている時、何らかの病気のサインが隠れていたりするものでしょうか。

多くの場合は、鼻の中に刺激があった時に鼻水が出てしまう生理現象です。

しかし、鼻水が止まらなかったり、明らかに異常がある場合は、ケンネルコフや鼻炎などの症状を疑うべきでしょう。犬インフルエンザの可能性もゼロではありません。

この記事もチェック!

犬インフルエンザを予防するためにどうすればいい?

既述しましたが、ワクチンが開発されていない以上は予防接種もできません。そのため消毒と感染犬の隔離が最も重要となります。

万が一、日本で犬インフルエンザの流行が確認されたら、ドッグランなど他の犬と接触するような場所へ行くのは極力避けること、また感染犬と接触した飼い主さんは、他の犬にウイルスを伝播させないように最大限の努力を払うことが大切です。

インフルエンザウイルスは、消毒薬や洗剤で容易に不活化されるため、ウイルスが付着した可能性のある場所やケージ、容器や布類などの丁寧な消毒が重要となります。

野鳥がインフルエンザを媒介する可能性も

鳥インフルエンザが変異して犬インフルエンザになったとされていますが、野鳥がウイルスを媒介している可能性があります。そのため、野鳥(特に渡り鳥)が多く集まる場所へ犬を連れて行く場合は、野鳥との接触を避けるようにしましょう。

また、野鳥の羽根や糞が落ちている場合、舐めたり咥えたりしないように注意するべきです。

犬インフルエンザと勘違いしやすい病気とは?

インフルエンザにかかった茶色の毛の犬が目を細めながら呼吸をしている

犬のインフルエンザに関して、日本でまだ症例はありませんが、「もしかしてインフルエンザ?」と勘違いしてしまいそうな病気があります。

症状も似通っていますし、まずは動物病院等での受診が求められます。その病気のいくつかを解説していきましょう。

伝染性気管支炎(ケンネルコフ)

代表的な症状は激しく乾いた咳で、くしゃみや鼻水、目やになどが続きます。他の感染犬から直接感染する他、病原体に汚染されたフードボウルなどを介しても感染します。

ワクチン接種によって予防が可能ですが、免疫抑制剤などを服用していて接種できない場合は、犬が多く集まる場所を避けたほうが良いかも知れません。

犬パラインフルエンザ

「インフルエンザ」と名が付きますが、犬インフルエンザとは別の病気です。ケンネルコフを引き起こすウイルスの一つで、非常に感染力が強く、感染している犬が近くにいるだけでも伝染するほどです。

乾いた空咳や高熱、鼻水・くしゃみ・目の炎症などが現れ、多くの場合元気消失がみられます。

ワクチンで予防できますが、非常に変異性が高いウィルスのため、定期的にワクチンを接種することが望ましいです。

この記事もチェック!

犬インフルエンザへの対策や予防はしっかりと

インフルエンザにかかったクリーム色の毛の犬が診察台に載って獣医師の診察を受けている

近年、犬インフルエンザ対策のためにワクチンが実用化されたという情報も流れましたが、日本で使用できるかどうかはまだわかりません。

有効な予防法ないし治療法が確立されるまでは、飼い主さん自身がしっかりと対策と予防を心掛ける必要があると言えるでしょう。

参考文献
  • 公開日:

    2020.02.05

  • 更新日:

    2021.10.29

いいなと思ったらシェア
ライター・専門家プロフィール
  • 加藤 みゆき
  • 獣医師
  • 日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。 日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。