
犬を不浄なものとするイスラムの国で、サルーキだけが室内で暮らすことを許された背景には、神からの贈り物であると考えられている以外に、サルーキの特徴の一つである体臭が少ないこと、抜け毛が少ないことが挙げられます。
まずは、サルーキの被毛の特徴を見ていきましょう。
サルーキには、数種類のコートタイプがあります。
これは、古代からサルーキが暮らしていた広大な中東という地域で、何千年にもわたって狩猟犬として活躍していたことに起因します。サルーキと共に暮らしていた各地域の遊牧民は、その地域の狩猟対象動物や環境に合わせて育種を重ねたため、地域に適したサルーキが誕生したのです。
また、アラブではサルーキを所有することが「名誉」とされていたため、他地域への売買や繁殖などを一切行わず、地域ごとに大切に飼育してきたことも、バリエーション豊富なサルーキが生まれた要因となっています。
現在では、中東からイギリスに渡ったサルーキがスタンダードとして広く普及しています。
現在、スタンダードとして登録されているサルーキのコートタイプは、絹のような滑らかなコートが特徴のスムースタイプと、スムースのボディに尻尾、耳、足に飾り毛のついたフェザータイプの2種類。日本でよく見かけるタイプは、飾り毛のついたフェザータイプが多いようです。
中東の砂漠地帯で誕生したサルーキは、スムースタイプ、フェザータイプどちらもアンダーコートのないシングルコートが特徴です。
犬種としてのバリエーションが豊富なサルーキには、さまざまなカラーがあります。
代表的なカラーとして、ホワイト、クリーム、フォーン、ゴールド、レッドなどの単色の他に、グリズル&タンの2色やホワイト、ブラック&タンなどのトライカラーなど、あらゆるカラーの組み合わせが認められていますが、ブリンドルは好ましくないとされています。
シングルコートのサルーキは、トリミングサロンにケアをお願いする必要がなく、家庭でのお手入れでケアができる犬種です。短毛でシングルコートと手間いらずのサルーキと言えますが、被毛や皮膚の健康を維持するためにもこまめなお手入れをしてあげましょう。
サルーキは、比較的汚れにくい犬種です。また、泥んこ遊びなど汚れることが大好きな犬種でもなく、犬特有の体臭が気になる犬種でもないため、汚れたと感じたらシャンプーしてあげましょう。
回数の目安は、2~3ヶ月に1回程度がおすすめです。あまり頻繁にシャンプーをすると、被毛の油分が取れてしまい汚れやすくなることがあるので、シャンプーのしすぎには注意が必要です。
短毛でシングルコートのサルーキですが、ブラッシングはこまめにしてあげましょう。特に、フェザータイプの場合は、絡まりや毛玉を防ぐために2日に一回のブラッシングを心がけてください。
ブラッシングは、ホコリや花粉などを落とし、ツヤのある健康な被毛を保つ効果があります。また、ブラッシングをする時にカラダ全体を触り、皮膚疾患がないか、ノミ・ダニが付いていないかの確認をしましょう。
基本的にサルーキはトリミングサロンでのケアが不要な犬種ですが、トリミングサロンでケアをお願いする時には次のことに注意しましょう。
サルーキは、人見知りの激しいことが特徴としてあげられます。また、新しい環境や大きな音が出る場所も苦手なため、トリミングサロンにケアをお願いする時には、ストレスとならないように細心の注意を払う必要があります。
サルーキをトリミングサロンにお願いする場合は、シャンプー、爪切り、肛門線絞り、耳掃除などの基本ケアがおすすめです。特に、大きな垂れ耳のサルーキは、耳が汚れやすいので、こまめにチェックしてもらいましょう。
被毛のカットやトリミングなどの必要がないサルーキですが、シャンプーや基礎ケアをお願いする場合は、1~2ヶ月に一回程度の目安でトリミングサロンに行きましょう。
多くのサロンでは、シャンプーと基礎ケアをセットにしたセット料金を設定しています。サルーキは大型犬なので、8,000円~15,000円程度が目安となります。
前述のようにシングルコートのサルーキには、大量の被毛が抜け落ちる換毛期がありません。換毛期はありませんが、サルーキにも被毛の抜け変わりはあるため、家庭でケアをしてあげましょう。
サルーキは、細くてシルクのような短毛が特徴です。毛量が特に多いわけではありませんが、抜け毛や毛玉ができることがあります。
特に、フェザータイプのサルーキは、羽毛のように長くて柔らかい被毛がもつれやすく毛玉になりやすいので、こまめなブラッシングでもつれや毛玉を防いであげましょう。
耳が長いサルーキは、食事の時や水を飲む時に耳がボウルの中に入ってしまいます。特に、食事の時は耳の先端がフードボウルの中に入ることで、汚れやすくなるため注意が必要です。
食事の時は、耳をカバーするスヌードをかぶせる、口径が狭いフードボウルや高さのあるフードボウルを使用するなどの対策がおすすめです。
抜け毛や体臭が少ないことが特徴のサルーキは、自宅でケアすることがおすすめの犬種です。
サルーキは、飼い主以外を警戒する、大きな音が苦手、見知らぬ人に触られることが嫌いな面があることからも、なるべく自宅でケアをしてあげたいところ。
自宅でのケアは、より信頼関係を深める絶好のチャンスです。そのためには、カラダをくまなく触れるように子犬の頃から慣れさせておくことがポイントです。ぜひ、自宅でこまめにケアして美しくカッコいい容姿をキープしてあげてくださいね。
西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士
ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。